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亜鉛の摂取量が多い人はテロメアが長い 女性、摂取エネルギー量の少ない人、肥満者で有意な関係

食品からの亜鉛の摂取量が多い人はテロメアが長いとする論文が、米国国民健康栄養調査データを横断的に解析した結果として報告された。この関係は、女性、肥満者、摂取エネルギー量の少ない人で認められたという。

亜鉛摂取量が多い人はテロメアが長い 女性、摂取エネルギー量の少ない人、肥満者で有意な関係

亜鉛レベルとテロメア長に関連あり?

テロメアは染色体の末端にあるDNAとタンパク質からなる構造で、染色体の安定性を維持しているとされ、細胞分裂の回数に応じてテロメアが短くなる。そのため、テロメアの長さは老化のマーカーとなり、テロメア長が長いことは長寿の可能性を表すと考えられている。

一方、亜鉛には抗酸化・抗炎症作用や免疫調整などの作用が確認されていて、これまでに亜鉛欠乏と心血管疾患、2型糖尿病、認知機能低下、易感染性、創傷治癒遅延、発育遅延、男性性腺機能低下などとの関連が報告されている。ただしテロメア長との関連は不明。この論文の著者らは、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のデータを横断的に解析し、この関連の有無を検討した。

米国国民健康栄養調査データを横断的に解析

1999~2002年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の対象者のうち、テロメア長と亜鉛摂取量のデータを入手可能な人は7,827人だった。このうち45歳未満の人、摂取エネルギー量が極端な人(500kcal/日未満、および女性で5,000kcal/日以上、男性で8,000kcal/日以上)などを除外し、3,793人を解析対象とした。

テロメア長は、リアルタイムPCRにより血液白血球のT/S比(テロメアの繰り返し配列のコピー数/単一遺伝子のコピー数の比)で評価。亜鉛摂取量は、NHANESでの24時間思い出し法の記録から推定された。

解析対象3,793人の年齢は60.2±11.3歳、男性46.9%、摂取エネルギー量は中央値1,726kcal/日、肥満(BMI30以上)が33.7%だった。また、亜鉛摂取量は9.6±4.7mg/日であり、テロメア長はT/S比が0.926±0.205、塩基対が5,509.5±494.9bpだった。

共変量調整後も、亜鉛摂取量が多い人ほどテロメア長が長い

亜鉛摂取量とテロメア長(T/S比)の関連の解析は、以下の四つのモデルで行われた。モデル1は共変量未調整モデル、モデル2は、年齢、性別、人種、教育歴、世帯収入を調整したモデル、モデル3はモデル2の調整因子に加えBMI、飲酒・喫煙習慣、糖尿病・高血圧を調整したモデル、モデル4はモデル3の調整因子に加え摂取エネルギー量を調整したモデル。

また、両者の関連は、亜鉛摂取量が5mg/日多いごとにT/S比が何パーセント上昇するかという計算によって検討された。

調整因子に摂取エネルギー量を加えると関連が非有意に

では結果だが、モデル1~3まではいずれも、亜鉛摂取量が多い人ほどテロメア長が長いという有意な関連が認められた。例えばモデル3では、亜鉛摂取量が5mg/日多いごとにT/S比は0.64%(95%CI;0.17~1.10)長いという関連があった(p=0.012)。ただし、調整因子に摂取エネルギー量を加えたモデル4では、この関連の有意性が失われた(p=0.065)。

サブグループ解析で強固な関連のみられたカテゴリー

次に、性別、肥満の有無、摂取エネルギー量で層別化したサブグループ解析を実施した。

女性は摂取エネルギー量を調整後も有意な関連

女性では摂取エネルギー量も調整したモデル4においても、亜鉛摂取量が多い人ほどテロメア長が長いという有意な関連が認められた(5mg/日多いごとに0.82%〈0.06~1.58〉、p=0.042)。反対に男性で有意な関連が維持されていたのは、共変量未調整のモデル1のみだった(同0.56%〈0.05~1.08〉、p=0.041)。

肥満者は全体解析と同様の結果

肥満の有無では、肥満者において全体解析と同様に、モデル1~3で有意な関連が認められた(モデル3で0.88%〈0.26~1.50〉、p=0.009)。非肥満者(BMI30未満)で有意な関連が維持されていたのは、共変量未調整のモデル1のみだった(0.73%〈0.25~1.22〉、p=0.006)。

摂取エネルギー量の少ない群はモデル4でも有意

摂取エネルギー量の中央値(1,726kcal/日)で二分すると、中央値未満の群では、摂取エネルギー量も調整したモデル4においても、亜鉛摂取量が多い人ほどテロメア長が長いという有意な関連が認められた(0.79%〈0.19~1.40〉、p=0.015)。反対に摂取エネルギー量が中央値以上のでは、共変量未調整のモデル1でも関連が非有意だった。

亜鉛摂取量と性別、BMI、摂取エネルギー量の交互作用は非有意

亜鉛摂取量と性別の交互作用はp値が0.054であり、有意水準未満だった。また、BMIとの交互作用のp値は0.680、摂取エネルギーとの交互作用は0.598であり、亜鉛摂取量はBMIの高低や摂取エネルギー量の多寡とは関連がないと考えられた。

著者らは、「我々の研究結果は、米国の中年~高齢者の食事からの亜鉛摂取量とテロメア長に有意な正の相関があることを示した。とくに女性、肥満、および摂取エネルギー量の低い成人において、適切な亜鉛摂取でテロメア長の短縮を防ぐことができる可能性を示唆している。また、亜鉛摂取量が食事全体からの摂取エネルギー量とは関連のないことも明らかになった」と結論を述べている。

その一方、横断研究であるために時間的関係や因果関係については検討不能なこと、亜鉛以外の微量栄養素の影響が不明であること、血中亜鉛レベルを検討していないこと、および24時間思い出し法の精度を研究上の限界点として挙げ、「大規模な前向き研究が必要とされる」と追記している。

文献情報

原題のタイトルは、「Potential effect of dietary zinc intake on telomere length: A cross-sectional study of US adults」。〔Front Nutr. 2022 Nov 16;9:993425〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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