スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2022 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

男性マラソンランナーは性欲が弱い? 競技歴や練習強度と逆相関 1,000人以上のアンケート結果

男性のマラソンランナーは、マラソン以外のランナーに比べて性欲(libido)が弱いとする研究結果が報告された。また、競技歴が長いことや、トレーニング強度が強いことが、年齢調整後にも性欲と逆相関するという。論文の著者らは、「この研究のみでは因果関係には触れられないが、スポーツによる相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sport;RED-S)がこの関連の背景にあるのではないかと」の推察を述べている。

男性マラソンランナーは性欲が弱い? 競技歴や練習強度と逆相関 1,000人以上のアンケート結果

北米と欧州の男性持久系アスリート1,000人以上にオンラインアンケート

今日、多くの人が健康上のメリットの獲得のために習慣的な身体活動を行っており、なかでも最も人気のある身体活動の一つがランニングである。ランニングは設備や特別な場所を必要とせず、すぐに始められるスポーツ。とくに、ケニアのエリウド・キプチョゲが非公式ながら2時間を破ったことなどが話題となり、近年でもマラソン人口の拡大が続いている。2008~18年の間に、世界中で3万回を超えるマラソン大会が開催され、完走者は2,000万人近くに達するという。一方で、マラソンなどの持久系スポーツをストイックに行うことが、性欲の低下につながる懸念を指摘する声もある。

この研究は、主として北米と欧州の男性持久系アスリートを対象とする、オンライン調査として実施された。2016~17年に1,366人から回答が寄せられた。このうち、18歳以上であること、最低1年以上、持久力トレーニングを習慣的に(1回45分以上で週3回以上)行っていること、ランニング大会への参加経験があること、内分泌疾患を含む疾患に罹患しておらず、回答時点で筋骨格系の障害を負っていないこと、などの適格条件を満たす、1,080人が解析対象とされた(BMI23.63±3.06)。

アンケートでは、年齢などの人口学的情報、ふだんのトレーニング時間・強度などとともに、性欲に関する質問にリッカートスコアで回答を得た。「はい」は3点、「恐らく」は2点、「いいえ」は1点という3点満点で答えてもらい、合計15点の「性欲スコア」を指標として、性欲の強弱を評価した。

年齢調整後に、競技歴やトレーニング強度と性欲が逆相関

解析対象者のうち、595人がマラソンランナーであり、42.195kmを走行することを目標としてトレーニングしていた。他の持久系アスリートは、より一般的な距離(多くは42.195km未満)の範囲内でのトレーニングをしていた。

解析の結果、マラソンランナーはその他のランナーに比べて、性欲スコアが有意に低かった(最大20%の低下.効果量d=0.44,p<0.05)。また、非有意ながら、マラソンの完走回数が多いほど性欲スコアが低下する傾向が認められた(完走経験が1回と5回の比較で約12%低下.効果量d=0.15,p<0.10)。

一般的に性欲は、加齢とともに低下する。そこで年齢を交絡因子として調整した解析の結果、性欲スコアに最も寄与する因子はトレーニングの年数(暴露期間)と、高強度トレーニングの占める割合の高さ(低 vs 中 vs 高の3群での比較)であり、マラソンの完走回数は非有意だった。

相対的エネルギー不足(RED-S)が関与?

著者らは、「我々の研究結果は、マラソンを完走するための持久力運動トレーニング(ランニングなど)の実行が、男性の性欲の低下と関連していることを裏付けている。トレーニングの年数と高強度トレーニングの割合が、性欲スコアのより重要な決定要因だった。つまり、男性は慢性的な持久力トレーニングにさらされる時間が長く(年数)、そのトレーニングが高強度で行われるほど、性欲スコアが低くなっていた」とまとめている。

この関連の背景として考えられる要因としては、「我々の研究手法では、ランナーの性欲減退の結果との因果関係を評価することはできない」と断ったうえで、既報研究を基に、「大量の運動トレーニングによる慢性的な肉体的疲労、エネルギー消費の行動的適応(エネルギー消費のトレードオフ)、運動トレーニングの結果としての内分泌学的適応などが想定される」としている。このうち、後者に関しては具体的に、持久力トレーニングを続けている男性はテストステロンのレベルが、同年齢の一般男性に比較し1~4割低いというエビデンスがあるとも述べられている。

また、男性の早朝勃起の減少などに、スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)が関与しているとの報告もみられるとして、今回の研究も、RED-Sに関連して性欲減退が発生したという結果をみている可能性があるとしている。ただし、RED-Sはオンライン調査では把握が不可能であることから、この点も考察の域を出ない。

多くの限界点のある研究ではあるが、著者らは、「男性の性欲低下はアスリートのエネルギー状態の指標であり、RED-S発生のサインである可能性があるため、トレーニングを行うアスリートの性的情動の変化を認識する必要があるのではないか。男性の生殖機能と運動トレーニングの関連について、さらなる研究を重ねる必要がある」としている。

なお、現時点でこの知見を生かし得る現実的なケースとして、「持久系男性アスリートをパートナーとするカップルが不妊の問題を抱えている時、臨床医は男性のトレーニング量を確認することも必要ではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Marathon Running and Sexual Libido in Adult Men: Exercise Training and Racing Effects」。〔J Endocrinol Sci. 2022;4(1):10-12.〕
原文はこちら(PubMed)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2022後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
日本スポーツ協会「サプリメントの認識と利用に関するアンケート調査」にご協力ください
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ