スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

チームメートからの批判的なコメントがアスリートの食事やメンタルヘルスに与える影響

アスリートがチームメートから批判的なコメントを受けた場合の影響を調査した研究結果が報告された。批判的なコメントを受けたアスリートは、自身の身体イメージが低下していること、女性アスリートは男性アスリートよりも影響が大きいことなどが明らかになったという。

チームメートからの批判的なコメントがアスリートの食事やメンタルヘルスに与える影響

チームメートからの批判的コメントの影響は調査されていなかった

コーチや親からの批判的コメントがアスリートの不調や摂食障害リスクに関連していることは既に報告されている。しかし、本論文の著者によると、チームメートからのそのようなコメントを投げかけられた場合に、アスリートの食事やメンタルヘルスにどのような影響が生じるのかは、これまで研究されていないとのことだ。

そこで著者らは、チームメートの批判的なコメントを受け取ったアスリートは、そうでないアスリートと比較して、食事に何らかの影響が生じたりメンタルヘルスに変化が現れているか? および、そのような影響に性差は存在するか? といったことを主題として研究を行った。

症例対照研究で、食事やメンタル関連の評価指標を比較

研究対象は、以前に実施されたアスリートの食事と精神病理に関する大規模調査の参加者から抽出された。この調査の参加者のうち、323人が過去に「チームメートから体重や体型について批判的なコメントをされたことがある」と回答していた。この323人を「症例群」として設定。年齢、BMI、性別、民族性、スポーツの種類(スリムであることが求められる競技か否か)、および競技レベル(エリートレベルか非エリートか)が症例群とマッチする、チームメートから批判的コメントを受けたことがないアスリート323人を、前記の大規模研究から抽出して「対照群」として設定。これら両群を比較するという研究手法を用いた。

両群を比較すると、年齢(23歳)、BMI(約22.6)、性別(女性が61%)、民族(白人が約9割)は有意差がなく、また、スポーツの種類や競技レベルは一致していた。ただし、症例群のほうがやや競技歴とトレーニング時間が長く、また摂食障害の既往者率が高かった(現在治療中は3% vs 0.6%、過去の治療歴を有する者は7% vs 3%)。

食事やメンタルヘルス関連の評価指標の結果を、これらの2群間で比較したところ、BMIには有意差がないにもかかわらず、以下のように多くの指標で有意な違いが認められた。

社会文化的圧力の自覚(PSPS)

チームメートからの減量・体型の変化へのプレッシャーをアスリートがどの程度感じているかを、「Perceived Sociocultural Pressures Scale;PSPS」という5段階のリッカートスケールの指標で評価。スコアが高いほどプレッシャーを強く感じていると判定される。結果は、症例群1.72±0.72、対照群1.23±0.42で、症例群のほうが有意に高値だった(p<0.001)。

過食症モデリングスケール

アスリートの過食症関連行動(食事の制限、体型へのこだわり、極度の体重管理行動、むちゃ食い、コントロールのための嘔吐)を、「Bulimic Modelling Scale-Athlete;BMS-A」という5段階のリッカートスケールの指標で評価。スコアが高いほどプレッシャーを強く感じていると判定される。結果は、症例群2.57±0.83、対照群2.05±0.72で、症例群のほうが有意に高値だった(p<0.001)。

摂食障害調査質問票(EDI-2)

摂食障害については「Eating Disorder Inventory-2;EDI-2」を用いて評価した。

やせ願望については症例群4.33±4.91、対照群2.86±4.23(p<0.001)、過食については同順に3.24±4.08、2.44±3.68(p<0.01)、体型不満については9.16±7.06、7.26±6.29(p<0.01)であり、いずれのサブスケールも症例群のほうが有意に高値だった。

強迫的な運動行動(CET-A)

アスリートの強迫的な運動行動について「Compulsive Exercise Test;CET-A」という三つのサブスケールからなる指標を用いて評価した。スコアが高いほど行動の乱れが大きいことを意味する。

回避行動については症例群2.71±1.34、対照群2.35±1.21(p<0.001)、体重管理行動は同順に2.21±1.43、1.95±1.24(p<0.03)で、症例群のほうが有意に高値だった。

気分改善のための行動は3.86±1.13、3.85±1.11(p=0.83)で有意差がなかった。

自尊心(RSES)

「Rosenberg’s Self Esteem Scale;RSES」という指標を用いて自尊心を評価した。RSESは、4段階のリッカートスケールで判定し、スコアが高いほど自尊心が高いことを表す。結果は症例群が28.19±6.30、対照群が30.57±5.71であり、症例群で自尊心の有意な低下が認められた(p<0.001)。

不安と抑うつ(HADS)

不安と抑うつのレベルを「Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)」で評価した。不安は症例群9.30±4.18、対照群7.95±4.25(p<0.001)、抑うつは4.26±3.15、3.67±2.98(p<0.01)であり、いずれも症例群のほうが有意に高かった。

体重や体型に関するコメントの重大性(SHQ)

体重や体型に関するコメントの重大性を、「Social Hassles Questionnaire;SHQ」という指標で評価した。合計スコアは3~12の範囲であり、スコアが大きいほど強い影響を受けたと判定される。症例群のスコアは5.86±2.30だった。なお、SHQは当然ながら症例群でのみ評価されており、対照群のスコアはない。

女性アスリートは男性アスリートより強い影響を受ける

チームメートから受けた批判的影響の深刻さを、SHQスコアにより男性と女性とで比較すると、女性アスリート(6.38±2.34)は男性アスリート(5.06±2.01)よりも、有意に強い影響を受けていることがわかった(p<0.001)。

このほか、チームメートからのコメントが明示的な場合、暗示的なコメントよりも影響が大きいことも明らかになった。

著者らは結論を「アスリートがチームメートから受け取った体重や体型に関するコメントは、アスリートの健康に大きな悪影響を及ぼし、とくに女性アスリートでその影響が顕著だった」とまとめるとともに、「今後は、これらの真の因果関係を明らかにするための前向きなデザインでの研究が望まれる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The impact of critical comments from teammates on athletes’ eating and exercise psychopathology」。〔Body Image. 2022 Sep 21;43:170-179〕
原文はこちら(Elsevier)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ