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カフェイン摂取量は個別化が必要か? アジア人トライアスリートでは高用量で記録低下

カフェインはスポーツパフォーマンスを向上する可能性のあることから、多くのアスリートが利用している。しかし、その摂取量が過剰な場合、持久力に対してはマイナスに作用する可能性のあることが報告された。中国・台湾の研究者らによるアジア人対象の研究結果であり、著者らは人種/民族によるカフェイン代謝の違いが、パフォーマンスへの影響の差異を生じさせる可能性も指摘している。

カフェイン摂取量は個別化が必要か? アジア人トライアスリートでは高用量で記録低下

カフェインの摂取量で影響は異なるか?

カフェインはエルゴジェリックエイドとして広く用いられている。トライアスロンの世界レベルの大会で活躍しているアスリートのうち、89%はレース前のカフェイン摂取を習慣化しているという。ただし本論文の著者によると、カフェインの摂取量によって効果や有害事象の発現頻度が異なるのかという点の検討は、まだ十分行われていないとのことだ。そこで著者らは、トライアスリートを対象に、異なる用量のカフェインまたはプラセボを摂取してもらい、パフォーマンスや酸化ストレスマーカーの変化を比較検討した。

男子スプリントトライアスロンのパフォーマンスを比較

この研究の対象は、12人の男子トライアスロン選手(20.8±0.4歳、171.8±1.5cm、63.5±2.3kg)。ふだんエルゴジェリックサプリメントを摂取している人や、カフェイン摂取後に健康上の問題が生じたことのある人は除外されている。

試験デザインは二重盲検無作為化クロスオーバー法。水泳0.75km、自転車20km、長距離5kmというスプリントトライアスロンを、1週間間隔で3回試行し、高用量カフェイン(222mg)、低用量カフェイン(111g)、およびプラセボが、無作為化された順序で支給された。カフェインとプラセボは、全条件同量のエルダーベーリー、エナジードリンクパウダーなどに混合し、300mLで8.6kcalに統一。かつ、味覚と外観から区別できないように調整された。

水泳は屋内50mプール、自転車はエルゴメーター、長距離は屋外400mトラックで実施。3回の試行日の天候はほぼ同様だった。

水泳がスタートする2時間前に昼食を摂取してもらい、その1時間後(水泳スタートの1時間前)にカフェインまたはプラセボを摂取。30分の安静ののちウォームアップを開始し、その30分後に水泳をスタート。水泳から自転車に移行するタイミングでカフェインまたはプラセボをもう一度摂取し、その後は自転車と長距離を終了した。

種目が移行する段階で、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)を評価、ベースライン時点(水泳のスタート1時間前)とフィニッシュ後5分時点では採血を行った。

高用量カフェイン条件でレース記録が有意に低下

レースタイムは、プラセボ条件が4,266±266秒、低用量カフェイン条件が4,233±260秒、高用量カフェイン条件は4,394±315秒であり、高用量カフェイン条件は他の2条件に比べて有意に長時間要していた(p=0.03)。プラセボ条件と低用量カフェイン条件とは有意差がなかった。

プラセボ条件と低用量カフェイン条件のレースタイムを比較すると、75%(12人中9人)は低用量カフェイン条件のタイムの方が良かった。一方。プラセボ条件と高用量カフェイン条件の比較で、高用量カフェイン条件のタイムの方が良かったのは、25%(12人中3人)のみだった。

ふだんカフェインを摂取してないアスリートの低用量条件では、有意に近いプラス効果

前述のようニ、プラセボ条件と低用量カフェイン条件とは、記録に有意差がなかった。しかし、カフェインの習慣的な摂取により耐性が生じ、エルゴジェニック効果が減弱する可能性もある。

本研究では、日常的に過度のカフェインを摂取していない9人を抽出して、プラセボ条件と低用量カフェイン条件のレースタイムを比較するという検討も行われている。その検討の結果は、わずかに有意水準未満ながら、低用量カフェイン条件のレースタイムのほうが良好だった(p=0.054)。

カフェイン条件で酸化ストレスが抑制される

血液検査関連では、ベースライン(レース前)は評価した項目のすべてについて有意差がなかった。レース後の値は、活性酸素を分解する酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)は3条件ともに有意に低下していたが、プラセボ条件に比べて高用量カフェイン条件はより有意に低値であり(p=0.02)、かつ低用量カフェイン条件よりも有意に低値だった(p=0.02)。低用量カフェイン条件はプラセボ条件と有意差がなかった。

また、酸化ストレスに応答して上昇するチオバルビツール酸反応性物質(thiobarbituric acid reactive substances;TBARS)は、プラセボ条件はレース前後で有意差がなかったが、カフェイン条件はどちらもレース後に有意に低下し、プラセボ条件との間に有意差がみられた。低用量条件と高用量条件との比較では有意差はなかった。

このほか、自覚的運動強度(RPE)の変化に条件間の差は認められなかった。

最適なカフェイン摂取量は個別に判断する必要がある可能性

以上の結果の結論として著者らは、「カフェインはトライアスリートのパフォーマンスを向上し、レースによる酸化ストレスを軽減する可能性がある。ただし至適用量をオーバーするとパフォーマンスの低下をもたらし得る」とまとめている。

なお、今回の研究で認められた、高用量条件でのパフォーマンス低下については、「単回の検討であるためカフェイン摂取の過剰が原因かどうか判断することはできない」と述べている。一つの可能性として、本研究の参加者が全員アジア人であり、カフェイン関連のこれまでのエビデンスの多くが欧米発であることと異なる点を挙げている。カフェインの代謝にかかわるシトクロムP450(CYP1A2)の活性が、アジア人は低いことが知られているという。よって、白人よりもカフェインを過剰に摂取した場合の有害事象の発現率が高くなることも考えられるとのことだ。

このことから論文中では、「カフェイン入りエナジードリンクを摂取する場合、個人差も考慮する必要があるのではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dose caffeinated energy drink is a consideration issue for endurance performance」。〔Front Physiol. 2022 Oct 28;13:999811〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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