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柔道選手は攻撃性が低く、謙虚で正直? 団体競技の選手と対比したセルビアの研究

柔道は武道であると同時に格闘技。一般に格闘技は高い攻撃性が必要な競技として特徴づけられることが多い。ところが柔道選手はチームスポーツアスリート(団体競技の選手)に比べて攻撃性が低く、性格特性としては謙虚で正直な傾向のあるとする研究結果を、セルビアの研究者らが報告している。その論文の要旨を紹介する。

柔道選手は攻撃性が低く、謙虚で正直? 団体競技の選手と対比したセルビアの研究

柔道は格闘技であり武道であって、選手はアスリートであり柔道家

柔道は日本発の武道であり、1964年の東京五輪でオリンピックの正式競技として採用され、現在では世界各国で選手権が開催される人気の格闘技となっている。また日本では2012年に、柔道、剣道、相撲のいずれかを学校の必修科目として位置づけた。これまでのところ、中学校の過半数が柔道を選択している。一方、チームスポーツについては古くから学校の教育カリキュラムに採用されており、長い間、重要な教育課程として位置づけられてきている。チームスポーツへの参加が社会心理学的な好影響を与えるとする報告も枚挙にいとまがない。

それに対して格闘技については、それを習うことで攻撃性が誘発されるのではないかとの懸念を指摘する声がある。実際に、10代で格闘技を習っている少年には反社会的行動が多くみられるとする報告もある。ただしそれを否定する報告もあり、一貫性を欠いている。また、柔道は格闘技であるものの武道であって、柔道選手である「柔道家」として修得を積む過程では人格形成という側面が重視されることから、攻撃性に対して抑止的に作用する可能性が考えられる。

これらを背景としてこの論文の著者らは、柔道選手とチームスポーツアスリートの攻撃性や性格特性の比較を行った。

16項目の評価指標のうち7項目で有意差

研究の対象は、セルビアの男性アスリート140人(平均19.26歳)。42.9%が柔道選手で、57.1%はチームスポーツ選手(サッカー42.5%、ハンドボール25.0%、水球32.5%)。それぞれの競技を過去5年以上継続しており、週に5回以上のトレーニングを行い、セルビアの全国レベル以上の大会に出場していることが適格条件とされている。

攻撃性については15項目からなり、信頼性が検証されている調査票(クロンバックのαが0.970)で評価された。性格特性については、精神医学領域で用いられているビッグファイブ理論を改編し、6番目の特性とされる「正直さ/謙虚さ」を加えた「HEXACO」モデルという手法(クロンバックのαは0.756)を用いて評価した。その他、自己効力感や感情表出などの評価を行った(クロンバックのαは0.770~0.914)。

物理的な攻撃性、間接的な攻撃性ともに柔道選手は低い

前記の評価指標によって、攻撃性や性格特性に関する16項目が比較検討された。それらのうち以下の7項目で有意差が認められた。

物理的で明確な攻撃性(physical manifest aggressiveness)は、柔道選手が22.4333点、チームアスリートは26.6500点で柔道選手の方が低かった(p=0.012)。間接的な攻撃性(indirect aggressiveness)は同順に、19.7167点、26.9625点で、やはり柔道選手のほうが低かった(p=0.000)。

自己効力感(general self-efficacy)は35.2833点、33.2625点であり、柔道選手のほうが高かった(p=0.004)。正直さ/謙虚さ(honesty-humility)は37.0667点、34.7250点であり、柔道選手のほうが高かった(p=0.024)。

一方、感情表出(emotionality)は25.3000点、27.82500点であり、チームアスリートのほうが高かった(p=0.033)。また、外向性(extraversion)も32.2333、36.1625であって、チームアスリートのほうが高かった(p=0.000)。ただし、開放性(openness to experience)については33.5833点、29.8375点であり、柔道選手のほうが高かった(p=0.000)。

なお、協調性(agreeableness)は有意水準に至らないものの、柔道選手が31.3000点であるのに対してチームアスリートは36.1625点であり、チームアスリートのほうが高い傾向にあった(p=0.053)。

学校で柔道を教えることへの懸念を払拭する結果

著者らは本研究の限界点として、サンプル数が十分とは言えないこと、研究参加者が男性アスリートのみであること、アスリートの成功(成績)が考慮されておらず、成功しているアスリートとそうでないアスリートでは結果が異なる可能性のあること、また、評価に用いた指標がアスリート対象に特化されたものではないことなどを挙げ、今後の研究の必要性を指摘。そのうえで、「研究の目的は達成されたと考えて支障ない」と述べている。

結論としては、「チームスポーツアスリートと比較して、柔道選手の攻撃性が高いわけでないという結果は、武道に対する懸念を打ち砕くものと言える。本研究の結果は、学校教育のカリキュラムに、チームスポーツと同様に柔道を組み込むことが可能であり、むしろ柔道を支持するものでもある」とまとめられている。また、「この知見はコーチやスポーツ心理学者がアスリートの攻撃的な行動をより深く理解するのに役立つだけでなく、それをより効果的に防止するのにも役立つ」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Aggressiveness in Judokas and Team Athletes: Predictive Value of Personality Traits, Emotional Intelligence and Self-Efficacy」。〔Front Psychol. 2022 Jan 10;12:824123〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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