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救急医療従事者の摂取エネルギー量、夜勤の日は日勤の日より15%少ない

救急医療スタッフの夜勤日と日勤日の食事内容を比較した研究結果がフランスから報告された。夜勤日は日勤日より摂取エネルギー量が有意に少ないこと、12時間連続で食べ物を摂取しないスタッフが2割、飲み物を摂取しないスタッフが1割存在することなどがわかった。

救急医療従事者の夜勤日の摂取エネルギー量は日勤日より15%少ない

交代勤務者の食事内容の調査にとって、救急医療従事者は“理想的”な対象

国際労働機関(International Labor Organization;IOL)は、深夜0時から早朝5時を含む連続7時間以上の勤務を「夜間労働」と定義している。人々が昼夜の差のない生活を送るようになったこともあり、そのような夜間労働者、または夜勤と日勤を繰り返す交代勤務者が増加している。夜間労働や交代勤務が身体的・精神的健康に悪影響を及ぼすことは多くの研究から示されている。

医療従事者、とくに救急医療に従事するスタッフも、その多くが交代勤務をしている。ただし、今回紹介する論文の著者によりと、救急医療従事者に焦点を絞り食習慣を検討した研究はこれまでに報告されていないとのことだ。そして著者によると、1年365日稼働している医療機関で、日勤と夜勤を繰り返している救急医療従事者は、日勤日と夜勤日の食事内容の違いを調査する対象として“パーフェクトな対象”だという。

フランス国内5病院の多施設共同研究

この研究は、フランスの5つの病院で行われた。そのうち2カ所は大学病院で、他の3カ所は大学病院でない市中病院。研究対象者は合計192人で、うち4人が妊娠のため、他の4人がデータ欠落のため解析対象に含まれず、184人のデータが解析された。年齢は37.2±10.2歳、女性が56.0%、BMI23.2±3.9、既婚者69%、経験年数10.5±10年、現在の勤務先の勤務年数9.9±9.8年、救急部門勤務歴6.4±10年。

食事内容は、24時間思い出し法により把握した。日勤日については、8:30~18:30の勤務時間と翌朝8:30までの非勤務時間、計24時間の食事内容を評価し、夜勤日については、8:30~18:30の非勤務時間と翌朝8:30までの勤務時間、計24時間の食事内容を評価した。

では、早速、結果をみていこう。

夜勤日の摂取エネルギー量は15%少ない

摂取エネルギー量は、日勤日に大して夜勤日-14.73%であり有意に少なかった(p=0.049)。

栄養素別では、主要栄養素のうち炭水化物は-21.77%(p=0.026)、タンパク質は-21.34%(p=0.003)であり夜勤日のほうが有意に少なかった。脂質に関しては-9.80%でわずかに有意水準に至らなかった(p=0.051)。

微量栄養素では、カルシウムが-16.11%(p=0.049)有意に少なく、コレステロールと食物繊維は夜勤日のほうが少ないものの有意差はなかった。

水分摂取量は、-20.12%(p=0.012)で夜勤日のほうが有意に少なかった。

夜勤日は食べ物や飲み物を摂取せずに長時間勤務している

勤務中に4時間以上、食べ物を口にしないスタッフの割合は、日勤日には25.6%であるのに対して夜勤日は72.4%で有意に多かった。同様に、8時間以上、食べ物を口にしないスタッフの割合(15.4 vs 43.1%)、12時間以上(1.3 vs 19.0%)であり、夜勤日には食べ物を長時間、口にせずに勤務していた(いずれもp<0.001)。

水分摂取についても同様で、勤務中に4時間以上、飲み物を口にしないスタッフの割合は、日勤日には29.5%であるのに対して夜勤日は50.0%で有意に多かった(p=0.015)。8時間以上や(11.5 vs 29.3%,p=0.009)、12時間以上も(1.3 vs 10.3%,0.018)夜勤日にその割合が有意に高かった。

12時間以上、連続で食べないことの有意な関連因子は「夜勤」のみ

12時間以上連続で食べ物を口にしないことを目的変数、夜勤/日勤、年齢、性別、婚姻状況、大学病院/市中病院、勤務歴、医師/その他のスタッフ、以上を説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、夜勤のみが有意な正の関連因子として抽出された(OR18.1〈95%CI;2.43~785.3〉)。

12時間以上連続で飲み物を口にしないことを目的変数とする解析からは、夜勤のみが有意な正の関連因子として抽出され(OR8.88〈95%CI;1.02~413.8〉)、反対に配偶者がいることは有意な負の関連因子だった(OR0.17〈95%CI;0.03~0.94〉)。

大学病院より市中病院に勤務しているスタッフのほうが摂取量が有意に多い

上記の解析の説明変数と同じ因子によって層別化した解析からは、大学病院に勤務しているスタッフよりも、市中病院に勤務しているスタッフのほうが、勤務日の摂取エネルギー量、水分量が有意に多いこともわかった。また、男性と女性の比較では、水分摂取量は有意差がないものの、摂取エネルギー量は男性スタッフのほうが有意に多かった。

著者らは、「夜間勤務の救急医療従事者は、栄養摂取の量と質が低いことが明らかになった。彼らは非常に非健康的な食事をしているようだ。さらに、少なくないスタッフが、夜勤日には長時間飲食せずに勤務している」と結論をまとめ、労働環境改善の必要性に言及している。

文献情報

原題のタイトルは、「The Negative Impact of Night Shifts on Diet in Emergency Healthcare Workers」。〔Nutrients. 2022 Feb 16;14(4):829〕
原文はこちら(MDPI)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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