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走行距離が長い超耐久のマラソンでは、低ナトリウム血症と急性腎障害の併発が起こり得る

ウルトラマラソンなどの超耐久レース参加者の低ナトリウム血症や急性腎障害の発生率を、システマティックレビューで検討した結果が報告された。それらを併発するリスクは、レース距離が長い大会ほど高いというわけではなく、超耐久レースとしては中程度の距離の大会でも、両者の併発が報告されているという。

走行距離が長い超耐久のマラソンでは、低ナトリウム血症と急性腎障害の併発が起こり得る

超耐久レースにおけるAKIやEAHのリスクの実態を系統的レビューで検討

ウルトラマラソンやトレイルランなどの超耐久レースの人気が世界的に上昇している。これらは走行距離が長いために、マラソンに比較して環境の変化の予測が難しく、経験が成績を左右する部分が大きい。レース中の水分や食事の摂取を選手の判断で行わなければならず、また大会の規定次第でそれらを参加選手自身が携帯して走行しなければならないという点も、マラソンとの大きな違いと言える。

水分摂取量が少ない場合、脱水による腎前性の急性腎障害(acute kidney injury;AKI)のリスクが上昇する。反対に、脱水の補正のための水分摂取量が過剰の場合、運動関連低ナトリウム血症(exercise associated hyponatremia;EAH)のリスクが上昇する。また、急性腎障害(AKI)と運動関連低ナトリウム血症(EAH)を併発することもある。ただし、AKIとEAHの併発の実態に関する研究データは、本論文の著者によると、「超耐久レースはもちろん、スポーツ全体でも同時に評価した研究はない」とのことだ。

この現状から、既報研究を対象とするシステマティックレビューにより、超耐久レースにおけるAKIやEAHの発生率、およびそれらの併発の頻度を検討した結果が、今回紹介する論文の主旨。

文献検索の手法について

2021年12月31日から過去15年間の間に、PubMed、EBSCO、Web of Scienceなどに公開された論文を対象として、システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に則した文献検索を実施。検索キーワードは、超耐久、トレイルラン、低ナトリウム血症、急性腎障害などを設定。採用基準は、自然環境で開催される42kmを超えるレースで、参加者の急性腎障害(AKI)や運動関連低ナトリウム血症(EAH)のリスクを検討したケーススタディ、観察研究、縦断的または前向き研究であって、英語またはスペイン語で執筆されていること。除外基準は、腎疾患既往者を対象とする研究、また、例えばトラックレースのように標高差(500m以上)のない環境でのレースでの研究。

一次検索で1,127件がヒットし、これにハンドサーチによる40件を追加後、重複削除とタイトルおよび要約に基づくレビューを経て219件を全文精査の対象とした。最終的に28件の論文が抽出された。

28件の研究の特徴

抽出された28件のうち、13件は急性腎障害(AKI)、15件は運動関連低ナトリウム血症(EAH)に焦点を当てており、9件はAKIとEAHの併発を検討していた。

レース距離は、8件が中等度(42.195~69km)、3件が長距離(70~99km)、14件が超長距離(100km以上)であり、4件はマルチステージで構成された大会だった。累積標高差は最小が645m、最大が1万2,000mの範囲だった。

参加者数を合計すると、男性2,284人(77.42%)、女性666人(22.57%)であり、平均年齢は42.01±2.95歳だった。

AKIとEAHの併発はレース距離が短くてもみられる

急性腎障害(AKI)はトータルすると468件報告されており、発生率は42.04%と計算された。そのうち、重症度分類上、最も軽症の「Risk」が35.22%であり、中等症の「Injury」は6.73%、重症の「Failure」は1人(0.1%)だった。前記のレースの距離別に比較すると以下のとおりで、AKI発生率にレース距離との関連はみられなかった。中距離レース53.67%、長距離レース7.24%、超長距離レース38.98%、マルチステージの大会68.35%。

運動関連低ナトリウム血症(EAH)はトータルすると195件報告されており、発生率は9.44%と計算された。そのうち、軽症が7.73%であり、中等症は1.11%、重症は0人(0%)だった。レースの距離別に比較すると以下のとおりで、距離が長いレースでEAH発生率が高い傾向がみられた。中距離レース2.69%、長距離レース8.69%、超長距離レース12.19%、マルチステージの大会7.73%。

AKIとEAHの併発は36件報告されており、発生率は11.84%と計算された。レースの距離別に比較すると以下のとおりで、レース距離との関連はみられなかった。中距離レース18.51%、長距離レース5.79%、超長距離レース13.63%。

選手やコーチ、主催者は、AKIやEAHのリスクの想定を

著者らは、「超耐久レースでみられるAKIやEAHはしばしば見過ごされ、合併症なしに自然に解決する。そのため、それらの潜在的なリスクが過小評価されている傾向がある。AKIとEAHの併発には、脱水または水分摂取過剰と横紋筋融解症などが関連して発症する可能性がある。選手、コーチ、レース主催者は、現場でのEAHやAKIの早期検出と緊急治療のための対策を講じる必要があり、また、それらのリスクを評価可能なマーカーの確立が求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Acute Kidney Injury and Hyponatremia in Ultra-Trail Racing: A Systematic Review」。〔Medicina (Kaunas) (IF: 2.43; Q2). 2022 Apr 21;58(5):569〕
原文はこちら(MDPI)

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