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アスリートは摂取する炭水化物をどのように選択しているのか? 持久系アスリート千人以上のアンケート結果

持久系スポーツのパフォーマンスの最適化には炭水化物の摂取戦略が一つのポイントとなる。では、アスリートは、トレーニングにおいてどのような炭水化物を摂取していて、どのような理由でそれを選択しているのだろうか。このような視点で1千人以上の持久系アスリートを対象に行ったアンケート調査の結果が報告された。性別や競技種目、競技レベルによる異なる傾向が認められたという。

アスリートは摂取する炭水化物をどのように選択しているのか? 持久系アスリート千人以上のアンケート結果

1千人以上の持久系アスリートを対象とするドイツ語によるオンライン調査

この調査は、2021年5~6月の4週間に、ドイツ語による匿名のオンライン調査として横断的に実施された。Facebook、Instagram、Twitter、LinkedInというソーシャルメディアを通じて、ドイツ、オーストリア、スイスのスポーツ栄養士、コーチ、アスリート、持久系イベントの主催者に回答者を募る投稿を行い、連絡を受け取った人が心当たりのある人へ招待メールを次々に拡散してもらうというスノーボールサンプリングにて、回答者数を確保した。

2名のスポーツ栄養士と1名のスポーツ科学者によって、アンケート内容の妥当性がレビューされた後、競技や食習慣が異なる5名の持久系アスリートを対象にパイロット調査を行い、フィードバックされた指摘に基づき更新。回答内容により最大12~14問で構成されるアンケート内容が決定された。

回答参加の適格条件は、18歳以上のドイツ語を母国語とする長距離ランナー、トライアスリート、サイクリストであり、トレーニング中に少なくとも時々、炭水化物を摂取する習慣があること。競技レベルはレクリエーションレベルからプロレベルまで含めた。質問に対する回答は、示された炭水化物食品の摂取頻度が、「まったくない」場合は1点、「まれに」は2点、「時々」は3点、「頻繁に」は4点、「常に」は5点というリッカートスコアで評価してもらい解析に用いた。

アンケート回答者の特徴

有効回答者数は1,081人だった。年齢は18~60歳以上の範囲にわたったが、約7割(68.6%)は18~39歳だった。性別は女性41.7%、男性58.0%、行っているスポーツは、トライアスロン50.6%、サイクリング25.1%、ランニング24.1%。

競技レベルは40.1%がレクリエーションレベル、57.6%がアマチュア(国内大会出場レベル)、2.3%がプロだった。トレーニング歴は、1年未満が1.4%、1~3年が16.4%、4~6年が23.1%、7~10年が14.9%、10年以上が44.2%。1週間のトレーニング時間は、5時間未満が7.3%、5~9時間が37.3%、10~14時間が40.2%、15~20時間が12.4%、21~25時間が2.1%、25時間以上が0.6%。

トレーニング中の炭水化物源とその選択理由

炭水化物源に性別、実施競技、競技レベルで有意差

67.4%は、スポーツ栄養サプリメントと一般の食品の双方を、トレーニング中の炭水化物源として利用していた。19.3%はスポーツ栄養サプリメントのみ、13.2%は一般の食品のみと回答した。性別や行っている競技、競技レベルにより、以下のように回答に有意差が認められた。

男性(70.5%)は、女性(63.2%)よりも双方を利用している頻度が高く(p=0.012)、一般の食品のみとの回答は男性(8.3%)よりも女性(20.0%)に多かった(p<0.001)。

トライアスリート(6.8%)は、ランナー(23.2%)やサイクリスト(16.6%)よりも、一般の食品のみとの回答が少なかった(双方に対してp<0.001)。スポーツ栄養サプリメントのみとの回答は、サイクリスト(13.7%)よりトライアスリート(23.4%)のほうが多かった(p=0.003)。トライアスリート(69.8%)は、ランナー(60.1%)よりも、スポーツ栄養サプリメントと一般の食品の双方を利用している割合が高かった(p=0.017)。

レクリエーションアスリート(21.7%)は、アマチュア(7.9%,p<0.001)やプロ(0.0%,p<0.05)よりも、一般の食品のみとの回答が多かった。ただし、スポーツ栄養サプリメントのみとの回答は、レクリエーションアスリート(14.5%)よりもアマチュア(22.2%)のほうが多かった(p=0.006)。

炭水化物源の選択理由

スポーツ栄養サプリメントと一般の食品の双方を炭水化物源として利用すると回答したアスリートの中で、61.3%は「スポーツ栄養サプリメントのほうが一般の食品より便利である」と回答した。トレーニング中の炭水化物源としてスポーツ栄養サプリメントを購入する際に重視することは、利便性、つまり、運動中の摂取しやすさが85.2%、携帯性の良さが73.7%に上った。

一方、一般の食品のみを利用しているアスリートにとって、選択の際に重視することとして、「健康的な食品/天然成分であること」が84.6%に上った。

全参加者の15.0%が、食感を選択の際の決定理由に挙げた。また、11.9%は、スポーツ栄養サプリメントを利用しない理由として、価格を挙げた。

炭水化物の摂取頻度やその形態

低~中強度のトレーニング中に利用される炭水化物源は、スポーツドリンクが多く(前記のリッカートスコアの平均が2.56±1.33)、バナナとの回答(同2.27±1.14)との間に有意差があった(p<0.001)。

高強度トレーニングの場合、スポーツドリンク(3.31±1.51)はジェル(2.79±1.37)よりも利用される頻度が高く、ただしジェルはエネルギーバー(2.43±1.28)よりも高頻度に利用されていた(いずれもp<0.001)。

スポーツ栄養士による指導やサプリメントメーカーに有用な知見

論文ではこのほかにも、行っている競技や競技レベルによって、利用しているスポーツ栄養サプリメントの傾向に相違が認められたことがデータとともに記されている。

著者らは本調査が「年齢、参加競技、競技レベルの異なる背景をもつ大規模なサンプルで、トレーニング中の炭水化物摂取習慣とその選択の決定要因を明らかにした初の調査である」としたうえで、結論を以下のようにまとめている。

「トレーニング中の炭水化物摂取状況は、性別、競技レベル、およびスポーツの種類によって異なる。この調査結果は、栄養士やコーチのスポーツ栄養戦略とアスリートへの教育に有用であり、スポーツ栄養サプリメントメーカーの製品設計のための新たな視座となり得る」。

文献情報

原題のタイトルは、「Carbohydrate Intake Practices and Determinants of Food Choices During Training in Recreational, Amateur, and Professional Endurance Athletes: A Survey Analysis」。〔Front Nutr. 2022 Mar 11;9:862396〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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