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「ルーティーン」はスポーツパフォーマンスを確実に向上させることが判明

競技前や試合中の重要な場面で決まった動作を行う「ルーティーン」が、実際にスポーツパフォーマンスを高めることが、過去の研究を対象に行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果から明らかになった。ルーティーンの効果は、アスリートの年齢や性別、競技レベル、あるいはルーティーンの方法にかかわらず認められるとのことだ。

ルーティーンで確実にパフォーマンスが向上する根拠 その効果に競技レベルや年齢、性別などは関係なし

想定されているルーティーンのメカニズム

優れたアスリートの多くが個人のルーティーンを持っている。例えば、タイガー・ウッズのアドレスの入り方や、マイケル・ジョーダンのフリースロー前の動作はよく知られている。日本人アスリートでも、イチローが打席の中でユニフォームの肩口に触れる仕草や、元ラグビー日本代表の五郎丸歩がプレースキック前にとるポーズなどが注目された。そこまで独特な動作や仕草でなくても、テニスのサーブ前にボールをバウンドさせたり、バスケットボールのフリースロー前にドリブルをしたりといった動作を多くのアスリートが行っている。

このようなルーティーンは、集中力や自己効力感を高めたり、不安を抑えたりするように働き、それがパフォーマンス向上につながるのではないか、とのメカニズムが提案されている。アスリートに対して何らかのルーティーンをもつようにアドバイスするスポーツ心理学者も少なくない。

しかし、ルーティーンが実際にパフォーマンスを向上させるのかや、仮に向上させるのであればその効果はどの程度なのかという研究の結果は、必ずしも一貫性があるとは言えない。例えば、単純な一つの仕草で完結するルーティーンよりも、複数の動作で構成された一連の動作のほうが、パフォーマンスに強い影響を与えるという報告がある一方、そのような差はないとする報告もある。

このように、ルーティーンの効果に関しては不確かな点が残されている。それらの点を明らかにするために、本論文の著者らは、既報文献を対象にシステマティックレビューとメタ解析を行った。

システマティックレビューの手順について

文献検索には、ScienceDirect、SPORT Discus、Web of Science、Google Scholarを用いた。ルーティーンの効果が効果量として数値で記されているか、それを計算可能なデータが示されていること、研究対象者数が3人以上であること、英語またはドイツ語で執筆されていること、全文利用可能であることなどを適格条件とした。一方、アスリートの主観的な判断のみを示している場合などは除外した。なお、効果量の計算に必要なデータが論文中に示されていない場合は著者に連絡をとり、データ提供を依頼。2週間以内に返信がない場合はリマインドを行った。

各文献データベースの開始から2020年11月30日までに公開された論文を対象とし、「プリパフォーマンスルーティーン」「プレショットルーティーン」「パフォーマンスルーティーン」などの用語で検索、1,626報の論文がヒットした。ハンドサーチによる7報を追加後、重複の削除、タイトルと抄録に基づくスクリーニングで50報に絞り込み、全文精査し適格性を判断した。

最終的に61件の研究から成る33報の論文をメタ解析の対象として抽出した。なお、これらの工程は、システマティックレビューとメタ解析に関する優先報告項目(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses;PRISMA)に準拠して行われた。

抽出された研究の特徴

全体の26%にあたる16件の研究は対象者数が10人未満であり、全体の半数(52%)にあたる32件は対象者数が10~19人、残りの13件(21%)は20人を超えるサンプル数だった。アスリートの年齢は11~40歳だった。

競技種目は、ゴルフが15件、バスケットボール13件、テニスとボウリングが各6件、サッカーとオーストラリアンフットボールが各4件、その他、バレーボール、ビーチバレー、体操、空手、射撃、バドミントン、ウェイトリフティング、テコンドー、水球という計15競技のアスリートで評価されていた。

競技レベルは、全体の70%が経験豊富なアスリートを対象に検討しており(エリートレベルが9件、サブエリートが34件)、13件(21%)はビギナーレベルだった。

ルーティーンの種類を、単純な一つの仕草で完結するものと、複数の動作で構成される動作に大別すると、前者が27件(44%)、後者が33件(54%)だった。具体的な方法として、左手を握りしめる、対象の固視(quiet eye)、独り言、5秒数えるなどが評価されていた。

どのような条件での検討でも、ルーティーンの有効性が認められる

メタ解析は、それぞれの研究での介入方法ごとに分けて行った。また、報告された時期、研究の質、対象者の性別・年齢・トレーニング時間、ルーティーンの種類、競技レベルの違い、強いストレス下か否かなどによる結果への影響を検討した。

ストレスがかかる条件での検討では、ルーティーンの効果がより高い

ルーティーンを行う前と、行う介入の後で、パフォーマンスを比較するという条件で検討していた51件の研究から、効果量を表すg値が0.31(95%CI;0.18~0.44)という有意な効果が認められた。また、ルーティーンを行わない対照群とパフォーマンスを比較するという条件で検討していた42件の研究からは、効果量g値が0.64(95%CI;0.45~0.83)であり、やはり有意な効果が認められた。

さらに、強いストレスのかかる条件を設定して行った19件の研究からは、効果量g0.70(95%CI;0.24~1.16)と、より強い影響力が確認された。ただし、95%信頼区間が広く、不確実性が大きかった。これは解析対象研究数が、前二者の解析に比較して少ないため。

個人競技かチームスポーツかも問わず、ルーティンは有効な可能性

サブグループ解析の結果、研究が報告された時期(p=0.33)、研究の質(p=0.63)、および、アスリートの性別(p=0.83)や年齢(p=0.80)、トレーニング時間(p=0.76)は、いずれも前記の結果に有意な影響を及ぼさないことが明らかになった。また、競技レベル(p=0.51)からも結果は影響を受けていなかった。ルーティーンが、単純な一つの仕草で完結するものか、複数の動作で構成される動作かによる違いも、有意でなかった(p=0.91)。

著者らは、この研究から得られた結果を以下の4点にまとめている。

第一に、ルーティーンが実際にスポーツパフォーマンスにとって有利に働くことが確認された。第二に、ルーティーンの効果は、すべてのスキルレベルにわたり、かつ11~40歳の女性と男性の双方のアスリートで認められることが示された。第三に、個人競技とチームスポーツの双方で、ルーティーンの効果が確認された。そして、第4として、ルーティーンの方法・種類によらず、効果は一貫していた。

論文では、以上の結果と既報文献の考察のまとめとして、「パフォーマンスの観点から、初心者にはルーティーン介入を個別化する必要はなく、標準化されたルーティーンも役立つようだ。一方で経験豊富なアスリートや競争力の高いレベルでは、個別化したルーティーンをお勧めする」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effectiveness of pre-performance routines in sports: a meta-analysis」。〔Int Rev Sport Exerc Psychol. Oct 2021;14〕
原文はこちら(Informa UK Limited)

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