小児の朝食欠食習慣で肥満リスクが倍増する可能性 ブラジルの9~11歳児の横断研究
小児の朝食欠食習慣と身体活動習慣、および肥満度との関連を調査した結果が、ブラジルから報告された。朝食欠食習慣と中強度身体活動量との関連はないものの、肥満リスクの有意な低下が観察されたという。そのオッズ比は0.51であり、朝食を欠食しない子どもは肥満リスクが半減する、逆に言えば朝食を欠食する子どもは肥満リスクが倍増する可能性を示唆している。
半数強の子どもが週に1日は朝食を欠食
小児期に身についた生活習慣は成人期に受け継がれ、生涯の健康リスクに影響を及ぼす。また、朝食欠食習慣のある子どもはメタボリックシンドロームや肥満の発症リスクが高いとする報告や、学校の成績の低さと関連しているとする報告がある。
ただ、朝食欠食習慣と身体活動習慣とに関連が存在するかという点の研究はまだ少ない。欧州10カ国で行われた加速度計を用いた研究では両者に関連はないと報告されているが、ブラジルのような低中所得国では本研究か実施されるまで、この手の研究が行われていなかった。
サンパウロの500人の子どもを対象に調査
この研究は、ブラジルのサンパウロ州にあるサンカエタノドスル市で実施された。同市は人口約15万人で、公立校が4校、私立校が1校存在。それらの学校に在籍する9~11歳の生徒500人を調査対象とした。調査対象生徒は公立校から80%、私立校から20%として、市全体の比率と一致させた。
朝食を欠食しないことは身体活動習慣とは関連がないが、肥満の少なさと関連
最終的な解析対象者数は432人で、平均年齢10.50歳、女児50.9%、白人が73.4%だった。朝食の摂取頻度は、平均5.25日/週で、毎日食べる子どもが48.1%、週に1~6日食べる(1日以上欠食する)子どもが51.9%だった。つまり半数以上の子どもが週に1日以上、朝食を食べていなかった。
BMIの平均は19.70で、世界保健機関(world health organization;WHO)が提示している性・年齢別の標準偏差に基づく肥満判定基準に則して区分すると、49.8%が標準体重以下で、24.3%が過体重であり、肥満は25.9%だった。つまり半数以上の子どもが過体重または肥満だった。
身体活動量は、加速度センサー付き活動量計で把握した。その他、保護者へのアンケートにより、世帯収入、教育歴などを把握した。
朝食の欠食の有無と身体活動量には関連なし
朝食欠食習慣の有無、体重カテゴリー、性別、年齢、人種/民族、保護者の教育歴などを独立変数、中強度身体活動(1日あたりの中等強度運動が60分/日以上。moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行っていることを従属変数とするロジスティック回帰分析の結果、朝食を欠食しないことはMVPAを満たす有意な関連因子でなかった。
具体的には、週に1日以上の欠食習慣がある子どもを基準として、欠食のない子どもがMVPA60分/日以上であるオッズ比は0.77(95%CI;0.48~1.23,p=0.271)だった。
MVPAを満たすことに有意に関連する因子としては、性別では女児より男児がOR7.82(4.80~12.75,p<0.001)、人種/民族では白人より黒人がOR3.79(1.56~9.23,p=0.003)でオッズ比が高く、一方、年齢が高いほどオッズ比は低下した(OR0.54〈0.33~0.88〉,p=0.013)。
朝食の欠食の有無は過体重・肥満と関連
次に、朝食欠食習慣の有無、MVPAを満たすか否か、性別、年齢、人種/民族、保護者の教育歴などを独立変数、過体重・肥満に該当することを従属変数とするロジスティック回帰分析の結果、朝食を欠食しないことは過体重・肥満に該当するオッズ比の有意な低さと関連していた。
具体的には、週に1日以上の欠食習慣がある子どもを基準として、欠食のない子どもが過体重・肥満であるオッズ比は0.51(95%CI;0.34~0.76,p=0.001)であり、ほぼ2分の1だった。
朝食を欠食しないことのほかには、MVPAを満たしている場合にオッズ比が有意に低かった(OR0.58〈0.37~0.92〉,p=0.019)。また、23品目の食品の摂取頻度から把握した健康的な食習慣のスコアが高いことも、過体重・肥満のオッズ比の低さと関連していた(OR0.74〈0.59~0.94〉,p=0.012)。
その他、性別や人種/民族、保護者の教育歴については、有意な関連がなかった。
縦断研究が必要だが、子どもの朝食欠食を減らす政策が求められる
これらの結果から著者らは「朝食を毎日欠かさない9~11歳の子どもは、週に0~6日朝食を食べる子どもに比較して、過体重や肥満が少ないが、MVPAを満たす割合とは関連がない。これらの関係をより明確にするためには、将来の縦断研究が必要とされる」と述べている。また、「小児期に身に付いた生活習慣が成人期にも引き継がれる可能性を考慮すると、毎日朝食を摂取するなどの行動は、成人後の過体重や肥満を防ぐことにつながる。公共政策担当者は、身体活動の増加や座位行動時間の短縮などの健康的な習慣の奨励に加えて、過体重や肥満を防ぐために毎日朝食を摂取することを奨励すべきだ」としている。
なお、朝食を欠かさないことによる過体重や肥満のリスク低下の関連のメカニズムについては、「不明」としたうえで、いくつかの仮説を挙げている。一つは、朝食として摂取される食品は脂肪分解を増加させ熱産生を高めエネルギー代謝を調節するのに役立つカルシウム(牛乳やチーズ)が豊富であり、また食後の血糖上昇やインスリン分泌を抑制する食物繊維が豊富であるとしている。反対に朝食をスキップすると、食欲が亢進して食事の質が低下し、体重増加を招く可能性があるという。
文献情報
原題のタイトルは、「Association between the consumption of breakfast and the recommendation of physical activity and the nutritional status in children」。〔Cien Saude Colet. 2021 Aug 30;26(suppl 2):3907-3916〕
原文はこちら(Associação Brasileira de Saúde Coletiva)