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国内の中学生を含む青年期一般アスリートの貧血の特徴と、補充すべき栄養素が明らかに

国内の中学生から大学生の運動部に所属する一般アスリートの貧血の特徴が報告された。よしのぶクリニック(鹿児島)の山本佳奈氏(研究時の所属は東京大学大学院医学系研究科博士課程)らによる研究の結果であり、「PeerJ」に論文が掲載された。

国内の中学生を含む青年期一般アスリートの貧血の特徴と、補充すべき栄養素が明らかに

学校や地域の運動部に所属する青年期(13–22歳)の一般アスリートの貧血は、男女を問わず重要な健康課題であることがわかった。また、彼らの貧血の要因が鉄欠乏だけでなく過度なトレーニングとの関連が示唆されたことから、鉄の補給に加えて、患者が行っているトレーニングの量や種類や頻度に注意を払う必要があるかもしれないことが明らかになった。

未成年から若年成人アスリートの特徴は?

アスリートは鉄欠乏や貧血のリスクが高いことが知られている。例えば海外から、女子プロアスリートの鉄欠乏の有病率は49~52%、男子の学生またはエリートアスリートの有病率2.9~15%というデータが報告されている。アスリートの鉄欠乏や貧血は、身体的健康を阻害するだけでなく、スポーツパフォーマンスにも影響を及ぼす。そのためアスリートの鉄欠乏や貧血リスクを定期的にモニタリングすることも推奨されている。

ただし、アスリートの鉄欠乏・貧血に関する研究の大半は、プロやエリートレベルまたは学生アスリートを対象に行われてきており、学校やコミュニティークラブでスポーツを行っている生徒での鉄欠乏・貧血の特徴はほとんど知られていない。

この状況を背景として山本氏らは、貧血を含む血液内科診療に重点を置いている、よしのぶクリニックの外来患者の検査データを遡及的に解析し、青年期の一般アスリートの貧血の実態を検討した。

貧血専門外来を受診した若年アスリートの特徴

解析対象は、2016年8月1日~2021年8月31日に、貧血治療のため同院を受診した13~22歳(中学生~大学生)の患者のうち、スポーツ活動を行っている485人。同院受診のきっかけの多くは、貧血の症状、または所属クラブのトレーナーのアドバイスだった。

主な特徴は、年齢中央値15歳、女子52%、BMI中央値19.2(範囲13.6~31.1)で、行っている競技は、陸上35%(そのうち55%は中~長距離)、バスケットボール22%、サッカー9%など。練習の頻度は、週5日以上が大半(男子は86%、女子は89%)を占めていた。

72人の女子(28%)は月経周期が不規則であることを報告した。9人(女子の4%)は初経発来前だった。

また、485人中55人は、同院受診時点で前医から処方された鉄剤されているか、鉄サプリメントを利用していた。

未治療の貧血群と非貧血群の比較

貧血治療を既に行っていた55人を除いた430人(男子201人、女子229人)のうち、ヘモグロビン(Hb)値に基づき貧血と診断されたのは、男子18人(9.0%〈95%CI;5.4~13.8〉)、女子53人(23.1%〈17.8~29.2〉)、合計71人(16.5%〈13.1~20.4〉)だった。なお、貧血の診断基準は世界保健機関(WHO)の定義に則して、Hbが14歳以下は性別にかかわらず12.0g/dL未満、15歳以上の男子は13.0g/dL未満とした。

貧血群と非貧血群とを比較すると、男子・女子ともに、年齢やBMI、行っているスポーツ、練習頻度などに有意差はなかった。

検査値関連では、貧血群は男子・女子ともに、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)が有意に低く、フェリチン低値(30μg/L未満)の割合が有意に高かった。網状赤血球数は有意差がなかった。

そのほか、クレアチンキナーゼ(CK)高値(147IU/L以上)は男子・女子ともに貧血群で有意に多く、葉酸欠乏(4ng/mL未満)は男子では有意差がなく、女子では貧血群で有意に多かった。ビタミンB12欠乏(350pg/mL未満)は男子・女子ともに有意差がなかった。

CK高値などが貧血に独立して関連

次に、貧血に関連する因子を多変量解析で検討した結果、男子・女子ともに、フェリチン低値とクレアチンキナーゼ(CK)高値が、貧血と独立した関連のあることが明らかになった。オッズ比(OR)は以下のとおり。

フェリチン低値に関しては男子でOR13.2(95%信頼区間4.2~41.1)、女子はOR6.6(1.3~13.9)、CK高値に関しては男子OR14.7(1.8~118.4)、女子OR2.7(1.4~5.5)。

なお、フェリチン低値は鉄欠乏状態を表している。また、CK高値は、トレーニングによる筋損傷を表している可能性が考えられる。

鉄剤やサプリで前治療を受けた患者の半数が、ビタミン12欠乏

前述のように、55人(男子30人、女子25人)は、同院初診時に既に鉄剤または鉄サプリメントによる前治療を受けていた。それにもかかわらず、12人(男子と女子各6人)は、貧血の診断基準を満たしていた。

この12人の検査データを検討した結果、フェリチン低値が7人、CK高値が10人に認められ、さらにビタミンB12欠乏が6人(男子5人、女子1人。前治療が鉄剤5人、鉄サプリが1人)に認められた。

若年アスリートの貧血の治療では、鉄の補充だけでなく、練習量や頻度に留意を

以上の結果をもとに論文の結論は、「学校や地域の運動部に所属する青年期(13–22歳)一般アスリートの貧血は、男女を問わず重要な健康課題である。彼らの貧血の要因は、鉄欠乏だけでなく過度なトレーニングとの関連が示唆された。貧血を呈する青年期一般アスリートの治療を行う医師は、鉄の補給に加えて、患者が行っているトレーニングの量や種類や頻度に注意を払う必要があるかもしれない。」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Profiles of anemia in adolescent students with sports club membership in an outpatient clinic setting: a retrospective study」。〔PeerJ. 2022 Feb 25;10:e13004〕
原文はこちら(PeerJ)

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