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n-3PUFA強化鶏卵は、通常鶏卵よりもアスリートの血管内皮機能を改善する可能性

アスリートを対象に、n-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)の含有量が多いn-3PUFA強化鶏卵を摂取することのメリットを検討した研究結果が報告された。通常の鶏卵を摂取するよりも、血管内皮機能が改善され、酸化ストレスが軽減される可能性があるという。

n-3PUFA強化鶏卵は、通常鶏卵よりもアスリートの血管内皮機能を改善する可能性

n-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)とは

不飽和脂肪酸(e-ヘルスネット)

アスリートを対象に、安静時と運動後の内皮機能などを評価

n-3PUFAは中性脂肪低下や炎症抑制、血管内皮機能改善作用、血小板凝集能抑制作用などを有し、心血管疾患の抑止において重要とされている。それに加え近年は、運動負荷後の回復や運動誘発性炎症の抑制といった点で、エルゴジェニックサプリメントという側面も強調されるようになってきている。スポーツアスリートを対象にn-3PUFAの有用性を検討した研究も増加しており、今回紹介するクロアチアからの報告もこのような背景のもと実施された研究。

調査対象は、クロアチア国内のスポーツクラブを通じて募集された、ボート、サッカー、および陸上競技のアスリート23人(女性3人、男性20人)。適格条件は、少なくとも過去5年以上トレーニングを継続している18~30歳でBMIが基準値内のアスリート。除外基準は、喫煙歴、高血圧・冠動脈疾患・糖尿病・脂質異常症・腎機能障害・脳血管および末梢動脈疾患の既往、内皮機能に影響を及ぼし得る薬剤(例えば経口避妊薬など)の服用。また、n-3PUFAサプリメントを使用している場合も除外した。

n-3PUFA強化鶏卵の生産方法と脂質プロファイル

n-3PUFA強化鶏卵は、クロアチアのオシエク大学農学部の研究グループにより、飼料中に魚介や亜麻仁油を加えることにより生産された。

n-3PUFA強化鶏卵(平均重量60g)には、平均351mgのn-3PUFA(α-リノレン酸〈ALA〉230.5mg、EPA15.1mg、DHA105.5mg)が含まれ、n-6/n-3比は2.02だった。一方、通常鶏卵(平均重量60g)には、平均83mgのn-3PUFA(ALA36mg、EPA0m、DHA47mg)が含まれており、n-6/n-3比は10.26だった。

研究手法と評価項目

研究デザインは、無作為化プラセボ対照介入研究。被験者は2群に分けられ、3週間(21日)にわたり、1日あたり3個のゆで卵(合計63個)を食べるように指示された。1群(女性3人、男性11人)はn-3PUFA強化鶏卵(1日あたり約1,053mgのn-3PUFA)、他の1群は(男性9人)は通常鶏卵(1日あたり約249mgのn-3PUFA)を摂取。卵のサイズはいずれも商業サイズ分類の「中」であり、研究者も被験者も割り付けは知らされていなかった。研究期間中は支給された卵以外の卵の摂取は禁止し、またn-3PUFAが豊富な他の食品やサプリメントを摂取しないよう指示された。

評価項目は、安静時の皮膚微小血管拡張反応と、急性運動後の血管反応、および、酸化ストレス・抗酸化活性等のマーカー。急性運動にはローイングエルゴメーターを用い、元プロのボート競技アスリートが指導したのち実施した。

3週間の介入でn-6/n-3比や内皮機能などに有意な群間差

ベースライン時の年齢、BMI、血圧、心拍数、採血検査データはすべて、群間に有意差がなかった。しかし3週間の介入後、以下に示すように、血清脂質プロファイルや酸化ストレス関連マーカーに有意差が生じ、安静時・急性運動後の血管内皮機能などにも有意差が生じていた。

n-6/n-3比

通常鶏卵群では介入前が8.30で介入後は11.20と約35%増加したのに対して、n-3PUFA強化鶏卵群では同順に10.70、7.90と約27%減少した。

前腕の皮膚微小血管拡張機能

安静時に前腕の皮膚微小血管で評価した、血管内皮依存性の血管拡張反応は、血管閉塞後の拡張反応、および、アセチルコリン誘発性の血管攣縮に対する抑制効果についてのいずれについても、通常鶏卵群では介入による有意な変化がみられなかった。それに対してn-3PUFA強化鶏卵群では介入によって血管閉塞後の内皮依存性血管拡張反応が17%有意に増加し、アセチルコリン誘発性の血管攣縮に対しても14.4%の有意な抑制作用が認められた。血管内皮非依存性の血管拡張作用に関しては、両群ともに有意な変化を認めなかった。

急性運動後の血管反応

急性運動負荷後の前腕皮膚微小血管の拡張反応は、アセチルコリン誘発性の血管攣縮に対してn-3PUFA強化鶏卵群では介入による有意な抑制効果が確認された。血管閉塞後の拡張反応や血管内皮非依存性の血管拡張作用に関しては、両群ともに有意な変化を認めなかった。

酸化ストレス・抗酸化能マーカー

酸化ストレス関連マーカーは両群ともに介入前後で有意差はなく、また群間に有意差はみられなかった。一方、活性酸素を分解するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)や、抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼは、通常鶏卵群では介入前後で有意な変化がないのに対し、n-3PUFA強化鶏卵群では有意に低下していた。著者によると、これはn-3PUFA摂取によって、運動による酸化ストレスに対する抗酸化メカニズムの適応が生じたためと考えられるとのことだ。ただし本研究では、急性運動負荷後の抗酸化能は評価していない点が、結果解釈の限界点として挙げられる。

論文の結論としては、「n-3PUFA強化鶏卵摂取は、安静時の微小血管内皮機能を改善し、アスリートの運動耐容能に寄与する可能性がある」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Does the Endothelium of Competitive Athletes Benefit from Consumption of n-3 Polyunsaturated Fatty Acid-Enriched Hen Eggs?」。〔Prev Nutr Food Sci. 2021 Dec 31;26(4):388-399〕
原文はこちら( Preventive Nutrition and Food Science)

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