スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

加工肉は死亡リスクと相関するが、赤身肉は相関しない 21カ国13万5千人の調査

肉類は一般的に、健康に良くないというイメージがあるが、すべての肉を十把一絡げに語ることはできないようだ。21カ国の約13万5千人を約10年間追跡するという大規模な研究の結果から、加工肉の摂取量が多いことは死亡リスクの高さと有意に関連しているが、未加工の赤身肉や家禽の摂取量とは有意な関連がみられないというデータが示された。この研究結果は、米国臨床栄養学会の「American Journal of Clinical Nutrition」に論文掲載されるとともに、米国栄養学会のサイトにニュースリリースが掲載された。

加工肉は死亡リスクと相関するが、赤身肉は相関しない 21カ国13万5千人の調査

加工肉と未加工肉を同一視してよいのか、区別が必要か?

赤身肉は飽和脂肪酸(saturated fatty acid;SFA)を多く含むため、心血管疾患(Cardiovascular disease;CVD)のリスクを高めると考えられており、食事ガイドラインでは赤身肉の摂取を制限することが勧められている。ただし、未加工の赤身肉と加工肉との区別はなされていない。実際、赤身肉の摂取量とCVDリスクとの関連は、異なる研究結果が報告されており、両者を区別して摂取を制限または推奨するための一貫性のある根拠がないのが現状だ。

そこで本論文の著者らは、未加工の赤身肉、家禽(鶏肉)、加工肉の摂取量と、総死亡(すべての原因による死亡)および主要心血管イベント(Major Adverse Cardiovascular Events;MACE)の発生率との関係を検討した。

前向き都市農村疫学調査(PURE)データを解析

この研究には、「前向き都市農村疫学調査(Prospective Urban Rural Epidemiology;PURE)」のデータが用いられた。PURE研究は、低所得国、中所得国、および高所得国を含む21カ国から13万4,297人のデータが登録されたコホート研究。

肉類の摂取が健康に及ぼす影響はこれまでにも多く報告されているが、それらの大半は1カ国のみ、または高所得国のみで行われたものであるのに対して、PURE研究は所得レベルの異なる多数の国からデータ登録されている点が特徴。なお、PURE研究では、研究参加者の食物摂取量を、各国ごとに精度検証済みの摂取頻度アンケートを用いて把握している。

加工肉と未加工赤身肉や家禽で異なる結果

9.5年の追跡期間中に、7,789人の死亡と6,976件のCVDイベント(MACE)が記録されていた。まずは、未加工赤身肉の摂取量と、総死亡およびMACEリスクとの関係をみてみよう。

未加工の赤身肉や家禽の摂取量が多くても、総死亡やMACEと関連なし

未加工の赤身肉の摂取量が50g/週未満の群を基準に、摂取量が250g/週以上の群の総死亡率を比較すると、HR0.93(95%CI;0.85~1.02)であり有意なリスク増大は認められなかった。また、未加工赤身肉の摂取量と総死亡率との間に有意な用量反応関係は認められなかった(傾向性p=0.14)。

同様に、MACE発生率もHR1.01(95%CI;0.92~1.11)であり、用量反応関係が非有意だった(傾向性p=0.72)。

家禽の摂取量とアウトカムとの関係についても同様であり、有意な関連は認められなかった。

加工肉の摂取量が多いと、総死亡やMACEのリスクが高い

一方、加工肉の摂取量とアウトカムとの関連については、有意な関連が存在していた。

加工肉をほとんど摂取していない群(0g/週)を基準に、摂取量が150g/週以上の群の総死亡率を比較すると、HR1.51(95%CI;1.08~2.10)となり、有意なリスク上昇が認められた。また、加工肉の摂取量が多いほど総死亡率が高くなるという、有意な用量反応関係も認められた(傾向性p=0.0009)。

同様に、MACE発生率もHR1.46(95%CI;1.08~1.98)であり、用量反応関係も有意だった(傾向性p=0.004)。

より詳細な検討が必要ではあるが、加工肉の摂取量は減らすべき

結論として、21カ国、約13万5千人、追跡期間約10年という大規模な多国籍前向き研究で、未加工赤身肉と家禽の摂取量は総死亡率およびMACE発生率との間に有意な関連はみられず、反対に加工肉の摂取量が多いほど総死亡率とMACE発生率が高いという結果が示された。

著者らは、「この研究は未加工肉と加工肉の摂取量と健康アウトカムとの関係に関する情報を示した初の多国籍研究。解析対象には低中所得国に暮らす人々も含まれており、多様な集団での幅広い食事パターンが調査され、新たなエビデンスとなった」と述べている。また、「今後の追加解析により、肉類の摂取量と健康アウトカムとの関係の理解がより深まる可能性があると考えている。例えば、肉の摂取量が少ない人は肉の代わりに何を食べていたのか、そしてそれらの食品の品質が国によって異なるかどうかが現時点ではまだ明らかでない」としている。そのような検討の余地があることに言及したうえで、「加工肉に関しては、現時点でも摂取を制限することが奨励されるべきであると思われる」とまとめている。

関連情報

Processed Meat Linked to Higher Risk of Mortality and Cardiovascular Disease(米国栄養学会)

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of unprocessed and processed meat intake with mortality and cardiovascular disease in 21 countries [Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) Study]: a prospective cohort study」。〔Am J Clin Nutr. 2021 Mar 31;nqaa448〕
原文はこちら(Oxford University Press)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ