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子どもの頃に「体を動かすこと」の好き・嫌いを分けるものは何か? エストニアの調査結果

大人になってからの身体活動習慣の基礎は、子どもの頃に身についていることが多いとされる。では、子どもの頃に身体活動が好きか嫌いかは、どのように決まっていくのだろうか。このような視点で行われた調査研究の結果が、エストニアから報告された。

子どもの頃に「体を動かすこと」の好き・嫌いを分けるものは何か? エストニアの調査結果

大人が運動しない理由は「時間がない」。では、子どもの場合は?

身体活動やスポーツ活動の実践が、からだに良いとわかっていても始めない人が少なくない。成人の場合は、「時間がない」ことがその理由として挙げられることが多い。では、子どもの場合はどうだろうか。子どももやはり「時間不足」が運動を阻む最大の原因なのだろうか?

今回紹介する研究は、エストニアの6年生を対象に実施された。同国内の地域に偏りが生じないように、東西南北の4つの地域に分けたうえで、合計78校に調査への協力を要請し、52校から同意を得られた。調査回答者は11~13歳(平均12.7±0.4歳)の1,033人。このうち917人(男子453人、女子464人)が有効回答として解析対象とされた。

アンケートにより、運動不足に該当するか否か、身体活動やスポーツに関する知識、身体活動を習慣的に続けることの障壁などを把握した。

例えば、運動不足に該当するか否かは、「汗をかくために、1日60分以上身体を動かす頻度はどれくらいか?」という質問に対し、「めったにない」から「毎日」の五者択一で選択してもらったほか、「週に2回以上、スポーツトレーニングを行っているか?」という質問に対し、「はい/いいえ」で答えてもらった。また、1日のテレビやゲーム、インターネットの利用時間(スクリーンタイム)も質問した。

身体活動に関する知識に関しては、「一般的にはどのくらいの頻度で行うことが健康に有益か?」という問とともに、複数の選択肢を提示。正解と思うものをすべて選んでもらった。スポーツに関する知識に関しては、「持久力を伸ばすスポーツ」「パワーをつけるスポーツ」「テクニックを磨くスポーツ」について、それぞれ該当する競技の種類を挙げてもらった。

これらの回答を基に合計9点満点のスコアで、知識レベルを評価した。

スポーツに参加している子どもは身体活動のメリットを感じている

アンケートの結果、63%の子どもが組織的なスポーツトレーニングに参加していた。

毎日60分以上の身体活動を行っているのは12.5%で、週に5日以上は33%だった。一方、大半(87%)の子どもが1日2時間以上をスクリーンタイムにあてていた。これらの割合に有意差はなかった。

身体活動量が多く、スポーツを行っている子どものほうが知識レベルが高い

身体活動やスポーツに関する知識は、それらを行っている子どものほうが有意に豊富だった。

例えば、1日60分の身体活動を週に5日以上行う子ども(33%)は知識スコアが4.3±1.8、4日未満の子ども(67%)は4.0±1.8であり(p=0.03)、組織化されたスポーツに参加している子ども(63%)は4.4±1.7、参加していない子ども(37%)は3.6±1.9だった(p=0.00)。

なお、1日のスクリーンタイムが2時間/以上では、知識レベルに有意差がなかった(p=0.14)。

身体活動のメリットの自覚がスポーツへの参加と最も強く関連

多変量解析の結果、組織化されたスポーツを行っていることと最も強く関連のある因子は、身体活動のメリットを認識していることだった(調整オッズ比〈aOR〉1.64〈95%CI;1.32~2.03〉)。また、身体活動やスポーツに関する知識の豊富さも、スポーツへの参加と有意に関連していた(aOR1.15〈1.05~1.27〉)。

反対に「身体活動に対する障壁を感じていること」は、スポーツへの参加の有意な負の関連因子だった(aOR0.46〈0.38~0.56〉)。

スポーツ参加のメリットや障壁の実態は?

では、子どもが「身体活動に参加することで感じるメリット」や「身体活動参加のための障壁」とは、どのようなものだろうか。

この研究では、それぞれ10項目の考えられる理由を掲げ、それに対して「全く同意しない」(1点としてスコア化)~「全く同意する」(同5点)で選んでもらい解析している。

スポーツは、楽しくて誇りをもてる

まず先に、習慣的な身体活動を行うことのメリットをみると、「楽しい」(F=76.3)、「誇りに思う」(F=69.4)、「健康維持につながる」(F=51.0)、「記録向上」(F=47.7)、「新しい友人ができる」(F=43.3)などが上位5位に挙げられた。

一方、下位5位は、「自分を目立たせる」(F=19.6)、「肥満予防」(F=22.1)、「活力につながる」(F=31.3)、「友人と長く一緒に過ごせる」(F=35.7)、「体型維持」(F=35.9)だった。

スポーツのための器具がなく、他者より劣っているという認識

次に、身体活動参加のための障壁をみると、上位5位は、「適切な器具がない」(F=106.6)、「他者より劣っている」(F=92.4)、「怠惰」(F=76.5)、「物理的に困難」(F=70.8)、「費用がかかる」(F=69.1)だった。

一方、下位5位は、「健康上の問題」(F=17.9)、「ほかにすべきことがある」(F=29.9)、「時間がない」(F=50.6)、「近所にスポーツ施設がない」(F=58.0)、「疲れやすい(F=61.5)だった。

これらの結果を総括して著者は、「組織化されたスポーツトレーニングを行っている子どもは、スポーツ参加への障壁が少なく、スポーツを行っていることに誇りをもち、健康維持などのメリットを認識していた。学校での体育授業を通じて、子どもたちのスポーツ関連の知識を増やすことに、より注力すべきであることが示唆される」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Physical Activity and Sports Participation among Adolescents: Associations with Sports-Related Knowledge and Attitudes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 May 20;19(10):6235〕
原文はこちら(MDPI)

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