スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJクラブ会員募集中! 詳細はこちら
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

5つの食事スタイルの持久力パフォーマンスへの有益性と有害性をまとめたレビュー

高脂肪食、時間制限食、菜食主義食など、異なる5つの食事スタイルを、持久系スポーツアスリートが実践した場合の有益性と有害性をまとめた論文が発表された。1983年以降に発表された57報の論文に基づくナラティブレビューだ。5つの食事スタイルはすべて、持久系スポーツに適用可能だが、それぞれに注意すべきポイントがあるようだ。

5つの食事スタイルの持久力パフォーマンスへの有益性と有害性をまとめたレビュー

菜食主義食、高脂肪食、時間制限食、グルテンフリー食、低FODMAP食の特徴は?

持久系アスリートは、長時間のトレーニングや競技に必要なエネルギー量を満たしながら、パフォーマンスを悪化させる運動関連消化器症状を抑えるために、個人個人に適した食事スタイルを探し出す必要がある。近年、いくつかの新しい食事スタイルが提唱され、一定の支持を集めるようになった。

それらの食事スタイルの中から、このナラティブレビューで取り上げた食事スタイルは、菜食主義食(ベジタリアン食)、高脂肪食(低炭水化物食、ケトンジェニック食)、断続的断食(時間制限食)、グルテンフリー食、低FODMAP食の5種類。1983年から2021年1月までに発表された論文を検索対象とした。

PubMedおよびCochraneを用い、食事療法、陸上競技、ランナー、マラソン、サイクリスト、サイクリング、トライアスリート、持久力といった用語で文献検索を実施。PubMedで217件、Cochraneで80件の研究報告がヒットし、それらを対象に2名の研究者が独立してレビューを行い採否を検討。意見の不一致は3人目の研究者との討議にて判断した。

最終的に、ヒトを対象とした研究であり、適用した食事療法が明確に説明されており、持久系アスリートに対する影響が評価された英語論文57報を抽出した。動物実験やin vitroの研究報告は除外した。それぞれの食事スタイルの報告を広範にとりあげた大部な論文であり、ここでは前三者の食事スタイルをとり上げ、要旨の一部のみを紹介する。

ベジタリアン食

スポーツ人口の約10%が菜食主義との報告があり、人気の高まりをみせている。ベジタリアン食は、その方法により細分化される。一般的なベジタリアンスタイル(Vegetarian diet)は、肉はすべて除外するが一部の動物性食品を許容することがある。より制限の少ない準菜食主義食(Flexitarian diet)は、動物性食品の摂取が柔軟であり、回数は少ないながらもそれらを摂取する。

卵菜食(Ovo-vegetarian diet)は、すべての肉と乳製品を除外するが、卵は許容。乳菜食(Lacto-vegetarian diet)は、すべての肉と卵を除外し、乳製品は許容。乳卵菜食(Lacto-ovo vegetarian diet)は、すべての肉を除外し、卵と乳製品の摂取を許容。ペスカタリアニズム食(Pesco-vegetarian diet)は、魚以外のすべての動物性食品を除外する。 そして、ビーガン食(Vegan diet)は、食事からすべての動物性食品を除外する。

ベジタリアン食の潜在的メリット

ベジタリアン食は、スポーツパフォーマンスの向上、運動誘発性酸化ストレスの調節、抗炎症作用、免疫応答などとの関連が研究されている。

アマチュアランナー対象の横断的研究では、女性ベジタリアンアスリートが雑食のアスリートよりもVO2maxが高いが男性では差がない、ビーガンアスリートのVO2maxは雑食アスリートと比較して高いが血小板数が低いといった報告がある。

また、ベジタリアン食は筋グリコーゲンレベルを増加させ、疲労を遅延させる可能性が報告されている。ただし、これは食事スタイルではなく、炭水化物を多く含む食品がパフォーマンスの向上に関与していることを示しているとも考えられる。

もう一つのポイントは、上気道感染症(upper-respiratory tract infections;URTI)への影響だ。持久力系アスリートはURTIのリスクが高いことはよく知られている。それに対して菜食はポリフェノールの補給に優れており、対照群に比較してURTIの発生率が33%低いとの報告がある。また、心血管系へのベジタリアン食の好ましい影響も報告されている。

ベジタリアン食の潜在的リスク

ベジタリアン食には、相対的な摂取エネルギー不足のリスクがつきまとう。とくに、いくつかの特定の栄養素が不足するリスクが高い。これは、摂取可能な食品が限られていることのほかに、高繊維食であるがために満腹感が生じやすく、摂取量を増やしがたいというメカニズムも関係している。

アスリートの場合、ω-3脂肪酸、鉄、亜鉛、ヨウ素、カルシウム、ビタミンD、ビタミンBなどの微量栄養素の欠乏リスクがより高い。その結果として、鉄欠乏性貧血、月経障害、筋骨格傷害、免疫不全、ホルモン分泌が不規則になることがある

ベジタリアン食と蛋白質摂取量との関係は、長年議論されている。菜食主義者はアミノ酸が不足しているとの指摘がある一方で、豆類から十分に摂取していることが多いとする考え方もある。ベジタリアン食でも、一般に推奨されている1.2g/kg/日の蛋白質を摂取可能であり、さらにビーガンであってもアスリートに推奨される最大量である2.0g/kg/日も可能という検討結果も存在する。

高脂肪食

高脂肪食はてんかんの治療として、また減量のための戦略として採用されることがある。近年は、持久系アスリートにも広がっている。

高脂肪食は、その方法により細分化される。低炭水化物高脂肪のケトジェニック食は、20~50g/日程度の極端な炭水化物制限と、総摂取エネルギー量の75~80%を占める高脂肪で構成され、蛋白質摂取量も十分(15~20%)に確保し、ケトーシス状態を維持する。一方、非ケトジェニック低炭水化物高脂肪食は、ケトン体産生を目的とせず、低炭水化物(総摂取エネルギー量の15~20%)と高脂肪(同60~65%)、蛋白質(15~20%)で構成される。なお、外因性にケトーシスとするには、急性ケトン体サプリメントも用いられる。

高脂肪食の潜在的メリット

高脂肪食に関しては、筋グリコーゲン貯蔵の温存、体重減少、疲労抑制、認知機能増強、免疫およびホルモン応答の調節などが研究されている。

パフォーマンスに対しては、エネルギー源として脂肪酸の利用を高める可能性があり、糖利用の節約効果を生み、この点は持久系アスリートにメリットをもたらすことも考えられる。一方、脂肪酸を主体とする基質利用の変化に伴い、インターバルスプリントを伴う長時間の運動などの糖利用も必要とする運動には有利ではない可能性がある。

高脂肪食の潜在的なリスク

高脂肪食により、消化器症状、食欲低下、骨形成マーカーの低下、血清脂質値の上昇などが認められるとの報告がある。また、ランニングエコノミーの低下も潜在的な欠点として想定されている。

高脂肪食は、パフォーマンスと健康上のメリットを有する可能性もあるが、反対にまったく効果がないか、持久系アスリートに問題を引き起こす可能性もある。さらに、外因性または内因性ケトーシスに対する生理学的反応は、トレーニングを積んだ持久系アスリートと、そうでない人では異なる可能性があり、より多くの研究が必要な段階。

断続的な断食

断続的断食は、飲食物からの自発的な離脱として定義され、世界各地でさまざまな集団によって継承されているアプローチ。近年、健康増進効果を示唆するデータが増えつつあり、メディアで取り上げられることが増えている。

断続的断食は、その方法により細分化される。完全な隔日断食は、断食日(飲食しない日)と、自由に飲食する日を交互に実践する。完全に1日単位の断食を交互に行うのではなく、夜間のみの絶食など、やや変更を加えた方法で行うこともある。

時間制限食は、1日のなかに飲食しない時間帯と、自由に飲食する時間帯を設定する。このほか、ラマダン断食などの宗教的な断食では、特定の期間や特定の時間帯のみ飲食を絶つ。

断続的断食の潜在的メリット

12~16時間以上のエネルギー摂取制限(絶食)は、エネルギー基質を炭水化物から脂肪へとスイッチさせて、ケトン産生食と同様にケトーシスを引き起こす。筋肉細胞に対しては、ミトコンドリア生合成の刺激やmTOR活性の抑制など、有酸素運動と同様の反応が報告されている。これらは有望なメリットと目されるが、断続的断食の効果を持久系アスリートで検討した研究は見当たらない。

断続的断食は体脂肪率を低下させることを介して、いくつかのメリットをもたらす可能性を秘めてはいるが、それが持久力のパフォーマンスにプラスの影響を与えるとは限らない。

断続的断食の潜在的なリスク

断続的な断食により、持久力低下への潜在的な懸念、疲労感の増大、睡眠習慣に変更が及んだ場合の影響、および脱水のリスクを考慮せねばならない。

十分にトレーニングされた中距離ランナーのタイムトライアルで、断続的断食がパフォーマンスの低下を引き起こしたという研究報告がある。これまでの報告を考慮すると、スポーツパフォーマンス関連のパラメーターの改善を目的とする断続的断食は、依然として不確実な要素が多い。

スポーツ栄養士は、アスリートの微量栄養素の摂取不足に注意を

上記のほかに著者は多くの文献的考察を行ったうえで、結論の中で以下のように記している。「これら5つの食事はすべて、持久力パフォーマンスに有益な効果と有害な効果の両方をもっているようにみえる。持久力アスリートに適用可能ではあるが、指導にあたるスポーツ栄養士は、ベジタリアン食などではとくに微量栄養素の摂取量のモニタリングに注意が求められる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Efficacy of Popular Diets Applied by Endurance Athletes on Sports Performance: Beneficial or Detrimental? A Narrative Review」。〔Nutrients. 2021 Feb 2;13(2):491〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする

関連記事

スポーツ栄養WEB編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
スポーツ栄養”見える”化プロジェクト
スポーツ栄養”見える”化✕選手育成プロジェクト「中井彩子 フランス・ロードバイク日記」
元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

セミナー・イベント情報
このページのトップへ