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1日42.195km、10日連続でマラソン完走のギネス記録を更新した女性アスリートの食事

毎日1回、連続10日、マラソンを完走する記録がギネスブックに掲載されている。その記録を更新した女性ランナーの体重、体組成、採血検査結果、心拍数、睡眠、栄養などのパラメータを10日間にわたり記録したデータが昨年、論文化された。著者らは、この世界記録樹立には、それらの指標の変動を最小化することが成功のポイントだと述べている。

女性アスリートも運動負荷時には、男性と同様のテストステロン反応が生じる

マラトン~アテネ間42.195kmを走った伝令は、その前すでに480km走っていた

マラソンの42.195kmという距離は、よく知られているように、紀元前530年のマラトンの戦いの勝利のメッセージを伝えるために、ギリシャ軍(アテナイ・プラタイア連合軍)の伝令であるフィリッピデスが、勝利を伝えるためマラトンの丘からアテネまで走り続け、役目を終えた直後に息を引き取ったという逸話に基づいている。当時、ギリシャ軍にはフィリッピデスのような伝令が多数いて、彼らはエネルギー量と塩分が多くとり、イチジクなどの果物、オリーブ、乾燥肉、ゴマと蜂蜜のペーストなどを食べ、スタミナを維持していたと言われる。

当然、フィリッピデスも勝利のメッセージを伝えるだけに存在していたわけではなく、日ごろから軍の情報を伝達するために長距離を走っていた。マラトンでの勝利を伝える前に、既に2日間で480kmを走行していたという。

現在、メッセージを伝えるために、フィリッピデスのように命をかけて人々が走り続ける必要はない。しかし、スポーツとしてのウルトラマラソンは人気の高まりをみせている。

ウルトラマラソンはさまざまなスタイルで行われる。荒野を数日かけて走行するものもあれば、屋内でトレッドミル走行による記録を目指すケースもある。本論文は、トレッドミルを用いて、10日間、毎日1回マラソンと等しい距離を走行し、その合計タイムのギネス記録を樹立した女性に関する報告だ。

10日の走行記録と心拍数は毎回ほぼかわらず

この英国人女性は、30年以上の超耐久競技の経験があり、イベント時点の年齢が54歳。身長162.5cm、体重49.3kg、VO2max53mL/kg/分、最大心拍数174bpmであり、乳酸閾値は最大心拍数の75%。主として100kmレースと24時間レースで活動しており、400回以上のマラソンと160回以上の超耐久イベントを含む1,700回以上の大会に参加。競技会での走行距離は5万km以上。

ギネスの世界記録の達成のため、ギネス世界記録株式会社の規定に従い、裏付けとなる証拠の記録がなされた。英国のティーズサイド大学の研究室内で、毎日午前11時にランニングを開始し42.195kmを完走するまでランニングを継続。温度は20℃に保たれていた。

トライアルに先立ち、このアスリートは走行時間の合計が45時間以内となることを目指した。これは、彼女自身が既に46時間15分台の世界記録を樹立していたため。

結果として今回のトライアルでの走行時間は、合計43時間51分39秒であり、前回の記録を2時間24分短縮し、ギネス記録を更新した。走行速度は一貫して9.2~9.7km/時の範囲だった。

最も短時間で走行したのは1日目と10日目であり、その記録はともに4時間21分21秒だった。最も時間を要したのは3日目であり、記録は4時間24分38秒だった。10回の走行の記録の差が約3分であり、この記録からも一貫した速度で走行したことが示された。

心拍数は平均143±4bpmで、範囲は139±10~148±10だった。10回中2回はわずかに高かったが、それ以外はほぼ一定していた。スタートから1時間の心拍数は平均137±6bpm、次の1時間も137±5bpmで変化がなく、3時間目に入ると145±6bpmと増加し、4時間目は151±5bpmとさらに増加していた。なお、安静時心拍数は平均54±1.6bpmで、初日の51bpmから日を追うごとに53~57bpmへとやや上昇していた。

睡眠時間は平均500.6±55.7分(8時間20分)で、最短は4日目に記録された6時間50分、最長は7日目の9時間47分だった。

エネルギー出納

基礎代謝量(basal metabolic rate;BMR)は1,274kcalであり、消費エネルギー量は1回の走行につき平均2,030±82kcal、10回では2万306kcalだった。呼吸交換比(respiratory exchange ratio;RER)は0.8±0であり、消費エネルギーの33.4%は炭水化物の酸化、66.6%は脂肪の脂質に由来すると計算され、各マラソン中に157±6gの炭水化物と147±6gの脂質を利用し、10回ではそれぞれ1,570g、1,468gを代謝した。

1日の平均摂取エネルギー量は2,036±418kcalだった。これはマラソンでの消費エネルギー量とほぼ正確に一致していたが、基礎代謝量1,274kcalを含む1日の総消費エネルギー量とは一致せず、トータルで1万2,700kcalのマイナスとなった。

自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)は10日間継続して安定しており、最初の1時間は5.0±0.0任意単位(arbitrary unit;au)、2時間目は5.0±0.16au、3時間目は5.17±0.35au、4時間目は5.56±0.46auだった。

食事・水分摂取状況

摂取エネルギー量は、最初の2日間は吐き気のために低下したが、その2日間は薬剤(シンナリジン。酔い止め)、他の8日間はツボ刺激用リストバンドで対処した。

1日目と2日目には走行中に、少量のタンパク質を添加した炭水化物溶液を摂取した(1日目180kcal、2日目126kcal)。続く8日間は、通常水と11~25gのブドウ糖(平均46.4±25kcal)を摂取。10日間の走行中の摂取量は平均67.7±51.5kcal/日であり、総摂取量は676.5kcalだった。

栄養素別の摂取量は、炭水化物が279.9g/日(5.7g/kg)、タンパク質112.9g/日(2.3g/kg)、脂質51.8g/日(1.1g/kg)であり、摂取エネルギー比では、炭水化物が55%、タンパク質が22.2%、脂質が22.9%だった。

水分摂取量は、4,134±313mL/日であり、マラソン走行中が2,309±280mL、それ以外の時間帯が1,825±206mLだった。

以上の結果を基に著者らは、「パフォーマンスと走行スピードは、生理学的低下を認めることなく、10回のマラソンすべてで非常に一貫していた。摂取エネルギー量は消費エネルギー量に比べて少なく、10日間で2.6kgの体重減少と体脂肪および骨格筋量の減少をもたらした。ただし、これはパフォーマンスに影響を与えなかった」と結論をまとめている。

なお、この女性ランナーはレース中の栄養摂取により吐き気を催しやすいことから、積極的にレース中は摂取しようとしなかった。この点について著者は、「この戦略は彼女の場合は明らかに機能するが、通常はレース後半でのパフォーマンス低下につながるため推奨はしない」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Consistency Is Key When Setting a New World Record for Running 10 Marathons in 10 Days」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 Nov 17;18(22):12066〕
原文はこちら(MDPI)

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