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ビタミンD代謝物、遊離型ビタミンDのレベルがアスリートの身体能力と有意に関連

柔道選手とサッカー選手を対象とする研究で、ビタミンD代謝物や遊離型ビタミンDのレベルが身体能力と有意に関連しているとする研究結果が報告された。屋内競技である柔道選手で、その関連がより強く観察されたようだ。

ビタミンD代謝物、遊離型ビタミンDのレベルがアスリートの身体能力と有意に関連

ビタミンD代謝物、ビタミンD結合タンパク、遊離型ビタミンDを評価

ビタミンDの多面的機能が近年注目されており、スポーツ栄養関連でもパフォーマンスに寄与する可能性が盛んに研究されている。ただしそれらの研究の結果に一貫性があるとは言えず、検討対象のベースラインのビタミンDレベル、肌の色、研究地点の緯度・季節、評価項目の違いなど、さまざまな要因が結果を左右しているのではないかとも考えられている。

一方、ビタミンD関連の研究の多くは、活性型ビタミンDであるカルシトリオールのレベルを評価して行われているが、カルシトリオール以外のビタミンD代謝物やタンパク質に結合していない遊離型ビタミンDも重要な役割を担っていることがわかってきている。また、細胞内に入り生物学的な作用を発揮するのはビタミンDの非結合部分のみとする「遊離ホルモン仮説」も存在する。

このような状況を背景として、今回紹介する論文の著者らは、屋内および屋外での競技に参加しているアスリートを対象として、ビタミンD代謝物、ビタミンD結合タンパク質(vitamin D binding protein;VDBP)、および遊離型ビタミンDを測定。それらの値と、握力、垂直飛び、VO2maxとの関連を検討した。

ポーランドの冬季で、柔道、サッカー選手対象に研究

この研究はポーランドのヴロツワフ(北緯51度10分。稚内の北緯45度より北)で2月末から3月初旬の2週間に実施された。研究参加者は柔道選手16人、サッカー選手24人、計40人ですべて白人男性であり、ビタミンDやカルシウムのサプリメント利用者はおらず、また日焼けを習慣としている選手も含まれていなかった。

柔道選手を屋内アスリート、サッカー選手を屋外アスリートと定義して、以下の検討を行った。

なお、柔道選手とサッカー選手とで、年齢、BMI、および、ビタミンD代謝物、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、遊離型ビタミンDに有意差はなかった。トレーニング時間(柔道15.1±1.4 vs 11.0±1.0時間/週)と左手の握力(49.6±11.4 vs 41.3±7.5kg.右手は有意差なし)は柔道選手のほうが高値で、VO2max(50.9±2.1 vs 53.4±3.5)はサッカー選手のほうが高値だった。垂直飛びは有意差がなかった。

総ビタミンD、ビタミンD代謝物との関連性

論文ではまず、屋内/屋外アスリートごとに、ビタミンDレベルと身体能力と、ビタミンD(血清総25-(OH)D)、ビタミン代謝物との関連の検討結果が示され、続いて、本研究での新たな視点である、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、遊離型ビタミンDとの関連を検討した結果が示されている。

屋内アスリートでは複数の身体能力評価指標が有意に関連

屋内(柔道)アスリートでは、ビタミンD(血清総25-(OH)D)、ビタミンD代謝物と、垂直飛び、握力との間に有意な関連が認められた。このうち、活性型ビタミンDの1,25-(OH)2Dとの関連は、有意な負の関連だった。また、VO2maxは有意な関連がなかった。

一方、屋外(サッカー)アスリートでは、3-epi-25-(OH)D3と垂直飛びにおけるピークフォースとの間に有意な正の関連が認められた。垂直飛びの高さ、VO2max、握力との関連は非有意だった。

ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、遊離型ビタミンDとの関連性

次に、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、遊離型ビタミンDとの関連性が検討された。その結果、屋内アスリートでは、遊離型ビタミンDと垂直跳び関連のパラメーターとの有意な正の関連が認められた。

一方、屋外アスリートでは有意な関連が認められた指標はなかった。また、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)に関しては、屋内/屋外いずれのアスリートの運動能力指標とも、有意な関連が示されなかった。

ビタミンDを何で評価するかが重要な可能性

まとめると、ビタミンD代謝物(総25-(OH)D、24,25-(OH)2D3、3-epi-25-(OH)D3、1,25-(OH)2)と屋内アスリートの握力と垂直跳び関連のパラメーターが有意に相関し、屋外アスリートでは3-epi-25-(OH)D3と垂直跳び関連のパラメーターが有意に相関していた。さらに本研究の主題とも言える遊離型25-(OH)Dとの関連については、屋内アスリートの垂直飛び関連のパラメーターで有意な相関が認められた。

著者によると、本研究は、生物学的利用能の高い遊離型ビタミンDも含めて、ビタミンD関連指標とアスリートの身体能力との関係を検討した初の研究だという。結論として、「われわれの研究で観察された結果は、ビタミンD代謝物が骨格筋機能に関与している可能性があることを示唆している。ただし、スポーツパフォーマンスに対するビタミンD代謝物の働きに関しては、より多くの研究が必要とされる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationship Between Metabolites of Vitamin D, Free 25-(OH)D, and Physical Performance in Indoor and Outdoor Athletes」。〔Front Physiol. 2022 Jul 8;13:909086〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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