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持久系アスリートの回復戦略の実態 性別・競技レベル別・トレーニング後・競技後の調査

持久系アスリートの回復戦略の調査結果が報告された。性別や競技レベルなどによって行われている回復方法に異なる傾向も認められたようだ。米国からの報告。

持久系アスリートの回復戦略の実態 性別・競技レベル別・トレーニング後・競技後の調査

回復戦略に関する情報が不足している

スポーツパフォーマンスの維持や向上のための回復戦略の重要性への認識は向上している。しかしそれにもかかわらず、トレーニングのノウハウに関する情報の豊富さに比べて、回復のノウハウに関する情報は格段に少ない。現状では多くのアスリートがエビデンスに基づく方法ではなく、経験的に身に付けた方法をとっていたり、回復戦略の違いが身体に及ぼす影響の差異に気付いていないアスリートも少なくないと考えられる。回復の影響が男性と女性で異なることも、ようやく近年になって注目され始めたことだ。例えば、女性アスリートは冷却のメリットが男性アスリートより大きい可能性が示されている。

競技レベルが高くなるほどトレーニングや競技による身体的・精神的負荷が強くなり、回復戦略がより重要になる。ことに持久力が要求される競技では、トレーニングによる負荷とその回復のバランスが肝要であり、負荷によるストレスが十分に回復されず蓄積されていくと、パフォーマンスの低下や身体的・精神的な健康が害される。

そこでこの論文の著者らは、持久系アスリートの回復戦略の実態を、性別、競技レベル別、およびトレーニング後/競技会後で比較検討した。

性別や競技レベルで異なる回復戦略が明らかに

この調査はオンラインアンケートとして実施された。回答者は264人で、年齢39.82±13.84歳、男性46.2%、白人が87.5%。

競技レベルは、プロが5.3%、大学アスリートが15.5%、および元大学アスリートが15.9%であり、その他の63.3%はレクリエーションアスリートだった。また、行っている競技全体で上位3位以内に入ったことのあるアスリートが20.8%、年齢等によりカテゴライズされた部門で上位3位以内に入ったことのあるアスリートが42.8%だった。

行っている競技は、ランニング99人、トライアスロン89人、サイクリング55人、ボート8人、競泳7人と、競歩、ノルディックスキー、パラサイクリング、車椅子レースなどが各1人。

実行されている回復方法のトップ3は、水分補給、栄養、睡眠

まず、用いられている回復方法を多いものから順に挙げると、トレーニング後では水分補給(90.9%)、栄養(79.5%)、睡眠(79.1%)が上位3位であり、以下、休息、ストレッチ、フォームローリングなどが続いた。競技会後の回復戦略も上位の順位は同様だった。ただ水分補給を挙げた割合は81.4%と約8割であり、トレーニング後の約9割よりやや少なかった。また、水分摂取以外の回復方法も、競技会後よりトレーニング後のほうがより多く実施されていた。

女性のほうが用いている回復方法の種類が多い

性別で比較すると、トレーニング後のマッサージの利用(p=0.017)、および、競技会後のストレッチ(p=0.024)の実施率に有意差があり、女性のほうが多く行っていた。また、その他の回復方法も、ほぼすべて女性の実施率のほうが高かった。

トレーニング後の回復に用いる方法の数は女性のほうが有意に多く(7.6±3.4 vs 6.8±3.5,p=0.043)、競技会後は有意差がなかった(6.7±3.4 vs 6.1±3.7,p=0.137)。

ハイレベルのアスリートのほうが多くの回復方法を用いている

次に、競技レベルで比較すると、競技会で全体の上位3位以内に入ったことのあるアスリートはそうでないアスリートに比べて、トレーニング後(8.8±3.9 vs 6.8±3.2,p<0.001)と競技会後(7.6±3.5 vs 6.1±3.5,p=0.008)ともに、より多くの回復方法を用いていた。同様に、年齢等でカテゴライズされた部門の上位3位以内に入ったことのあるアスリートはそうでないアスリートに比べて、より多くの回復方法を用いていた。

競技会で全体の上位3位以内に入ったことのあるアスリートと、そうでないアスリートが行っている回復方法のうち、トレーニング後では、マッサージ、セルフマッサージ、フォームローリングなどに有意差が認められ、いずれも上位選手の実施率ほうが高かった。競技会後では、コンプレッションガーメント(圧縮衣服)の利用率に有意差が認められ、上位選手で高かった。

若年であるほど回復に用いる方法の数が多い

年齢との関連では、トレーニング後(r=-0.21,p<0.001)、競技会後(r=-0.16,p=0.008)ともに、高齢であるほど回復に用いている方法の数が少ないという有意な負の相関が認められた。歳を重ねるに従い、自分に適した回復の方法を取捨選択していくことの現れとも考えられる。

回復戦略の情報源のトップはコーチで、女性アスリートはよりコーチに依存

回復戦略のための情報源の数は平均2.8±2.3であり、これは性別や競技レベルで異ならなかった。最も一般的な情報源はコーチであり48.3%、続いてアスリート仲間が47.5%、ウェブサイト32.7%、理学療法士26.2%、研究記事22.4%、ソーシャルメディア20.9%などが挙げられた。

性別で比較すると、女性アスリートはコーチから情報を入手している割合が、男性アスリートより有意に高かった(56.8 vs 37.7%,p=0.003)。

文献情報

原題のタイトルは、「Recovery Strategies in Endurance Athletes」。〔J Funct Morphol Kinesiol. 2022 Feb 13;7(1):22〕
原文はこちら(MDPI)

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