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食事時刻が睡眠覚醒リズムを調節する 時刻のわからない「時間隔離実験」で明らかに 北海道大学

外部からの時刻に関する情報を完全に取り除いた「時間隔離実験室」という環境で生活するという実験の結果、1日1回決められた時刻に食事をとると睡眠覚醒リズムが食事スケジュールに同調することがわかった。その一方で、深部体温の変化、メラトニン、コルチゾール分泌のリズムは、食事スケジュールに同調しないという。北海道大学大学院教育学研究院の研究グループの研究によるもので、研究の成果が「American journal of physiology. Regulatory、 integrative and comparative physiology」に論文掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

食事時刻が睡眠覚醒リズムを調節する 時刻のわからない「時間隔離実験」で明らかに 北海道大学

研究の概要:ヒトの生物時計に対する食事スケジュールの影響は?

ヒトの生物時計は、時間隔離実験室※1のような恒常環境下では、睡眠覚醒リズムと概日リズムが異なる周期を示す「内的脱同調」とよばれる現象が観察される。また、厳密な生活スケジュール、および運動スケジュールなどの周期的社会的因子は、睡眠覚醒リズムを同調させる一方、概日リズムは同調させないことが、これまで報告されてきた。

※1 時間隔離実験室:昼夜変化や外部の騒音をシャットアウトした1LDKの実験用居室。被験者はこの部屋から1歩も出ることなく、時間の手がかりなしに何週間も生活することができる。

これらのことから、ヒトの生物時計の睡眠覚醒リズムと概日リズムを発振する振動体は異なり、二つの振動体が光と社会的因子に対して異なる反応性を示すとする「2振動体モデル」が提唱され、その構造と機能解析が進められてきた。しかし、規則正しい食事スケジュールが生物時計に与える影響については、マウスやラットなどの夜行性げっ歯類を用いた研究はあるが、ヒトでは長い間よくわかっていなかった。

今回の研究成果は、ヒトの生物時計に対する食事スケジュールの影響を明らかにし、その構造と機能の全容解明に寄与するもの。さらに、生体リズムの乱れが原因となる睡眠障害や、概日リズム障害を予防する行動指針の作成に寄与することが期待される。

研究の背景:規則正しい食事スケジュールが生物時計に与える影響を探る

ヒトを含め多くの動植物がもつ生物時計は独自のリズム周期をもち、朝方の太陽光により24時間周期の昼夜変化に同調している。しかし、光を全く感受することができない視覚障害者のおよそ半数が正常な24時間リズムを示すことから、光以外の社会的因子が生物時計を調節していると推測されている。ただし、その全貌は明らかになっていない。

ヒトの生物時計の構造と機能を解析するためには、時間隔離実験室とよばれる特殊な生活空間を用いて、外界の昼夜変化、温度、騒音といった時刻情報を取り除いた恒常環境下で行動(睡眠覚醒)と、生物時計が発振する深部体温、メラトニン※2、コルチゾールといったホルモンのリズムを計測することが必要。このような実験は1960年代より本格的に開始された。

※2 メラトニン:松果体から分泌されるホルモン。睡眠促進作用がある。

それらの実験から、恒常環境で長期間生活すると、睡眠覚醒リズムと概日リズムが異なる周期を示す現象が観察される。これを「内的脱同調」という。「内的脱同調」は、睡眠覚醒リズムと概日リズムが異なる振動体により駆動されていることを示唆している。

研究グループは、これまで、日本で唯一の時間隔離実験室を用いて、厳密な生活スケジュールや運動スケジュールは睡眠覚醒リズムを同調させる一方、概日リズムは同調させないことを報告してきた。これらの研究から、ヒトの生物時計は、睡眠覚醒リズムと概日リズムを発振する振動体の局在は異なることだけでなく、二つの振動体は光と社会的因子に対して異なる反応性を示すことを明らかにした。

しかし、規則正しい食事スケジュールが生物時計に与える影響については、マウスやラットなどの夜行性げっ歯類を用いて研究されている。それによると、食事スケジュールは概日リズムへの同調作用は弱く、1日1食の制限給餌スケジュール下では、食事時刻の数時間前から活動量、体温、副腎皮質ホルモン濃度が上昇する予知行動が形成され、その発振中枢は生物時計中枢(視交叉上核)以外の脳部位に存在することが想定されている。

一方、ヒトの生物時計に対する食事スケジュールの影響は長年不明だった。

研究手法:15日間にわたる、自由食事と制限食事の2条件での実験

若い成人男性を対象に、実験室内の照度を200ルクス以下に設定した時間隔離実験室で、15日間生活する実験を行った。実験開始から2日間は1日3食を決まった時刻にとり、その後、食事回数を1日1回に変更し、決められた時刻に食べる「制限食事条件」群と、食事時刻を被験者自身で決める「自由食事条件」群の2つの条件群に分け、9日間1日1食のスケジュールで生活してもらった。さらに、1日1回の食事スケジュール後に再び食事回数を1日3回に戻し、食事時刻は被験者自身が決定した。

この実験中に、生物時計の指標として、睡眠覚醒リズム、深部体温リズム、メラトニンリズムを測定した。さらに、動物実験で報告されている予知行動が食事に関連するホルモン分泌の変化としてみられるかを検討するため、コルチゾール、インスリン、グレリン、レプチンといったエネルギー代謝に関わるホルモンを測定した。

研究成果:制限食事条件で睡眠覚醒リズムは同調するが、深部体温などは同調しない

1日1回の食事時刻を固定した制限食事条件では、多くの被験者の睡眠覚醒リズムは24時間と区別できない周期を示し、位相後退が阻止された。しかし、同じ1日1食であっても自由食事条件では、ほとんどの被験者で睡眠覚醒リズムは24時間より長い周期を示した。

一方、深部体温、メラトニン、コルチゾールリズムは、1日1食スケジュールでは24時間より長い周期を示した。動物実験でみられる食事時刻に対する予知行動は、今回調べたホルモンでは観察されなかった。

Aは、隔離実験室内での睡眠覚醒リズム、メラトニンリズムピーク時刻、深部体温の低体温相の典型例。
Bは、1日1食スケジュール前後の睡眠覚醒リズム指標である睡眠中点と概日リズム指標であるメラトニンピーク時刻、深部体温最低値時刻の平均値と標準偏差。
*:p<0.05。**:p<0.01。1日1食スケジュールにする前の平均値に対して、統計学的に有意に異なることを示す。
(出典:北海道大学)

今後への期待

研究グループでは、「今回の研究成果は、長年不明であったヒトの生物時計に対する食事スケジュールの影響を明らかにし、ヒトの生物時計の構造と機能の全容解明に寄与するもの。さらに、本研究の成果は生体リズムの乱れが原因となる睡眠障害や概日リズム障害を予防する行動指針の作成に寄与することが期待される」と述べている。

プレスリリース

食事時刻が睡眠覚醒リズムを調節:時間隔離実験により世界ではじめて証明~ヒト生物時計の構造と機能の全容解明に貢献~(北海道大学)

文献情報

原題のタイトルは、「A fixed single meal in the subjective day prevents free-running of the human sleep-wake cycle but not of the circadian pacemaker under temporal isolation」。〔Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2022 Apr 26〕
原文はこちら(the American Physiological Society)

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