「超加工食品」を減らせば飽和脂肪酸摂取量が有意に減る 8カ国横断調査の結論
添加物や保存料などの使用等、食材を高度に変化させた超加工食品の摂取量を国全体で減らすことで、その国の国民の飽和脂肪酸の摂取量を大きく減らせることを、シミュレーションによって示した研究結果が報告された。調査対象とした8カ国のすべてで、有意な効果が見込まれるという。
8カ国の超加工食品の摂取状況
超加工食品は、通常、香料や着色料、乳化剤などを含む加工食品物質(油、脂肪、糖、デンプン、タンパク質分離物など)を用いて工業的に作られた食品を指す。一般的に、口あたりが良く、日持ちするため流通に適しており、低コストでメーカーにとっては収益性の高い製品であることが多い。その一方で、遊離糖や食塩、飽和脂肪酸を多く含み、健康への負荷が高い食品とされている。
実際、さまざまな国で実施された大規模コホート研究から、超加工食品の摂取量が増加すると、肥満、高血圧、心血管疾患、糖尿病、乳癌、全死亡のリスクが上昇することが示されており、また、超加工食品の摂取量と過剰な摂取エネルギー量、体重増加が正相関することも示されている。
他方、世界保健機関(World Health Organization;WHO)は、飽和脂肪酸摂取量と心血管死との関連を検討した無作為化比較試験やコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果に基づき、飽和脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギー量の10%未満にすることを推奨している。また、米国心臓協会はより厳格な5~6%という値を推奨している。
以上より、飽和脂肪酸を多く含み、世界各国で摂取量が増加傾向にある超加工食品の摂取を抑制することが、人々の飽和脂肪酸摂取量削減につながると考えられる。今回紹介する研究は、米国や英国などの高所得国と、メキシコ、コロンビアなどの中所得国、計8カ国において、国民の超加工食品の摂取状況を把握し、それを削減できた場合の飽和脂肪酸摂取量への影響をシミュレーションしたもの。
超加工食品の摂取は英国で最も多く、コロンビアで最も少ない
調査対象国は、ブラジル(解析に使用したデータは2008–9年)、チリ(同2010年)、コロンビア(2005年)、メキシコ(2012年)、オーストラリア(2011–12年)、英国(2008–16年)、カナダ(2015年)、米国(2015–16年)の8カ国。英国は4日間の食事日誌、メキシコとカナダは24時間思い出し法、他の国は2日間の思い出し法により摂取量を把握していた。
摂取エネルギー量に対する超加工食品の寄与率は、コロンビアが15.9%であり、8カ国中で最も低かった。反対に最も高いのは英国であり、56.7%と、実に過半数を超え6割に近い値だった。
またコロンビアは、飽和脂肪酸の摂取量も摂取エネルギー量に対して平均値8.6%と最も低く、WHOの推奨が遵守されていた。コロンビアの国民のうちWHOの推奨を超えて飽和脂肪酸を摂取している割合は、31.4%と3割ほどだった。反対に英国は飽和脂肪酸の摂取量が摂取エネルギー量に対し平均12.1%とWHOの推奨値を超えており、WHOの推奨を超えて飽和脂肪酸を摂取している国民の割合は74.0%と約4人に3人に及んだ。
コロンビアと英国以外の6カ国の超加工食品と飽和脂肪酸の摂取状況を、摂取量が少ない順に並べると以下のとおり。
ブラジルは摂取エネルギー量に対する超加工食品の寄与率が18.9%、飽和脂肪酸の寄与率が9.7%、WHOの推奨を超えている国民の割合が40.8%、チリは同順に28.6%、8.8%、32.4%、メキシコは30.0%、11.2%、58.5%、オーストラリアは41.6%、12.0%、67.1%、カナダは51.0%、11.0%、56.8%、米国は56.2%、11.5%、66.9%。
飽和脂肪酸の寄与率の平均がWHOの推奨である10%未満に保たれているのは、8カ国中、コロンビア、ブラジル、チリ3カ国であり、いずれも中所得国だった。
どの国でも超加工食品の摂取量が減れば飽和脂肪酸の摂取量が有意に減る
次に、国ごとに超加工食品の摂取量の五分位で群分けし、最低五分位群(超加工食品の摂取量が少ない下位20%)と最高五分位群(超加工食品の摂取量が多い上位20%)とで、WHOの推奨を超えて飽和脂肪酸を摂取している人の割合を比較。すると、その格差が最も大きい国はチリで、2.05倍の有意な差が存在した。これは、チリでは超加工食品の摂取量が、人によって大きく異なることを意味する。
反対に国民の間での差が最も少ないのはカナダで、最高五分位群は最低五分位群の1.14倍だった。英国は前述のように国民全体の超加工食品や飽和脂肪酸の摂取量が多く、かつ、国民間の差はカナダに次いで小さく、最高五分位群は最低五分位群の1.22倍だった。なお、カナダと英国、および以下に記す他の国もすべて、最高五分位群と最低五分位群の差は有意だった。
米国1.34倍、オーストラリア1.53倍、コロンビア1.61倍、ブラジル1.81倍、メキシコ1.88倍。
全国民の超加工食品の摂取量が各国の最低五分位群になったと仮定
続いて、各国の国民全員の超加工食品の摂取量が最低五分位群のレベルに低下した場合の飽和脂肪酸の摂取量への影響をシミュレーションした。その結果、WHOの推奨を超えて飽和脂肪酸を摂取している人の割合は、メキシコで35.0%、チリは30.8%、オーストラリア25.0%、コロンビア24.6%、ブラジル23.1%、米国20.2%、英国11.9%、カナダ10.0%、それぞれ低下すると計算された。カナダは国民の間での超加工食品摂取量の差が少ないため、影響が最も少ないが、それでも有意な低下が期待できることがわかった。カナダ以外の国も、WHOの推奨を超えて飽和脂肪酸を摂取している人の割合の低下がすべて有意だった。
なお、本研究の対象とした8カ国のすべてで、超加工食品の摂取量がタンパク質と食物繊維の摂取量と負の相関があり、遊離糖の摂取量と正の相関があることが報告されている。
文献情報
原題のタイトルは、「The burden of excessive saturated fatty acid intake attributed to ultra-processed food consumption: a study conducted with nationally representative cross-sectional studies from eight countries」。〔J Nutr Sci. 2021 Jun 4;10:e43.〕
原文はこちら(Cambridge University Press)