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子どもの視力と運動量に関連 子どものスポーツ参加を増やすには視力の確認と矯正が必要か

スポーツへの参加などを通して身体活動量の多い毎日を送っている子どもは視機能が良いというデータがアイルランドから報告された。論文の著者らは、子どもの視機能にとって身体活動が重要であり、また、子どものスポーツへの参加を増やすには視機能の適切な矯正が必要だと述べている。

子どもの視力と運動量に関連か 子どものスポーツ参加を増やすには視力の確認と矯正が必要か

子どもたちの視機能と身体活動量の関連は双方向性か?

身体的健康および精神的健康の維持・増進における身体活動の重要性はエビデンスが確立している。また、神経系と視覚系は発生学的起源が共有されているため、神経系の発育にプラスの影響を及ぼす身体活動が、視機能にもメリットとなる可能性が指摘されている。

一方、日本では、子どもたちの視力が年々低下していることが報告されている。また、子どもたちの体力が低下傾向にあることも知られている。さらに、国内の小学生を対象に行われた研究では、スポーツクラブに通っている子どもでは視力が低下している割合が少ないことも、最近報告された。

関連情報
令和2年度 学校保健統計 5歳〜17歳の疾病、視力、むし歯の状況
令和元年度「体力・運動能力調査」(2)年齢別に見る体力・運動能力の年次推移 スポーツ庁
スポーツクラブに通うことで小学生の視力低下が抑制される 眼鏡使用率での検討

子どもたちの視力と身体活動との関連は、双方向性である可能性が指摘されている。つまり、身体活動が少ないことが視機能の維持・向上の妨げになるとともに、視機能が良くないために身体活動量が少なくなるということも考えられる。

今回紹介する論文の著者らは、このような背景のもと、アイルランドの子どもたちの身体活動習慣と視機能との関連を検討した。

遠方・近方視力、矯正視力、立体視力、調節機能なども測定

調査は、子どもたちの身体活動に影響が生じた、新型コロナウイルス感染症パンデミックよりも前の2016年6月~2018年1月に実施された。対象はアイルランド国内から無作為に抽出された学校の生徒1,626人で、6~7歳が728人と12~13歳が898人。

身体活動量で4群に分類

保護者へのアンケートにより、子どもの身体活動量を以下の4群に分類した。

身体活動なし群…自由な時間の大半をスクリーンタイム(テレビ視聴やパソコン、スマホなどの操作)にあてている子ども。 軽度活動群…時々、ウォーキングやサイクリングなどの軽強度運動を行っている子ども。 中程度活動群…週に3時間以内の習慣的なスポーツ活動(サッカー、水泳、体操、バスケットボールなど)を行っている子ども。 高度活動群…習慣的なスポーツ活動を週に3時間以上行っている子ども。

視機能の評価と保護者の特徴の把握

視機能は学校内で検査された。検査項目は、裸眼での遠方視力(3mで単眼でのlogMAR視力)、近方視力(40cm)、矯正視力(眼鏡等を使用している場合)、立体視力、および調節機能。

また、保護者(父親と母親)の教育歴、就労状況(フルタイム勤務、パートタイム勤務、無職、フルタイムでの家人の世話に分類)を共変量として把握した。

身体活動量が少ない子どもほど視機能が低い

6~7歳の子どもの視機能と身体活動の関連

6~7歳の子どもの身体活動量は以下のように分類された。身体活動なし群10.4%、軽度活動群30.3%、中程度活動群32.6%、高度活動群26.7%。

視機能と身体活動量の関連については、遠方視力(良いほうの眼〈p=0.016〉と悪いほうの眼〈p<0.001〉の双方)、および近方視力(p=0.002)との間に有意な関連が認められ、身体活動量の多い群ほど視機能が良好だった。立体視力と身体活動量との関連は、わずかに有意水準に届かなかったが、身体活動量の多い群ほど良好な傾向があった(p=0.051)。調節機能との関連は非有意だった(p=0.49)。

12~13歳の子どもの視機能と身体活動の関連

12~13歳の子どもの身体活動量は以下のように分類された。身体活動なし群14.4%、軽度活動群14.3%、中程度活動群26.2%、高度活動群45.1%。

視機能と身体活動量の関連については、遠方視力(良いほうの眼と悪いほうの眼の双方〈ともにp<0.001〉)、および近方視力〈p=0.002〉との間に有意な関連が認められ、身体活動量の多い群ほど視機能が良好だった。さらに、6~7歳ではわずかに非有意だった立体視力との関連も有意であり、身体活動量の多い子どものほうが良好だった(p<0.001)。調節機能との関連は非有意だった(p=0.75)。

視機能が低い子どもほど「身体活動なし群」であるオッズ比が高い

次に、人種/民族や保護者の教育歴・就労状況を調整のうえ、視機能の低下の有無と「身体活動なし群」に該当する割合との関連を検討。その結果、遠方視力・近方視力・立体視力の低下、乱視、弱視、不同視(左右の眼の視力差が大きい状態)がある場合に、身体活動なし群に該当するオッズ比が有意に上昇することがわかった。斜視に関しては有意な関連がなかった。

子どもたちの身体活動奨励とともに、視機能の確認と介入を

このほか、保護者の特徴との関連の検討の結果も加えた総括として、論文の結論は、「視力低下、弱視、乱視などは、子どもの座位行動の多いライフスタイルと関連していた。社会経済的に不利な立場にある子どもや非白人の子どもは、とくに影響を強く受けていた。視機能と身体活動の関係は双方向である可能性がある。すべての子どもたちに身体活動を奨励し、視機能への適切な評価と介入が求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Visual factors associated with physical activity in schoolchildren」。〔Clin Exp Optom. 2022 Aug 11;1-11〕
原文はこちら(Informa UK)

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