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ナトリウムで筋痙攣を防げる? 持久系アスリートの健康やパフォーマンスとNa摂取のレビュー

ナトリウム摂取とアスリートの健康やパフォーマンスとの関連をまとめた、ギリシャの研究者によるレビュー論文が発表された。2021年までに報告された130報の研究報告を基に、ナトリウム摂取量が多すぎる場合と少なすぎる場合の影響と、ナトリウムレベルを適切に保つための戦略について述べられている。

ナトリウムで筋痙攣を防げる? 持久系アスリートの健康やパフォーマンスとNa摂取のレビュー

ナトリウムについて、わかっていることは実は少ない?

ナトリウムは欠くことのできない栄養成分の一つであり、過剰摂取または、極めて過少な摂取は健康やスポーツパフォーマンスに影響を及ぼすと考えられる。しかし、スポーツ栄養の研究は主として、タンパク質、炭水化物、脂質について行われてきており、ナトリウムにはあまり関心が向けられていない。ところが実際には、スポーツ中の発汗に伴い、ナトリウムは3~4g以上も失われる可能性がある。とくに持久系・超持久系スポーツではその対策を無視できない。例えば、ナトリウムの喪失によって低ナトリウム血症だけでなく、筋肉の痙攣が惹起されるとされている。

ただ、ナトリウムの摂取量を巡っては明確でないことも少なくない。一般住民の適切なナトリウム摂取量はどのくらいか?、その値はアスリートとは異なるのか?、低ナトリウム血症と筋痙攣は本当に関連があるのか?、ナトリウムの補給によって低ナトリウム血症を予防できるのか?、といった疑問に対する回答を、強いエビデンスとともに示すことは現状では難しいとも言える。

このような状況を背景として本論文の著者らは、文献データベースのPubMedとScopusに2021年までに報告された研究論文130報を収集。持久系アスリートの健康とパフォーマンスに対するナトリウムの役割について網羅的な検討を行った。一部の要旨を抜粋して紹介する。

一般住民でのナトリウム摂取の影響

過剰摂取

ナトリウムの過剰摂取は糸球体内圧を上昇させ腎疾患を惹起する。そのほかに、尿中排泄量増加とともに高カルシウム尿症となり、骨粗鬆症のリスクが上昇する。また、胃癌のリスク上昇との関連も報告されている。ただしそのメカニズムは明らかになっていない。

その他、ナトリウム過剰摂取が高血圧リスクと関連していることは広く知られており、摂取量と血圧レベルが相関することは多くのエビデンスがある。

極めて少ない摂取

一方、ナトリウム摂取量が極めて少ない場合も、心血管疾患の治療に必ずしも有益であるとは限らないことを示す報告がある。ナトリウム摂取量が少なすぎる場合、血圧レベルとは無関係に心血管イベントや死亡のリスクが上昇する可能性のあることが知られている。尿中ナトリウム排泄を1日3g未満とすることで収縮期血圧がさらに低下することはなく、拡張期血圧はむしろ上昇する傾向がみられたとの報告もある。

ただし、留意すべき点として、そのような極めて低いナトリウム摂取量を達成している個人は、何らかの心血管リスク因子を有しており、ナトリウム摂取量をできるだけ減らすように指導を受けている人であるかもしれない。ナトリウム摂取量が極端に少ない場合の心血管イベントや死亡リスクの上昇は、因果の逆転を表している可能性もある。

アスリートのナトリウム摂取

運動関連の筋痙攣(EAMC)

身体活動中または直後の骨格筋の痛みを伴う不随意収縮として定義されている運動関連筋痙攣(exercise-associated muscle cramps;EAMC)は、発汗に伴うナトリウム喪失による電解質の枯渇が原因と言われている。ただし、それを説明可能な科学的機序は明らかにされていない。

さまざまなスポーツにおける運動関連筋痙攣(EAMC)の発症率を文献から収集すると、以下のとおり。マラソン18%、トライアスロン23%、56kmウルトラマラソン41%、100kmウルトラマラソン23%、166kmウルトラマラソン14%、アメリカンフットボール30~53%、自転車レース60%。脱水リスクやそれに伴うナトリウムの枯渇は、EAMCリスクと関連がないのではないかと結論付けている報告もある。

運動関連性低ナトリウム血症

運動中・運動後の水分補給により、血漿ナトリウム濃度が135mmol/L未満、または7~10%低下した場合を、運動関連性低ナトリウム血症(exercise-associated hyponatremia;EAH)と呼ばれる。これは、4~6時間以上の長時間の運動中または運動後に発生するリスクが高く、運動終了後24時間まで影響が及ぶ。主な原因は、運動中の過剰な水分摂取、発汗に伴うナトリウム喪失など。ただし、発汗によるナトリウム喪失よりも、脱水補正のための水分摂取が主要原因と考えられている。

低ナトリウム血症の症状は、激しい運動負荷時にみられることの多い一般的な症状と共通しているため、注意を要する。

持久系スポーツでのナトリウムの供給源と摂取量

若干の塩味の飲み物は、持久系・超持久系スポーツのイベント中の浸透圧バランスの維持に有用。スポーツドリンク960mL(32オンス)ごとに3.2gの食卓塩を加えると、味や吸収に悪影響を与えることなく、ナトリウム濃度をより高めることができると報告されている。また、例えば気温が25℃、湿度が60%を上回る条件下では、発汗量の増加に備えて、ランナーはナトリウム300~600mg/時(塩化ナトリウム換算1,000~2,000mg)を目安に摂取することも重要と考えられる。

このほか論文では、ナトリウムレベルと水分摂取戦略、運動関連筋痙攣(EAMC)や運動関連性低ナトリウム血症(EAH)の予防と治療などについて総括。それらのうえで、結論部分は以下のようにまとめられている。

運動後の水分バランスを回復するのには通常水では不十分な可能性があり、ナトリウム摂取量は理想的には汗で失われるナトリウム濃度と等しい必要がある。市販のスポーツドリンクのナトリウム含有量は、汗で失われるナトリウム含有量よりも低く、やや不十分。

EAMCに関しては、ナトリウムレベルとの関連についての科学的エビデンスは文書化されていないようである。EAMCの好発する時間帯は筋疲労が生じている時間帯でもある。

またEAHに関しては、レース中のナトリウム摂取によって血中ナトリウム濃度の低下を軽減することができるが、脱水予防のための過剰な水分摂取の条件下ではEAHを防ぐことはできない。血中ナトリウムレベルを規定するのは、運動中に消費されるナトリウムの量ではなく、摂取される水分の量である。

スポーツ栄養士やコーチは、アスリートに適切な水分補給方法を教育し、トレーニングや競技中の水分摂取量をモニタリングする重要な役割を担っている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Sodium Intake on Health and Performance in Endurance and Ultra-Endurance Sports」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Mar 19;19(6):3651〕
原文はこちら(MDPI)

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