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ラグビー選手対象の食事に関するインタビューから、適切な摂取のための障壁などが明らかに

エリートレベルのラグビーユニオンに所属する選手の食生活に関する定性的研究の結果が報告された。育成段階における栄養教育の重要性が浮かび上がったという。

ラグビー選手対象の食事に関するインタビューから、適切な摂取のための障壁などが明らかに

ラグビー選手の食生活はどのようにかたち作られるのか?

栄養素摂取の最適化はスポーツパフォーマンスの最大化にとって必要条件だが、アスリートの栄養素摂取状況は、社会的、文化的、生理学的な要因によって左右されるため、常にスポーツパフォーマンス向上に理想的な摂取を続けけられるわけではない。例えば、栄養に関する知識、周囲のサポート、収入などはアスリートの食生活を規定する因子として、一定の影響力をもっている。

ラグビーユニオンに所属している選手の食行動を規定する因子や栄養に関する知識の研究はこれまでに、思春期のアスリートを対象に調査した研究結果が報告されているが、思春期以外の年齢層での調査は十分研究されていない。このことから本論文の著者らは、エリートラグビーユニオンに所属している幅広い年齢層の選手を対象とする定性的研究を行った。

エリートレベルのユニオン所属の選手30人にインタビュー調査

調査手法として、個別インタビュー形式が用いられた。既報研究のレビューに基づいて設定された質問項目のリストが作られ、トレーニングを受けた4人の研究者が半構造化インタビューを行うというもの。主な質問項目は、それまでのキャリア、栄養について学んだ経験の有無、栄養に関する情報をどのように入手しているか、ソーシャルメディアからの食事・栄養情報を利用しているか、自分で食事を料理するか、しない場合は誰が作るか、子どものころの食事やそれに影響を及ぼしていたと思うことなど。

対象は17~28歳の男子ラグビーユニオン所属選手30人。そのうち19人がプロのスーパーフランチャイズチームに所属し、8人はセミプロ、3人はスーパーフランチャイズチームの育成リーグ所属選手だった。16人がニュージーランド、8人がサモア、5人がトンガ出身だった(その他が1人)。

インタビュー時間は20~50分で、インタビュアーは回答を誘導しないように注意が払われた。30人のインタビューの結果、新たな情報を引き出せる可能性は低く、このトピックに関するインタビュー調査としては十分なものとなったと判断された。

ラグビー選手は、体組成との関連で栄養を考えることが多い

インタビューの録音データを、インタビューを行った研究者とは異なる研究者が解析した結果、スポーツ全体に関連する一般的なトピックとラグビー固有のトピックがいくつか特定された。論文中にまとめられているそれらのトピックの一部を紹介する。

ラグビー選手は食事と体組成の関係を重視

体組成は、食事摂取量にとって重要な要素であると考えているラグビー先週が多いことが確認された。選手の53%が、脂肪厚の厚さ(体脂肪率の増大)を心配していた。

「皮膚のたるみ(脂肪厚)が少し多すぎるという問題をいつも抱えていたので、健康的な食事を心がけている、「いつも私はその点を心配している。ただ、食べ物に関しては、それが私の体組成にどれほど影響を及ぼすのか、常に考えているわけではない」。

一方、脂肪厚が望ましい範囲内にあることを根拠として、食事に気をつかわないとする選手も存在していた。例えば、「食事に配慮する理由はとくにない。着たい服などに合わせられるようにするためだと思う」、「男性にとって外見はたくましさのため、常に重要なことだと思う」といった回答にその傾向が現れていた。

また、スポーツ栄養戦略の最適化の指標として体組成を重視する声もあった。「アウトサイドバックなので、明らかにスピードが大切。脂肪厚が多ければ多いほど遅くなるであろうことから、それを薄くすることに取り組まなければにならない」、「パフォーマンスが重要だと思う。私には判断がつかないが、脂肪厚とパフォーマンスとの関連が疑いのないものであるのなら、それは間違いなく栄養戦略の大きな動機となる」、「体組成は私にとってはかなり重要だと思う。なぜなら、体型が整っているときにいかに動きやすく、プレーしやすいかという話を、よく見聞きしてきたから」。

この体組成というトピックに関連して、幼年期の育成環境は、体組成と健康的な食習慣の両方に関する障壁として回答者に挙げられることの多いテーマだった。幼年期の障害としては、家族の規模、食卓で食べるなどの栄養習慣、食材のコスト、食品へのアクセスの良否などが含まれていた。5人以上の家族で育った53%の回答者のうち7割は太平洋諸島出身の選手であり、81%は、子どものころの食事環境が良くなかったと回答した。

小児期の食習慣の連続性と現在の食事の課題

子どもの頃の食習慣は、成人期に持ち越された食習慣の決定要因と考えられていた。「そうだと思う。子どものころは食べ物が豊かでなかった。今はいつでも食べられるので、たくさん食べている」、「若い頃にジャンクフードを食べる習慣が身についてしまったように感じる。今は気を付けているが、その傾向が残っている」、「母親から『皿の上のものはすべて食べるように』と言われて育った。今もそうしている」。

アスリートが適切な食事を摂る際の障壁として、時間が挙げられた。また、エリートレベルで活躍するには、通常、週に30時間以上のトレーニングを行う。食事の準備は回答者の57%によって、「健康的な食事をするうえでの最大の課題」として挙げられた。なお、子どものころに欠食をしていた選手は、現在でも食事を抜く傾向が強かった。

プロ選手は他の2群より栄養サポートが行き届いている

セミプロや育成レベルの選手は栄養に関する知識が不足している一方で、プロ選手には栄養サポートが行き届いていた。また、あるプロ選手は過去を振り返り、「サポートスタッフは良い考え方を与えてくれたが、育成段階の時は、それらの情報にあまり興味がなく、重要なことと考えないのではないか」と述べ、別の選手は「健康的な食生活についてかなりの知識を得られたように思う。常に体重を増やす明確な目標があり、私はそうしなければならないと考えていた」と答えた選手もいた。

文献情報

原題のタイトルは、「Barriers, Attitudes, and Influences Towards Dietary Intake Amongst Elite Rugby Union Players」。〔Front Sports Act Livin. 2021 Dec 20;3:789452〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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