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過去30年でヨーロッパの人々の食生活はどのように変わってきたか?

1990年からの30年間で、ヨーロッパ諸国の人々の食生活がどのように変わったかを検討したナラティブレビュー論文が報告された。全体として、砂糖摂取量が減り、野菜や果物の摂取量は増加する傾向がみられるという。ただし、東欧と西欧で比較すると、経済状況の影響と考えられる差異も認められたとのことだ。ドイツ、フランス、オーストリア、ブルガリアの研究者による報告。

過去30年でヨーロッパの人々の食生活はどのように変わってきたか?

1990年以降の論文を対象に文献を渉猟

この論文の著者によると、アジアやアフリカ、中東などでは人々の食習慣の変遷が比較的よく研究されているが、ヨーロッパの人々を対象とする研究はほとんどなかったという。しかし、西欧と東欧との人々の健康状態の比較研究は行われており、例えば両者の平均余命は、とくに男性において40年前よりもむしろ格差が大きくなっているといった報告がみられるとのことだ。そこで本論文の著者らは、西欧と東欧の差異に焦点をあてながら、過去30年間の欧州の人々の食習慣の変遷を把握するナラティブレビューを行った。

ナラティブレビューの評価尺度(scale for the assessment of narrative review articles;SANRA)に準拠し、PubMedとGoogle-Scholarを用いて、1990年1月~2021年7月に収載された論文を対象に文献検索を実施。検索キーワードは、栄養・食事調査、食生活の変化・傾向パターンなどを設定。また、27のEU加盟国および英国の国名を検索に用いた。ヒットした文献の参考文献を基に灰色文献(商業ルートで入手困難な文献)も渉猟した。

適格基準は、EU加盟国および英国に居住している18歳以上の成人を対象に実施された食習慣にかかわる研究報告であり、未成年、妊婦、高齢者など特定のグループのみを対象に行われている研究報告は除外した。

一次検索で1万8,031報がヒットし、スクリーニングにより195報に絞り込んだ。選択された論文の参考文献をハンドサーチで検討したほか、EU加盟国の中で研究報告のみられなかった国に関して追加検索を行い、34報を追加。計229報を全文精査の対象とした。

4人のレビュアーが独立して採否を検討し、意見の不一致は議論によって解決。最終的に62報の研究論文が選択された。欧州諸国の中で、クロアチアとルクセンブルクの2カ国のみは、適格な研究論文が抽出されなかった。

食品・栄養素別の変化

以下、論文では、まず栄養素や食品カテゴリーごとに過去30年間の摂取状況の変化をまとめ、そのうえで全体的な考察を述べている。一部を抜粋して紹介していく。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸の摂取量は1990年以降、大半の西欧諸国で減少していた。ただし、スウェーデンとドイツは、調査期間全体にわたり増加が観察された。マルタとギリシャは90年代は変化がなかったが、その後10年間で減少した。

東欧諸国でも同様に、大半の国々で飽和脂肪酸の摂取量は減少してきている。ただし、チェコ共和国、スロベニア、ルーマニアは例外であり、長年にわたって増加してきている。

炭水化物

炭水化物の消費量も、西欧と東欧の大半の国々で減少傾向が続いている。その一方で、ドイツとフランスでは変化がなく、オーストリア、デンマーク、チェコ共和国では増加傾向がある。

砂糖

西欧では16カ国中11カ国で砂糖の消費量が減少した。キプロスやマルタなどの一部の国では、主に2009年以前に増加傾向があった。一方、東欧諸国では、1990からの10年間の砂糖消費量の減少傾向はそれほど明確でなかった。ただし、2000~2009年の10年間はスロバキアを除いて、砂糖消費量の減少傾向がみられた。

果物と野菜

1990~2000年は欧州諸国全体で果物と野菜の消費量に一貫した傾向はなく、増加した国と減少した国、変化のない国が混在していた。2000年からの次の10年間は、果物と野菜の消費量が増加した国の割合が増えていた。この傾向は東欧諸国よりも西欧諸国で強く認められた。

魚介類

1990~2000年に西欧諸国で魚の消費量が増加傾向にあった。しかしその後は安定し、さらに一部の国では逆転し減少する傾向もみられた。とくにフィンランドや一部の地中海諸国など、伝統的に魚の摂取量が多い国で、減少傾向がみられる。

一方、東欧では30年間にわたり魚の摂取量に変化がなく、チェコ共和国、スロバキア、エストニアでは増加が報告されていた。

肯定的な3つの変化と否定的な1つの変化

論文では、総合的にみて、欧州の人々の食生活は健康的になりつつあるとされている。具体的に、好転していることを表すポイントを3つ挙げ、反対に悪化を表す可能性のあるポイントを1つ挙げている。

複合炭水化物はすべての国で摂取量が減っている

好転を表す3つの変化とは、砂糖の消費量や砂糖を使った製品の消費量が多くの国で減少していること、飽和脂肪酸の摂取量が大半の国で減少していること、および、果物と野菜の摂取量がほぼ半数の国で増加していることだという。ただ、伝統的に果物や野菜の摂取量が多い地中海諸国では、それらの摂取量の減少傾向がみられること、もともと果物・野菜の摂取量が少ないまま増加していない国々があることは、改善の余地があるとしている。

反対に、著者らが「唯一の否定的な変化」として挙げているのは、すべての国で複合炭水化物の摂取量が減っていることだ。この変化は、肉類と乳製品の消費量の増加により一部を説明可能という。なお、欧州とは反対に、米国では同時期に全量穀物の消費量の増加が観察されているとのことだ。

西欧に比べて東欧諸国の改善は遅れている

これらのほか、西欧諸国と東欧諸国の比較からは、前者では健康的な食生活への変化が1990年代から認められるのに対して、後者では2000年、もしくは2010年以降になって変化が生じてきているという。つまり、西欧諸国に比べて東欧諸国は健康的な食生活への変化が遅れて生じてきた。

とくに魚の摂取量の差が大きく、家禽や肉類が比較的安価になったのに対して、魚介類は価格がネックとなり、西欧と東欧とで消費の格差を生んでいると考えられるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition Transition in Europe: East-West Dimensions in the Last 30 Years—A Narrative Review」。〔Front Nutr. 2022 Jul 7;9:919112〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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