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オメガ3多価不飽和脂肪酸と運動で高齢者のがんリスク低下の可能性 ビタミンD追加群はより低いハザード比に

オメガ3多価不飽和脂肪酸(ω3 polyunsaturated fatty acids;ω3PUFA)の摂取と家庭内で実施可能な運動によって、高齢者の浸潤がんのリスクが低下する可能性が、無作為化比較試験の結果として報告された。ビタミンDを上乗せした場合には、浸潤がん罹患のハザード比がより低下していた。

オメガ3多価不飽和脂肪酸と運動で高齢者のがんリスク低下の可能性 ビタミンD追加群はより低いハザード比に

欧州5カ国で70歳以上の健康な高齢者2千人以上を3年追跡

ω3PUFAやビタミンDの健康上のメリットについては、心血管疾患や骨代謝関連疾患、感染症などでのエビデンスがある。ただしがんに対しては基礎的な研究でメリットを有する可能性が示されているものの、臨床研究でのエビデンスはほとんどみられない。一方、運動不足が一部のがんのリスク因子であることが示されており、運動介入による発がん予防効果が期待されている。今回紹介する論文は、それらによる発がん予防の可能性を、無作為化比較試験で検討した研究の結果報告。

この研究は、欧州5カ国(スイス、ドイツ、オーストリア、フランス、ポルトガル)の7カ所の医療機関による国際多施設共同研究として実施された。地域在住の健康な70歳以上の高齢者2,157人が参加。参加条件は、フォローアップ検査のために医療機関を受診可能な身体機能があること、認知機能障害のないこと(ミニメンタルステート検査24点以上)、参加登録の5年以内に重大な健康関連イベントのないこと。研究参加期間中は、介入で用いるもの以外のサプリメントからのビタミンDの摂取を800IU/日以内に制限し、ω3PUFAのサプリの摂取は禁止した。

ビタミンD、ω3PUFA、およびそのプラセボ、自宅での簡単な筋力トレーニング(simple home strength exercise;SHEP)の組み合わせにより、無作為に全体を以下の8群に分類。3カ月おき、3年間にわたり医療機関での検査が行われ、浸潤がんの罹患が追跡された。

8群の割り付けについて

8群の割り付けは以下のとおり。

ビタミンD単独群272人
ω3PUFA単独群269人
SHEP単独群267人
ビタミンD+ω3PUFA群265人
ビタミンD+SHEP群275人
ω3PUFA+SHEP群275人
ビタミンD+ω3PUFA+SHEP群264人
プラセボ群270人
合計2,157人

ビタミンDは、1,000IUのビタミンD3、ω3PUFAは500mgでエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を1:2の割合で含有、SHEPは、座位からの立ち上がり、片足立ちなどで構成されていた。なお、ビタミンDとω3PUFAはコーティング等により、プラセボとの区別がつかないようにした。

ω3PUFA+SHEP群と、ビタミンD+ω3PUFA+SHEP群で有意なリスク低下

ベースライン時の平均年齢は74.9歳、女性61.7%、BMI26.3±4.3、現喫煙者5.2%、併存疾患数3.3±3.0であり、身体機能の指標であるSPPBスコアは12点中、中央値11.0であって、82.6%は活動的な生活を送っていた。24%がビタミンDサプリを摂取していた。

5,562.4人年(中央値2.99年)の追跡で、119件の浸潤がんが報告された、このうち診断が確定したのは81件だった。浸潤がん診断のハザード比(HR)は以下のとおり。

ビタミンD介入HR0.76(95%CI;0.49~1.18)
ω3PUFA介入HR0.70(95%CI;0.44~1.09)
SHEP介入HR0.74(95%CI;0.48~1.15)
ビタミンD+ω3PUFA介入HR0.53(95%CI;0.28~1.00)
ビタミンD+SHEP介入HR0.56(95%CI;0.30~1.04)
ω3PUFA+SHEP介入HR0.52(95%CI;0.28~0.97)
ビタミンD+ω3PUFA+SHEP介入HR0.39(95%CI;0.18~0.85)

つまり、ω3PUFAとSHEPによる介入、およびω3PUFAとSHEPにビタミンDを追加した介入で、有意ながん診断リスクの低下が認められた。

ビタミンD+ω3PUFA+SHEP介入を33人に行えば1人の発がんを予防できる

ある介入を何人に行えばイベント発生を1人減らせるかを表すNNT(number needed to treat)は、ビタミンD+ω3PUFA+SHEP介入で33と計算された。つまり、70歳以上の健康な高齢者33人に対して、ビタミンD+ω3PUFA+SHEPによる介入を3年間継続すると、そのうち1人が、介入のメリットを得られる(発がんを予防できる)可能性か示された。感度分析として実施された、がん既往者を除いた解析では、NNT35と計算された。

なお、二次評価項目として設定されていた、特定部位のがん(消化器がん、前立腺がん、乳がん)については、一部の介入で有意な結果が得られたが、がん罹患件数自体が少ないため結果の解釈は困難だった。

文献情報

原題のタイトルは、「Combined Vitamin D, Omega-3 Fatty Acids, and a Simple Home Exercise Program May Reduce Cancer Risk Among Active Adults Aged 70 and Older: A Randomized Clinical Trial」。〔Front Aging. 2022 Apr 25;3:852643〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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