食事ガイドラインは超加工食品をどのように扱っているのか? 119カ国106種類の食事ガイドラインを分析
超加工食品の摂取による健康への悪影響を指摘するエビデンスが増えているにもかかわらず、世界各国で使用されている食事関連ガイドラインの大半はいまだ栄養素ベースの推奨にとどまり食品ベースの推奨は少なく、よって超加工食品の摂取を避けることを明確に記したガイドラインが少ないとする研究結果が、オーストラリアの研究者らにより報告された。
食品加工技術の移り変わりが食事ガイドラインに反映されていない
この論文の著者らは、食品加工自体は通常、問題ではなく、実際に人類は古くから食物摂取のために調理などの加工をしてきていると述べている。ただし、超加工食品は、それら人類が長年続けてきた加工とは本質的に異なるという。具体的には、乳化剤や着色料などの工業的性質の高い材料を用いて高度な加工が加えられており、当初の食材とは別の科学的組成をもつ食品になっていることを指摘している。それにもかかわらず、超加工食品が世界各国の食事ガイドラインにどのように扱われているかは研究されていない。
第二次世界大戦以前の食事に関するアドバイスは、どの国でも食料不足と栄養不良に対応するためのものであった。その後、食料生産の飛躍的な上昇と流通システムの発展により、とくに先進国においては食事に関するアドバイスの内容が根本的に変化し、過剰摂取を抑制しつつ必要な栄養素を摂取することを基本的な考え方とするガイドラインが整備された。この間、食品加工技術の発展も同時期に進行したが、その点は消費者向けのアドバイスにほとんど反映されていないと考えられる。
本論文の著者らは、この現状を背景として、現在の世界各国の食事や栄養に関するガイドラインを渉猟し、超加工食品についてどのように言及されているのかを分析した。ここではその分析の一部のみを紹介する。
NOVA食品分類について
この研究での超加工食品の定義は、NOVA食品分類に基づいている。NOVA分類は国連の農業関連施策の報告書にも用いられるなど広く定着しつつある分類法で、食品を以下の4群に分類している。
グループ1は未加工または最小限の加工を施した食品。グループ2は、グループ1の食品の加工によって得られ、グループ1の食品を摂取するために用いられる加工食材で、植物油、バター、ラードなど。グループ3は、グループ1の食品にグループ2の成分を加えて加工された食品で、缶詰、瓶詰、燻製、パンやチーズなど。グループ4は、加水分解、水素添加加工、成型、化学的修飾などによって作られた超加工食品で、マーガリン、成型肉、インスタント食品、多くの菓子類など。
119カ国106種類の食事ガイドラインを分析
著者らはこの研究のため、2020年7月に体系的なオンライン検索を行った。食事関連のガイドラインを有している可能性のある218カ国について精査した結果、137カ国が何らかのガイドラインを策定していた。このうち119カ国は独自のガイドラインをもち、18カ国は他の国と共用していた。特定の対象のみ(例えば小児のみ)を想定したガイドラインを除外後、106種類のガイドラインを分析対象とした。
このうち15種類は最大2ページのリーフレットとして、主として消費者対象に重要な点を示すというスタイルだった。39種類は詳細な内容で構成され、いくつかは消費者ではなく医療従事者などの専門職者を想定した内容だった。他の52種類は、国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations;FAO)の指針を要約したものだった。
ガイドラインのポイントは、栄養素か食品加工か?
分析された106種類のガイドラインのうち、91種類には食品加工関連の何かしらのアドバイスが含まれていた。一方、105種類のガイドラインには、栄養素に焦点を当てたアドバイスが含まれていた。
加工に関するガイドラインの推奨は、「積極的に摂取することを推奨」するものと、「摂取を控えることを推奨」するものに大別され、かつ、推奨の方法が「明示的」なものと「暗示的」なものに大別された。具体的には以下のように分類可能だった。
積極的に摂取することを推奨するガイドライン上のフレーズ
- 明示的なもの:未処理、最小限の加工、処理が少ない
- 暗示的なもの:全粒穀物、新鮮、自家製、季節の食材、全粒粉、自然、生、(果物などの)皮付き
摂取を控えることを推奨するガイドライン上のフレーズ
- 明示的なもの:食品加工、処理済み
- 暗示的なもの:缶詰、快適、ファストフード、インスタント、ジャンクフード、パッケージ商品、調理済み、添加物
加工に関するアドバイスには、用語の理解力や実行可能性の評価も必要
分析対象としたガイドラインの99%は、「正の」(摂取すべき)栄養素(ビタミンなど)や食品と、「負の」(控えるべき)栄養素や食品(主に塩、砂糖、脂肪)について、「栄養素ベース」のメッセージを利用していた。
それに対して、食品加工への明示的な言及は、45%のガイドラインが摂取を控えるメッセージとして記載していた。また、43%のガイドラインが暗示的なメッセージで食品加工に言及し、そのうち53%が超加工食品に言及していた。
全体として、ガイドラインの推奨には、食品加工に関するメッセージよりも栄養素に関するメッセージのほうが多く認められた。摂取を控えることを推奨されていた食品は大半が超加工食品だったが、一部の加工食品は、摂取を推奨するメッセージが用いられるという矛盾もみられた。
著者らは、「今後、食事ガイドラインが、食品加工に関するアドバイスを含むように変わっていく上で、使用される用語に関する一般消費者の理解の程度と、アドバイス遵守の実行可能性を考慮することが重要になる」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Representations of Ultra-Processed Foods: A Global Analysis of How Dietary Guidelines Refer to Levels of Food Processing」。〔Int J Health Policy Manag. 2022 Feb 16〕
原文はこちら(Kerman University of Medical Sciences)