身体活動・多様な食品摂取・社会交流の3要素が要介護リスクを大きく低減 高齢者7,822名を3.6年追跡
中高強度身体活動、多様な食品摂取、社会交流行動という3つを組み合わせて実践するほど、要介護リスクが大きく低減するという研究結果が発表された。東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループの研究によるもので、「Journal of Epidemiology」に論文が掲載されるとともに、同研究上のサイトにニュースリリースが掲載された。
研究の背景:介護予防介入の相加的効果を探る
これまで多くの研究で、高齢期の定期的な身体活動、多様な食品摂取、活発な社会交流は、それぞれ独立して介護予防に効果的であることが示されてきた。しかし、これらの健康行動を組み合わせて実践することによって、介護予防効果がどの程度高まるのかについては明らかになっていなかった。そこで研究グループでは、これら3つの因子が、要介護化リスク(要支援・要介護状態の新規発生)に及ぼす累積的な影響と、その集団寄与危険割合※1を縦断分析によって検討した。
研究成果の概要:健康行動の実践数が多いほど効果が高い
東京都内の65~84歳の高齢者7,822名(男性3,966名、女性3,856名、平均年齢73.6歳)を対象に、3.6年間の追跡研究を行った。質問紙によって、2016年時点の中高強度身体活動量(週150分以上)※2、食品摂取多様性得点(3点以上)※3、対面/非対面交流(週1回以上)、それぞれの充足の有無を評価し、これらの充足数と3.6年間の新規要支援・要介護認定との関係を分析した。
その結果、これら3つの健康行動の充足数が増えるほど、3.6年間の要介護化リスクが大きく低減するという量・反応関係が明示された。
具体的には、3つの健康行動をいずれも実践していない群と比較して、要介護化リスクは、いずれか2つ実践している群で35%、3つすべて実践している群で46%、それぞれ有意に低値を示した(図1左)。
また、高齢者全員(3つすべての健康行動をすでに充足している者を除く)が3つすべての健康行動を充足した場合、その集団における3.6年間の要介護化は16%減少することが示唆された(図1右)。
図1 身体活動・多様な食品摂取・社会交流行動の充足数別の要介護リスクと集団寄与危険割合
研究成果の意義
本研究結果から、地域における介護予防の取り組みとして、身体活動・多様な食品摂取・社会交流のうち、足りない行動要素を個人の生活習慣や高齢者の自主グループ活動等に付加することが有用である可能性が示された。
研究チームでは、本知見をもとに、通いの場などの介護予防機能の強化を図る“ちょい足し”プログラムを体系化し、高齢者や自治体職員、専門職への研修を通して各地で普及・展開している。その研修で使用しているテキスト(図2)を、同研究チームのホームページで公開している。
プレスリリース
身体活動・多様な食品摂取・社会交流:3つがそろうと介護予防効果は顕著に高まる(東京都健康長寿医療センター研究所)
文献情報
原題のタイトルは、「Combined Impacts of Physical Activity, Dietary Variety, and Social Interaction on Incident Functional Disability in Older Japanese Adults」。〔J Epidemiol. 2021 Dec 18〕
原文はこちら(J-STAGE)