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大豆製品やイソフラボン摂取は、一部の条件を除いて、認知症リスクと関連なし

日本人対象の研究から、大豆製品やイソフラボンの摂取量と認知症リスクとの間に、有意な関連はないとするデータが報告された。ただし、個別にみると、60歳未満の女性では納豆摂取が多いグループで認知症リスクが低下する傾向があったという。国立がん研究センター 予防研究グループの研究によるもので、研究の成果が「European Journal of Nutrition」に論文掲載されるとともに、同センターのサイトにニュースリリースが掲載された。

大豆製品やイソフラボン摂取は、一部の条件を除いて、認知症リスクと関連なし

イソフラボンの豊富な大豆製品の認知症予防効果は?

同研究グループでは、いろいろな生活習慣と癌・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための多目的コホート研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study;JPHC研究)を行っている。平成5年(1995年)と平成8年(1998年)に、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、高知県中央東の5保健所管内の居住者のうち、調査開始時のアンケートに回答した45~74歳の約4万1,000人の男女を、平成28年(2016年)まで追跡した調査結果に基づいて、大豆製品摂取と要介護認定情報から把握した認知症との関連を調べた。

大豆製品にはイソフラボンが多く含まれている。複数の介入研究をまとめたメタアナリシスでは、イソフラボン摂取が認知機能や記憶の改善に効果があると報告されており、認知機能の低下やアルツハイマー型認知症に予防的に働く可能性が期待されている。さらに、発酵食品である納豆には、動物実験などにおいて認知機能低下の予防効果を示すナットウキナーゼやポリアミンも含まれている。しかし、これまでの疫学研究では、大豆製品や豆腐など個別食品摂取量と認知機能との関連については、一致した関連が得られていなかった。これを背景として、JPHC研究のデータを用いて、大豆製品、個別の大豆食品(納豆、みそ、豆腐)・イソフラボンの摂取量と、その後の認知症リスクとの関連を検討した。

138食品が含まれる食物摂取頻度調査票から、総大豆製品(納豆、みそ、豆腐、ゆし豆腐、高野豆腐、油揚げ、豆乳)、納豆、みそ、豆腐(豆腐、ゆし豆腐、高野豆腐)、および、イソフラボンの1日当りの摂取量を計算し、その摂取量の五分位で5群に分け、第1五分位群(摂取量が最も下位20%)を基準に、その他のグループのその後の認知症リスクを調べた。

今回の研究では、イソフラボンの主な種類である、ゲニステインとダイゼインを足した量をイソフラボン摂取量として計算した。解析では、年齢、地域、体格、喫煙、飲酒、糖尿病既往、高血圧薬の服用、高コレステロール血症薬の服用、癌既往歴、身体活動量、閉経状況(女性のみ)、過去1年間の健診受診の有無、職業、同居の有無、エネルギー・野菜・果物・魚介類・緑茶・食塩摂取量を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除いた。

大豆製品・イソフラボン摂取は認知症リスクとは関連がなかった

2006~16年までの追跡期間中(平均9.4年)に、要介護認定情報から4,911人が認知症と診断されたことがわかった。男女とも、総大豆製品やイソフラボンの摂取量と認知症リスクとの関連はみられなかった。

一方、個別の食品でみてみると、男性ではやはり関連はみられなかったが、女性では納豆摂取が多いグループで認知症リスクが低下する傾向がみられた(図1)。さらに年齢を60歳以上と未満で分けて調べた結果、60歳未満の女性では納豆摂取と認知症リスク低下との関連が統計学的有意にみられた(図2)。男性では総大豆製品および個々の大豆食品やイソフラボンの摂取量と認知症リスクとの関連において、年齢での違いはみられなかった。

図1 大豆製品・イソフラボン摂取と認知症リスクとの関連

大豆製品・イソフラボン摂取と認知症リスクとの関連

(出典:国立がん研究センター 予防研究グループ)

図2 納豆摂取量と認知症リスクとの関連(年齢層別・女性)

納豆摂取量と認知症リスクとの関連(年齢層別・女性)

(出典:国立がん研究センター 予防研究グループ)

研究のまとめ

男女とも、総大豆製品やイソフラボン摂取とは関連がみられなかったが、個々の大豆食品では、女性において納豆摂取と認知症リスク低下と関連がみられた。納豆には、イソフラボンも多く含まれているが、ナットウキナーゼやポリアミンといった酵素も含まれており、動物実験において、認知症のリスクとなるタンパク質(アミロイドβ)の蓄積を抑制することが報告されていることから、認知症のリスク低下に働いた可能性が考えられた。

男女による結果の違いについて、飲酒や喫煙習慣の違いを考慮したが、明確な理由は明らかではなく、今後の研究が必要。

今回の研究では、アンケート回答時に60歳未満の女性で納豆摂取と認知症リスク低下と関連がみられ、60歳以上の女性では関連がみられなかった。大豆製品と認知機能との関連については、主に60歳以上や高齢者を対象とした研究が多く報告されている。それに対して今回の研究は、加齢による認知機能低下の影響が少ない60歳未満を含めて行い、その集団で納豆摂取量と認知症リスクとの有意な関連が見られた。

女性では、みその摂取量が最も多いグループ(第5五分位群)で有意に認知症のリスクが高いという結果だった。みそは塩分を多く含んでいるため、認知症のリスクの一つである高血圧や脳卒中を介した可能性を考えられる。しかし、同研究グループの過去の研究では、みその摂取量と高値血圧発症や脳卒中は関連がなく、理由は明確ではないため、さらなる研究が必要。

また、本研究では大豆製品とイソフラボン摂取と認知症との関連はみられなかった。介入研究をまとめた先行研究では、イソフラボン摂取と認知機能改善について報告されているが、それらは主に欧米で行われた研究であり、アジアからの報告は少ないことから、今後の研究が必要。

なお、今回の研究では、認知症の病型(アルツハイマー型か血管性認知症か等)が分類できなかったことや、追跡期間中の食事の変化を考慮していない点などが限界点としてあげられる。

関連情報

大豆製品摂取と認知症リスクとの関連―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―(国立がん研究センター 予防研究グループ)

文献情報

原題のタイトルは、「Soy product intake and risk of incident disabling dementia: the JPHC Disabling Dementia Study」。〔Eur J Nutr. 2022 Jul 5〕
原文はこちら(Springer Nature)

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