スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2022 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

ボディービルダーの薬剤性急性膵炎の症例報告 アナボリックステロイドなどを使用中に発症

アナボリック(タンパク同化)ステロイドなどの使用が原因と考えられる急性膵炎を発症したボディービルダーの症例報告が論文発表された。用いていた薬剤の使用中止と点滴による水分補給、疼痛管理で症状は消失。その後、このボディービルダーは薬剤やサプリメントの使用を行っておらず、膵炎の再発はみられないという。報告者らは、「臨床医は、薬物等を利用しているボディービルダーやアスリートに、薬剤性急性膵炎が発生する可能性に注意する必要がある」と述べている。

ボディービルダーの薬剤性急性膵炎の症例報告 アナボリックステロイドなどを使用中に発症

薬剤性急性膵炎(DIAP)の診断は除外診断

海外からは、運動パフォーマンスや審美的評価の向上を目的として、成長ホルモンやアナボリックアンドロゲンステロイド(anabolic–androgenic steroids;AAS)などを使用するボディービルダーが少なくないことが報告されている。

一方、急性膵炎の年間推定罹患率は、10万人あたり5~80の範囲と、報告により大きく異なる。また重症度も報告により広く分布し、死亡率1%未満から30%以上とされる。急性膵炎の最も一般的な症状は上腹部痛で、背部に放散痛が広がる。原因は30~60%が胆石の影響、15~30%が大量飲酒と言われ、薬剤性急性膵炎(drug-induced acute pancreatitis;DIAP)は比較的まれとされており、正確な罹患率は不明。

薬剤性急性膵炎の診断は除外診断によってなされ、治療には被疑薬の中止が必須であり、治癒後も再発防止のため、被疑薬の使用を再開しないよう患者教育が重要。患者の理解が不足している場合、急性膵炎の再発を繰り返し、膵機能の不可逆的な低下を来すことがある。

多数の薬剤を独自に入手し使用していた症例

今回の報告は、アラブ首長国連邦(UAE)からの報告。31歳のアラブ人男性ボディービルダーが、嘔気と背部への放散痛を伴う上腹部痛を急性発症し、救急外来を受診した。体重減少、発熱、悪寒、倦怠感などの症状や、心血管、呼吸器、神経、筋骨格、血液、内分泌疾患の既往や手術歴はなかった。また、診断された悪性腫瘍はなく、感染症は否定的で、外傷やサソリ咬傷もなかった。さらに患者には、喫煙・飲酒習慣がなく、膵炎家族歴がなかった。

一方、患者はタンパク質豊富な食習慣であり、肉類の摂取量が多いことが確認された。そして、症状発現の1カ月前から、複数の薬剤を使用していることを認めた。例えば、フルオキシメステロン(筋肉増強作用のある男性ホルモン製剤)、メステロロン(アナボリックステロイド)、タモキシフェン(抗エストロゲン薬)などであり、また、複数のビタミンサプリメントを服用していた。患者はまた、安価な供給業者から入手した成長ホルモンを週に5回、推奨用量の2倍注射していた。

被疑薬やサプリ中止により再発はみられず

入院時の血行動態は安定しており、臓器不全や局所または全身性の合併症もみられなかった。静脈内水分補給と疼痛管理により臨床症状は改善し、3日後に退院した。腹部超音波検査が1週間後に施行され、胆石症は否定された。わずかな肝腫大が認められたが、膵臓は正常と判断された。

急性膵炎の原因となり得る因子を一つずつ除外していき、最終的に受診1カ月前に使用し始めた薬剤が原因と特定するに至った。患者に対しては、ステロイドや成長ホルモン、およびその他のサプリメントなども以後は使用しないようにアドバイスされた。それ以降、1年間の追跡期間中、患者は無症状で経過し、膵炎発症を示唆する所見もみられなかった。そのこともまた、薬剤性急性膵炎の診断の裏付けとなると考えられた。

AASの使用による死亡例も報告されている

論文では、上記の経過がより詳細に報告されている。そのうえで、既報論文の情報から、薬剤性急性膵炎の考察が加えられている。

例えば、薬物関連の急性膵炎はまれ(0.1~2%)であるが、多くの薬物が急性膵炎を引き起こすことが報告されているという。最も一般的な薬剤は鎮痛薬と抗炎症薬であり、約30%を占め、続いて抗菌薬と心血管系薬および免疫調節薬が続くとのことだ。2020年に報告された論文によると、薬剤性急性膵炎の被疑薬の2.36%が性腺ホルモン製剤であり、多剤併用を含めると7.36%に関与している可能性があるという。

また、論文中には今回の症例も含め、これまでのアスリートなどに発症した薬剤性急性膵炎の症例10例を表形式でまとめている。それによると、10件の症例はすべて男性で、年齢は最低が16歳、最高が50歳、被疑薬にはテストステロンや成長ホルモン、アナボリックステロイド、エリスロポエチンなどが含まれていた。

それらの患者転帰の大半は、水分補給などの支持療法で改善していたが、テストステロンなど5剤を使用していた1例は無尿となり集中治療を要していた。アナボリックアンドロゲンステロイド(AAS)を使用していた他の1例は死亡に至っていた。

著者らは、「アスリートやボディービルダーは、機序不明ながら急性膵炎のリスクのある薬剤等を、適切な医学的アドバイスを受けずに使用することがある」と述べ注意を喚起している。

文献情報

原題のタイトルは、「Drug-induced acute pancreatitis in a bodybuilder: a case report」。〔Case Reports J Med Case Rep. 2022 Mar 22;16(1):114〕
原文はこちら(Springer Nature)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2022後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
日本スポーツ協会「サプリメントの認識と利用に関するアンケート調査」にご協力ください
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ