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藻類(スピルリナ、クロレラ)による運動パフォーマンス向上の可能性を探る

スピルリナやクロレラという藻類のエルゴジェニックエイドとしての可能性を検討した論文が報告された。英国の研究者らの報告であり、これらの藻類が多くの可能性を秘めていることは確かだという。ただし、それらに関する研究は緒についたばかりであり、今後より多くの研究が必要とされる段階のようだ。一部を抜粋して要旨を紹介する。

藻類(スピルリナ、クロレラ)による運動パフォーマンス向上の可能性を探る

イントロダクション:藻類サプリの現状

人が摂取する食物としての藻類に関する記録は、中国における西暦300年前後の記録にさかのぼり、藻類の高い栄養価は古くから着目されていたと考えられ、さらに最近20年間に研究の勢いを増している。クロレラとスピルリナは現時点で最も研究されている藻類サプリメントであり、心血管リスク因子、貧血、免疫機能を改善する可能性が報告されている。スピルリナとクロレラはいずれも高レベルのタンパク質(乾燥重量の最大65%)を含み、多くの必須および非必須アミノ酸を有していることから、ベジタリアンやビーガンにとっては魅力的なサプリメントと言える。

両者は同様の栄養価を持っているが、製造プロセスには大きな違いがある。スピルリナはセルロースの細胞壁がないため、収穫して乾燥させると直ちに人間が摂取できる。生産プロセスが短縮され、安価に大量栽培が可能。また、セルロースの細胞壁がないことは、スピルリナの消化と生物学的利用能が高いことを意味する。

対照的に、クロレラにはセルロースの細胞壁が含まれており、人間が摂取できるようにするためにはそれを機械的に分解する必要がある。この違いは、スポーツおよび運動栄養研究におけるスピルリナとクロレラの現在までの研究結果の不一致を、一部説明している可能性がある。

今日まで、藻類の栄養素の複雑さのため、どのようなメカニズムで運動パフォーマンスに影響を与え得るのか、その可能性に関するコンセンサスは得られていない。

抗酸化アプローチ

イントロダクションに続き論文ではまず、藻類サプリの抗酸化能に着目し、文献的考察を加えている。

スピルリナがランニング中の倦怠感やサイクリング中のV̇O2maxを改善することなどが報告されているが、これらは酸化ストレスマーカーであるマロンジアルデヒド(MDA)や還元型グルタチオン(GSH)の改善に示されるように、スピルリナが運動中・後に抗酸化作用を発揮した結果と考えられている。しかし、スピルリナが酸化ストレスバイオマーカーと運動パフォーマンスに影響を及ぼさないという矛盾する研究結果も報告されている。

クロレラについても、酸化ストレスバイオマーカーに影響を与え得ることが報告されている。ただし、クロレラの場合、スピルリナとは対照的に、他の成分がエルゴジェニック効果を引き起こしていることも示唆されている。

これらの藻類がin vitroで抗酸化能を発揮することは明らかだが、それがin vivoでも働き、運動パフォーマンスを有利に導くとは限らない。ヒトの運動パフォーマンスに対する藻類サプリメントの抗酸化効果には、基礎研究からの理解と実証との大きなギャップが残されている。

抗酸化能以外のエルゴジェニックメカニズム

抗酸化能以外の視点で藻類サプリの有用性を解明しようとする研究も進められている。

スピルリナがピークおよび平均筋力を改善するとする報告からは、スピルリナの有する高いタンパク質含有比率とその生物学的利用能が重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。また、スピルリナとクロレラの双方が血管拡張作用を惹起する可能性があるとする研究も増加している。スピルリナは循環硝酸塩/亜硝酸塩を増やす可能性があり、血管拡張作用を有する内皮由来一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を増やすと報告されている。ただし、現在までに、ヒトではスピルリナ摂取後の硝酸塩/亜硝酸塩の増加は確認されていない。

一方、クロレラの摂取により男性のNO産生の増加を誘発する可能性が報告されている。この点については、クロレラ摂取と心血管危険因子に関するメタ解析からも、クロレラには降圧特性があることが確認されている。また、6g/日、28日間の摂取後に動脈硬化マーカーの低下が観察され、若年男性のVO2peakを有意に上昇させたとする報告もある。これらの血管拡張作用の可能性と、それが運動パフォーマンスにどのように影響するかを確認するにはさらなる研究が必要だが、データは有望であることを示している。

現在のリミテーション(限界)と今後の方向性

スポーツ栄養の領域での藻類サプリメントの研究が初期段階であることを考慮すれば、その摂取の最適な用量が決定されていないのは当然である。これまでの研究では、スピルリナに関しては1.5~7.5g/日を7~60日の範囲で摂取するというプロトコルが多く、摂取量や期間が広範囲に広がっている。それに対してクロレラの場合は多少均一性があるようであり、6g/日を3~4週間とする複数の研究が行われてきている。また、単回摂取であっても複数のバイオマーカーを上昇させる急性効果がみられることを示唆する研究がある。

クロレラやスピルリナにいくつかの有望な作用があることは明らかだが、パフォーマンス上のメリットにつながるメカニズムはまだ不明点が多い。藻類は多様で複雑な種であり、再生可能エネルギー、生物医薬品など、多方面への活用法の探索が続けられている。CO2レベルの上昇を緩和するためにも使用され、持続可能な社会の形成にも資する。

スポーツと栄養の領域に限って言えば、藻類の有効性についてさらに明確にしていく必要がある。また、藻類サプリのエビデンスは男性対象研究から得られたものが主体だが、スピルリナに関しては、鉄の高い生物学的利用能を有することから、貧血の有病率の高い女性アスリートでの積極的な検討も必要だろう。

文献情報

原題のタイトルは、「Algae Supplementation for Exercise Performance: Current Perspectives and Future Directions for Spirulina and Chlorella」。〔Front Nutr. 2022 Mar 7;9:865741〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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