母親の生活習慣が子どもの睡眠不足に関連し、睡眠不足は運動不足や朝食欠食と関連
寝不足の小学生の母親は、仕事をもち生活習慣が良くないことが多いというデータが報告された。また、睡眠不足の子どもは朝食を欠食する習慣があったり、運動不足である確率が有意に高いという。富山大学地域連携推進機構地域医療保健支援部門が富山県教育委員会と連携して実施した、文部科学省スーパー食育スクール事業の追加調査の結果であり、「Children」に論文掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。
研究の概要
この調査の対象は、富山県高岡市の小学校 5 校に通う1~6年生の全児童2,129名。平成28年1月に、家庭環境や親子の生活習慣などに関するアンケートを実施し、1,986名から回答を得た(回収率93.3%)。今回の解析では、睡眠習慣(就寝時刻、起床時刻、睡眠時間)と日中の睡眠不足感に着目し、有効回答数1,882名のデータを解析対象とした。
その結果、「3時間以上メディアを利用する」子どもは、遅寝・遅起きで生活リズムが夜型化していることがわかった。睡眠不足の子どもの特徴として、「母親の生活習慣がよくない」、「母親が仕事を持っている」という特徴がみられた。また、睡眠習慣の悪い子どもは、朝食の欠食や運動不足を伴いやすいこともわかった。地域社会や保護者の協力のもと、子どもの睡眠習慣を改善するための取り組みが必要と考えられる。
研究グループでは、「コロナ禍でオンライン学習を含めたメディアの利用時間が長くなるなど、子どもの生活リズムの変化や睡眠不足が懸念されている。小学生の睡眠習慣と他の生活習慣との関連や、その背景にある家庭環境との関連を包括的に比較した研究は少なく、子どもの望ましい睡眠習慣の確立につながる貴重なデータと考えている」と述べている。
調査結果の詳細
このアンケートにおいて、睡眠習慣については、子どもが保護者とともに回答した。なお、著者らは既に、このようなアンケートで把握する自己申告による睡眠習慣が、Actiwatch(腕時計型睡眠記録計)を用いて記録された、正確性の高いデータと強く相関することを過去の研究で確認済み。
調査の結果、就寝時刻が22時以降の子どもは28.9%で、起床時間が7時以降の子どもは4.5%、睡眠時間が8時間未満の子どもは21.5%、日中に睡眠不足を感じる子どもは17.0%だった。
「3時間以上メディアを利用する」子どもは、生活リズムが夜型化し、朝起きられない
「3時間以上メディアを利用する」子どもは、「3時間未満」の子どもと比較して、就寝時刻と起床時刻が遅くなり、朝7時までに起きられない子どもが多かった(図1)。しかし、睡眠時間は確保されていたことから、生活リズムが夜型化していると考えられる。
図1 メディア利用時間と子どもの就寝時刻
年齢や性別等の交絡因子を調整後の統計解析の結果、「メディア利用が2時間未満」の子どもを基準とした場合、「3時間以上メディアを利用する」子どもは、22時以降の就寝(OR1.70,p<0.01)や、7時以降の起床(OR3.05,p<0.001)の確率が有意に高かった(図2)。
なお、以下に記す結果も同様に、年齢や性別等の交絡因子を調整後の解析結果。
図2 メディア利用時間と子どもの起床時刻
「母親の生活習慣が良くない」子どもは就寝時刻が遅く、睡眠不足を感じている
母親の生活習慣は、以下の7項目(Breslowの7つの生活習慣)で評価した。
- 適切な睡眠時間(7~8時間)をとる
- 喫煙をしない
- 適正体重を維持する
- 過度の飲酒をしない
- 定期的な運動を行う
- 朝食を毎朝食べる
- 間食をしない
この7項目のうち、あてはまる項目が多いほど生活習慣が良いと判断される。本検討では、あてはまる項目が0~3個の場合を生活習慣が「悪い」、4~5個の場合を「ふつう」、6~7個の場合を「良い」と判定した。
母親の生活習慣が「良い」家庭を基準とした場合、母親の生活習慣が「悪い」家庭の子どもは、22時以降に就寝する確率が有意に(OR1.75,p<0.01)高かった(図3)。
図3 母親の生活習慣と子どもの就寝時刻
「母親が仕事をしている」子どもは短時間睡眠
「母親が主婦」の子どもを基準とした場合、「母親の仕事が常勤・パート」の子どもは、睡眠時間が8時間未満である確率が有意に(OR1.53,p<0.05)高かった(図4)。
図4 母親の勤務形態と子どもの睡眠時間
起床時刻や日中の睡眠不足感と「朝食の欠食」が関連
「朝食を食べない」子どもは、「朝食を食べる」子どもと比較して、睡眠不足の傾向にあった。また、「7 時前に起きる」子どもを基準とした場合、「7 時以降に起きる」子どもは、朝食を欠食する確率が有意に(OR5.45,p<0.001)高かった(図5)。
図5 朝食摂取と子どもの起床時刻
「運動や外遊びをしない」子どもは、睡眠不足を感じている
「運動や外遊びをする」子どもを基準とした場合、「運動や外遊びをしない」子どもは、日中の睡眠不足感のある確率が有意に(OR1.43,p<0.01)高かった(図6)。
図6 運動や外遊びと日中の睡眠不足感
子どもの望ましい睡眠習慣を確立するために必要な3つのこと
研究グループでは、子どもの望ましい睡眠習慣を確立するために必要なこととして、以下の3つを提唱している。
- 利用時間を含めた適切なメディア利用、生活リズムに着目した睡眠教育が必要。
- 睡眠習慣の良くない子どもは、朝食欠食や運動不足もあるので一体的な改善が必要。
- 母親が安心して、仕事や子育てをするための施策が必要。
関連情報
メディア利用が3時間以上の子供は、遅寝遅起きで生活リズムが夜型化し、母親の生活習慣が良くなく、仕事を持っている場合に、子供の睡眠不足が多い(富山大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Social and Family Factors as Determinants of Sleep Habits in Japanese Elementary School Children: A Cross-Sectional Study from the Super Shokuiku School Project」。〔Children (Basel). 2021 Feb 5;8(2):110〕
原文はこちら(MDPI)