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日本、韓国、中国の高齢者の認知機能と身体機能を比較するための評価基準が必要

日本、韓国、中国という3カ国は地理的に近く、社会文化的にも共通点が多い。国際的な疫学研究でも、「アジア人」として一括りにされることが少なくない。しかし、高齢者の認知機能や身体機能を比較するには、統一された評価基準が必要ではないかと提言する、韓国の研究者による論文が発表された。

日本、韓国、中国の高齢者の認知機能と身体機能を比較するための評価基準が必要

高齢化スピードが極端に速い東アジアの3カ国

人口に占める高齢者の割合(高齢化率)の国際比較でトップにあるのは言わずと知れた日本。日本の高齢化率は2050年ごろまで上昇し続け、その後も世界1位の状態で当分推移することが予想されている。

また日本は高齢化率が短期間で上昇していることも、他の先進国とは異なる特徴としてよく指摘される。具体的には、高齢者人口の割合が7%を超えて高齢化社会になったのが1970年で、その割合が14%を超えて高齢社会となったのが1994年であり、24年間で高齢者の割合が倍増した。

ただし、日本を上回るスピードで高齢化が進行している国がある。それが韓国であり、高齢化社会に突入したのが20世紀の終わりの2000年で、その18年後の2018年には高齢社会となった。中国はそれより少し遅く、21世紀の初めの2001年に高齢化社会となり、日本が要した期間と同じ24年後の2025年に高齢社会になると予想されている。これら3カ国以外には、シンガポールも20年で高齢化社会から高齢社会に進展している。

いずれにしても、日本、韓国、中国という東アジアに位置する人口規模の大きい3カ国は、国際的にみて急速な高齢化が進展しているという共通の特徴を抱えている。ちなみに、他の先進国に目を向けると、高齢化社会から高齢社会に至るまで、米国は72年、英国は46年を要し、さらにスウェーデンは85年、フランスに至っては115年という長い期間をかけて緩徐に高齢化が進展した。

急速に高齢化が進展することは、健康寿命の延伸が伴わない場合、その国の医療や財政に多大な負担をかけてしまう。そのため公衆衛生対策が極めて重要となる。もし、日本、韓国、中国という共通の問題を抱えている3カ国が、公衆衛生対策に生かすことの可能な疫学データを共有できれば、そのメリットは少なくない。

このような背景のもと、本論文の著者らは、これら3カ国間で、高齢者の認知機能や身体機能に関する疫学研究の結果を直接的に比較検討することができるかという検証を、システマティックレビューにより試みた。

3カ国それぞれの高齢者対象疫学研究を比較

中国発の大規模疫学調査のデータとして「中国の健康と退職に関する縦断的研究(China Health and Retirement Longitudinal Study;CHARLS)」、日本発の大規模疫学調査データとしては、「くらしと健康の調査(Japanese Study on Aging and Retirement;JSTAR)」、韓国発では「韓国の老化の縦断的研究(Korean Longitudinal Study of Aging;KLoSA)」という大規模な疫学研究に着目。これらに基づく研究を対象とするシステマティックレビューを行った。

なお、中国のCHARLSは、45歳以上の中国居住者を対象とする調査で、2008年に約1,500世帯でパイロット調査が実施された。後述する韓国のKLoSAをモデルとしている。日本のJSTARは、50~75歳の4,200人以上の地域住民を対象に行われ、米国の「健康と退職に関する研究(Health and Retirement Study;HRS)」や欧州での「健康、老化、および退職の研究(Study of Health, Aging, and Retirement in Europe;SHARE)」を参照し設計されている。韓国のKLoSAは、45歳以上の地域住民1万人以上を対象とした全国的な代表的パネル調査。韓国における退職期の移行に伴う健康状態への影響を把握するために、より低い年齢層も対象に含む。

システマティックレビューとメタ解析に関する優先報告項目(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses;PRISMA)に準拠し、Google ScholarとPubMedを用いて2020年10月20日に文献検索を実施。「CHARLS」、「JSTAR」、「KLoSA」、「cognition(認知)」、「physical health(身体的健康)」というキーワードを使用し、2020年11月5日に再度検索を行い、情報を更新した。適格条件は、CHARLS、JSTAR、KLoSAを用いた研究であり、2005~2020年に報告された、英語または韓国語で執筆されている論文とした。

評価項目が一致しておらず、直接的な比較が困難

Google Scholarから2,662報、PubMedから28報、計2,690報がヒットし、重複の削除、論文タイトルと抄録に基づくスクリーニング後、全文を精査し、最終的に7件の研究が抽出された。

7件の研究のうち4件は身体機能をテーマとして比較し、2件は認知機能を比較、1件は身体機能と認知機能の双方を比較していた。身体機能を比較した4件のうち3件は、日本、韓国、中国の3カ国間の比較が可能であり、1件は韓国、中国の2国間の比較が可能であることを示していた。認知機能を比較した2件の研究はいずれも3カ国間の比較、身体機能と認知機能の双方を比較した研究は3カ国間の比較可能性を示していた。

認知機能の評価には、言葉の記憶や連続減算(100から7を引いていく暗算)などが用いられていた。言葉の記憶力の評価に、日本のJSTARと中国のCHARLSは10の言葉を用いていたが、韓国KLoSAは3つだった。また、CHARLSとKLoSAには、JSTARには含まれていない視覚的な評価項目が含まれていた。さらに、KLoSAにはJSTARやCHARLSには含まれていない言語・実行機能に関する評価項目が含まれていた。

身体機能の評価には、慢性疾患の有無、生活習慣(飲酒や喫煙、身体活動など)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)など、3つの調査ごとに多くの項目が質問されていた。しかし、3つの調査で類似しており直接的な比較が可能と判断されたのは、8種類の慢性疾患に関する項目に限られた。

この結果から著者らは、「3カ国間の一般市民の認知機能や身体的健康の比較は可能ではある。しかし、この3カ国で行われている大規模な疫学調査の質問には重要な違いがあると結論付けられる」とまとめている。また、「調査の実施年や言語、文化の違いの影響から、比較結果にかなりの誤差が生じる可能性があり、結果を一般化することは困難」と述べ、「3カ国間の比較を容易にする調査票を作成する必要がある」と提言している。

文献情報

原題のタイトルは、「Cross-National Comparisons of Cognitive and Physical Health in Older Adults Across China, Japan, and Korea: A Systematic Review」。〔Inquiry. Jan-Dec 2021;58:469580211062451〕
原文はこちら(SAGE Publications)

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