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アスリートのコーチは同性と異性、どちらが良い? 重量挙げ選手で検討した結果は…

パフォーマンスを最大化するには、アスリートとコーチの性別が一致していたほうがよいのだろうか、それとも異性のほうがよいのだろうか。あるいは、アスリートの性別に関係なく、コーチは男性または女性のどちらかのほうがよいのだろうか。それともアスリートとコーチの性別の組み合わせは、パフォーマンスに関係ないのだろうか?

アスリートのコーチは同性と異性、どちらが良い? 重量挙げ選手で検討した結果は…

この疑問を、伝統的に“男性的スポーツ”とみなされることの多い、重量挙げの選手で検討した研究結果が報告された。早速、論文の内容をみてみよう。

3千人強の選手・コーチの組み合わせの記録を解析

この研究のためのデータは、米国の重量挙げのWebサイト(https://www.teamusa.org/USA-Weightlifting)に掲載されている情報のうち、2011年シーズンの記録ランキングが用いられた。この年のデータには、何らかの公的記録のある選手4,678人の名前、性別、年齢などとともに、コーチの名前も公開されている。なお、選手の情報とコーチの名前が把握可能なのは、この2011年のデータのみという。

選手4,678人中、解析に必要なデータの不備がなく、かつコーチの名前がわかる3,285件のデータを用いた。コーチは性別が記されていないため、名前から以下の方法で性別を判断した。

伝統的に男性に用いられる名前、女性に用いられる名前、男性と女性の双方に用いられる名前という3種類に分類し、3つめのグループに該当する名前はインターネット検索を実施。本人の写真であることが特定された場合、2名の研究者が写真を見て性別を判定し、意見が一致した場合はその性別に分類した。性別を特定できなかったケースを除き、最終的なサンプル数は3,252となった。

男性選手は男性コーチの指導がよい可能性。女性選手は…

では、結果をみてみよう。

まず記録については、女性選手は19~256kgの範囲に分布し平均は108.1±37.4kg、男性選手は17~389kgの範囲に分布し平均は180.9±64.3kgだった。

年齢は女性選手が7~76歳の範囲に分布し平均は25.9±12.1歳、男性選手は5~83歳に分布し平均は25.4±13.1歳だった。

コーチの性別については、女性選手のうち12.3%が女性コーチの指導を受け、男性選手のうち6.7%が女性コーチの指導を受けていた。コーチに占める女性の割合は8.6%だった。

コーチの性別にみた選手の記録

選手の年齢や体重階級の影響を統計学的に調整後、以下のような結果が得られた。

女性コーチの指導を受けている女性選手の記録は、男性コーチの指導を受けている女性選手よりも、22.142kg低かった(p<0.01)。同様に、女性コーチの指導を受けている男性選手の記録は、男性コーチの指導を受けている男性選手よりも、16.172kg低かった(p<0.05)。

女性選手は選手生活の前半と後半で相性の良いコーチの性別が変わる

年齢を考慮した場合も、男性選手は一貫して男性のコーチの指導を受けたほうが、記録が伸びる確率が高いことがわかった。

一方、女性選手は、43歳前後までは女性コーチよりも男性コーチの指導のほうが記録が伸びやすいものの、それ以降は女性コーチの指導を受けたほうが良い可能性のあることがわかった。

“男性のスポーツ”との見方が女性の活躍の場を狭めている可能性

この結果を著者らは、「男性の重量挙げ選手は男性のコーチとより良いパフォーマンスを発揮する。女性の重量挙げ選手は、43歳までは男性のコーチと過ごすことでパフォーマンスが向上し、その後は女性のコーチとのパフォーマンスが向上する」と結論付けたうえで、「このようなコーチの性別によるパフォーマンスの違いは、スポーツにおける女性に対する歴史的な偏見を含む複数の原因が考えられる」と述べている。

例えば、男性の重量挙げコーチは女性コーチよりも経験が豊富である可能性があり、そうであるために男性コーチはさらに多くのスキルアップの機会を得られる。他のスポーツ競技での検討では、コーチの性別はアスリートのパフォーマンスに影響を与えないとの報告もみられることから、本研究の結果は「アスリートの成功に対するコーチの性別の影響が誇張されすぎている可能性がある」とも記している。

そのうえで、「重量挙げは伝統的に“男性的スポーツ”とみなされているため、この競技に参加する女性アスリート、およびリーダーシップをとる女性コーチに、より多くのエールを送る必要がある」と語っている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effect of Coach Gender on Competitive Weightlifting Performance for Men and Women Weightlifters」。〔Front Sociol. 2021 Feb 8;5:539566〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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