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超加工食品の摂取量とメンタルヘルスの悪化に有意な関連 米国国民栄養調査の解析結果

超加工食品の摂取量が多いことと、メンタルヘルス状態が良くないこととの有意な関連が、米国国民健康栄養調査のデータの解析結果として示された。BMIや喫煙・身体活動習慣、収入などの交絡因子を調整後にも有意性が維持されるという。

超加工食品の摂取量とメンタルヘルスの悪化に有意な関連 米国国民栄養調査の解析結果

超加工食品とメンタルヘルスとの関連をNHANESデータで検討

超加工食品というカテゴリーは食品のNOVA分類の中で提唱された。NOVA分類は最近では国連の農業関連施策の報告書にも用いられるなど、広く定着しつつある。NOVA分類では、未加工または最小限の加工を施した食品、加工食材、加工食品、超加工食品の4つに分類している。このうち、超加工食品は、香料、着色剤、乳化剤などの添加物を利用し工業的に加工された食品であり、自然由来の食材の含有量は少ない。一般に砂糖、飽和脂肪酸、塩分が多く、タンパク質や食物繊維、微量栄養素はあまり含まれていない。具体的には、加糖飲料、精製加工された肉類、菓子パン、菓子などであり、低コストで手間をかけずに食べることができる。米国では加工食品の70%以上が超加工食品であり、摂取エネルギー量の約6割を占めているとされる。

超加工食品は栄養素が少ない一方でグリセミックインデックスが高いものが多く、心血管代謝面に負荷をかけるほか、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性が指摘されている。今回紹介する論文は、この関連を米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のデータを用いて検討したもの。

参考記事:「超加工食品」を減らせば飽和脂肪酸摂取量が有意に減る 8カ国横断調査の結論

総摂取エネルギー量に占める超加工食品からのエネルギー量で5群に分類

解析には、2007~12年の3回分のNHANESのデータが用いられた(日本の国民健康・栄養調査は毎年実施されているがNHANESは2年単位)。回答者から、過去または現在のコカイン、ヘロイン、メタンフェタミンの使用を報告した人を除外し、18歳以上の成人1万359人を対象とした。

NHANESでは食事摂取量が24時間思い出し法で把握されている。その結果を米国農務省の食品栄養データベース(USDA FNDDS)食品コードを用いたNOVA分類に基づき、超加工食品の摂取量を1日の総摂取エネルギー比として算出。その割合を20%ごとに区切り、全体を5群に分類した。

PHQ-9などでメンタルヘルス状態を判定

メンタルヘルス状態は、軽度うつ、メンタル不調の日数、心配や不安・緊張を感じた日数という3項目で評価した。

軽度うつについては、9項目からなる簡易版のうつ評価尺度(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9)を用いて、5点以上の場合に「軽度うつ」と判定した。メンタル不調の日数は、「過去30日間で、メンタル不調は何日あったか」という設問への回答から、範囲1~30のスコアで判定。同様に「過去30日間で、心配や不安・緊張を感じた日は何日あったか」の回答をスコア化した。

このほか、共変量として、BMI、禁煙・身体活動習慣、世帯収入などを把握した。

超加工食品の摂取量が多い群でメンタルヘルス状態が不良

まず、解析対象者1万359人の主な特徴をみると、年齢は中央値42.2歳、女性52.9%で、66.2%が非ヒスパニック系白人であり、BMIは普通体重が29.4%、やせが2.2%、過体重32.3%、肥満36.0%。喫煙歴なしが61.0%で、45.6%がWHOの推奨する身体活動量を満たしていなかった。

超加工食品の摂取エネルギー比は平均57.1%

超加工食品からの摂取エネルギー比は平均57.1%(四分位範囲44.9~68.6%)で、5群に分けた場合の該当者数と比率は以下のとおり。0~19%は305人(2.9%)、20~39%は1,860人(18.0%)、40~59%は4,023人(38.8%)、60~79%は3,286人(31.7%)、80%以上は885人(8.5%)。

軽度うつの該当者率は21.3%、過去30日間のメンタル不調の日は中央値0(四分位範0.0~3.3)、心配や不安・緊張を感じた日は同1.1(0.0~6.0)だった。

摂取エネルギー比20~39%では意外な結果も

超加工食品の摂取量とメンタルヘルス状態との関連の解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、BMI、貧困レベル、喫煙・身体活動習慣)を調整したうえで、摂取エネルギー比0~19%の群を基準として、他の群のオッズ比を検討した。その結果、以下のように有意な関連が示された。

軽度うつとの関連:摂取エネルギー比80%以上で有意なオッズ比上昇

軽度うつとの関連では、超加工食品が摂取エネルギー比80%以上の場合、0~19%の群に比べてOR1.81(95%CI;1.09~3.02)と、有意なオッズ比上昇がみられた。摂取エネルギー比80%未満では、オッズ比は1を上回っていたが有意ではなかった(20~39%はOR1.05、40~59%は1.11、60~79%は1.31)。

メンタル不調の日数との関連:すべての群で有意なオッズ比の変化が示される

次に、メンタル不調の日数との関連をみると、摂取エネルギー比40~59%の群でOR1.04(1.01~1.06)、60~79%の群は1.11(1.08~1.14)、80%以上では1.22(1.18~1.25)と、いずれも有意なオッズ比の上昇がみられた。反対に20~39%の群は、0~19%の群に比べてOR0.95(0.92~0.98)と、わずかながら有意なオッズ比の低下が認められた。

心配や不安・緊張を感じた日の日数との関連:40%以上で有意なオッズ比上昇

続いて心配や不安・緊張を感じた日の日数との関連については、摂取エネルギー比40~59%の群でOR1.06(1.06~1.10)、60~79%の群は1.15(1.12~1.18)、80%以上では1.19(1.16~1.23)と、有意なオッズ比の上昇がみられた。20~39%の群は0~19%の群と有意差がなかった(OR1.02)。

超加工食品によるメンタルの影響を支持する新たなエビデンス

以上より論文の結論は、「超加工食品の摂取量が多い人は、軽度のうつ、精神的に不健康で不安定な日を報告する可能性が有意に高い。これらのデータは、超加工食品の消費がメンタルヘルスに及ぼす潜在的な悪影響に関するエビテンスをより強固なものとする」とまとめられている。

なお、超加工食品の摂取エネルギー比が20~39%の場合に、0~19%よりもメンタル不調の日を報告する可能性が有意に低いという意外とも言える結果について、論文中ではとくに触れられていない。あえて想像を巡らせるなら、既に人々の食習慣に広く浸透している超加工食品を厳格に避けようとすると、それもまたメンタルに負荷をかけるということだろうか?

文献情報

原題のタイトルは、「Cross-sectional Examination of Ultra-processed Food Consumption and Adverse Mental Health Symptoms」。〔Public Health Nutr. 2022 Jul 28;1-24〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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