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階段を上るのに苦労している高齢者は、リノール酸の摂取量が不足しているのかもしれない

高齢者のリノール酸摂取量と身体機能との関連が米国から報告された。リノール酸の摂取量が推奨量の85%未満の高齢者は、交絡因子を調整後も、階段を上れない、または上るのに苦労すると答えた割合が有意に高いという。著者は、高齢者の栄養指導にあたる栄養士は、リノール酸の摂取量も評価すべきではないかと述べている。

階段を上るのに苦労している高齢者は、リノール酸の摂取量が不足しているのかもしれない

リノール酸摂取不足が骨格筋の健康を害するか?

多価不飽和脂肪酸であるリノール酸は、ミトコンドリアでのアデノシン三リン酸(ATP)合成にかかわり、その機能低下により慢性炎症やインスリン抵抗性が亢進する可能性が報告されている。ミトコンドリアの機能を維持しATP合成を促す介入は、高齢者の骨格筋の健康を改善すると考えられる。

リノール酸は必須脂肪酸であり食事が唯一の供給源だが、高齢者では摂取量の低下などのために、血清リノール酸レベルが低下しているとの報告がある。ただし、リノール酸レベルと骨格筋の健康状態との関連を検討した研究はみられない。そこで、本論文の著者らは、米国で実施された前向き観察研究「健康、加齢および体組成(Health, Aging, and Body Composition;Health ABC)研究」のデータを用いて、この点を検討した。

70代の高齢者を対象に検討

Health ABC研究は、1997~98年に70~79歳の高齢者3,075人を登録。そのうち、摂取エネルギー量や身体機能が評価可能なデータのある、323人を対象としてサブスタディが行われた。

身体機能は、以下の3つの動作を困難を伴わずに実行できるか否かで評価された。1つは階段を上ること、2つ目は4分の1マイル(約400m)歩くこと、3つ目は10ポンド(約4.5kg)を持ち上げること。

リノール酸の摂取量は、食物摂取頻度アンケートから推計した。推奨される摂取量の85%未満(男性は12.0g/日未満、女性は9.6g/日未満)の場合、リノール酸の摂取量が少ない(不足群)と判定した。

このほか共変量として、年齢、性別、BMI、人種、教育歴、喫煙状況を把握した。

リノール酸摂取不足は一部の身体機能に影響を及ぼす可能性

対象者は年齢が74.4±2.8歳、男性49.8%、白人52.0%、肥満(BMI30以上)25.2%、現喫煙者11.0%だった。リノール酸摂取量は平均18.9±11.4g/日であり、階段を上るのに支障がある人が13.8%、4分の1マイル歩くのに支障がある人が19.2%、10ポンドを持ち上げるのに支障がある人が9.7%だった。

不足群と非不足群で、リノール酸摂取量以外は有意差なし

リノール酸摂取量が少ない(推奨量の85%未満)の不足群に該当したのは24.6%だった。不足群と非不足群を比較すると、年齢、性別(男性の割合)、人種、肥満者の割合、教育歴、現喫煙者率に有意差は認められなかった。リノール酸摂取量は、不足群が7.8(95%CI;7.3~8.3)g/日、非不足群22.5(同21.2~23.9)g/日であり、群間に有意差が存在した。

3つの身体機能の低下(階段を上る、4分の1マイル歩く、10ポンドを持ち上げるという行為に支障がある)の該当者率については、すべて95%信頼区間がオーバーラップし、有意差がなかった。ただし、階段を上ることに支障がある割合は、リノール酸不足群23.0(13.7~32.4)%、非不足群10.8(6.9~14.8)%と、有意でないながらも前者のほうが、その比率が高かった。

3つの身体機能の評価指標の中で、階段の上ることの困難さのみ有意差

次に、前記の交絡因子(年齢、性別、人種、肥満、教育歴、現喫煙)で調整後、3つの身体機能低下を表す状態に該当するオッズ比を検討。その結果、リノール酸不足群は、「階段を上るのに支障がある」のオッズ比が2.58(95%CI;1.27~5.24)であり、非不足群に比較し有意に多かった。

なお、「4分の1マイル歩くのに支障がある」のオッズ比は0.89(同0.44~1.77)、「10ポンドを持ち上げるのに支障がある」は0.55(0.19~1.59)であり、有意なオッズ比上昇はみられなかった。

摂取エネルギー量などで調整後も有意なオッズ比上昇

リノール酸の摂取量は、以下に記すように、主要栄養素や摂取エネルギー量と有意な相関がみられた。最も相関係数が高い栄養素は脂質でr=0.92、次にタンパク質がr=0.70、炭水化物がr=0.63であり、摂取エネルギー量とはr=0.82だった(いずれもp<0.001)。

このことから、リノール酸の摂取量が少ないことではなく、食事摂取量が少ないこと自体が、階段を上るのに支障がある状態と関連している可能性が考えられた。しかし、前述の交絡因子(年齢、性別、人種、肥満、教育歴、現喫煙)に、主要栄養素の摂取量および摂取エネルギー量を追加して解析すると、OR4.27(1.68~10.82)と、より高いオッズ比が示された。

以上より著者らは、「リノール酸の1日の摂取量が少ないことは、高齢者の身体機能に関連している可能性があることがわかった。高齢患者の栄養指導にあたる栄養士は、身体機能の維持・改善のために、対象者のリノール酸摂取量を評価すべきではないか」と結論している。

文献情報

原題のタイトルは、「Linoleic Acid Intake and Physical Function: Pilot Results from the Health ABC Energy Expenditure Sub-Study」。〔Adv Geriatr Med Res. 2022;4(1):e220001〕
原文はこちら(Hapres)

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