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ナッツ類は子どもの健康にもメリットがある? 系統的レビューからのエビデンス

成人を対象とする研究からは、ナッツ類の適度な摂取が健康に良いことが示されている。しかし子どものナッツ摂取に関する知見はごくわずか。子どもの健康とナッツ摂取の研究の大多数は、ナッツによるアレルギーというマイナスの面ばかり注目されている。今回紹介する論文は、この状況を背景に、既報の研究を対象とするシステマティックレビューによって何らかのプラスの面が認められないかを検討した報告だ。

ナッツ類は子どもの健康にもメリットがある? 系統的レビューからのエビデンス

アレルギー以外の健康指標とナッツ摂取との関連を研究した論文を検索

文献検索の対象は、ナッツ摂取と子どもの健康の関連を調査した無作為化比較試験。システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項である「PRISMA(preferred reporting items for systematic reviews)」に準拠して実施された。

採用条件は、ナッツ摂取の影響を、プラセボまたはコントロール(ナッツ摂取なし)と比較しており、少なくとも一つの健康関連指標を評価しているもので、研究対象者は18歳未満の小児に限定した。一方、除外基準は、ナッツオイルまたはチョコレートでコーティングされたナッツ、もしくはナッツ以外の他の成分を含む食品(ナッツとで来フルーツのバーなど)を用いた研究、およびアレルギーに関する研究。

アウトカムは制限せず、あらゆる健康関連指標を評価した。例えば、消化器症状、肥満、食事の質、心臓代謝疾患マーカー(とくに血清脂質値、血圧、血管機能、血糖、インスリン)などが含まれていた。

文献検索は2020年4月30日に、PubMed、Scopus、Web of Science、Cochrane Library、EMBASEを用いて行われた。検索キーワードは、成人対象研究のシステマティックレビューで用いられた既報の用語を踏襲し、かつ、「グルコース調節」「インスリン感受性」「心臓代謝の健康」「食事の質」など、いくつかの用語を追加した。

検索でヒットした論文は5,783報で、重複を削除した後、4,821報について、タイトルと抄録の情報を基にスクリーニング。抽出された36件について、2名の独立した研究者が論文全文をレビューし、最終的に4報の論文が残った。このうち1報は同一の研究を基に書かれていたため、研究数としては3件だった。研究が実施されたのは、米国、イタリア、ブラジルが1件ずつだった。

研究参加者数は17~60人で合計106人、年齢は4~15歳であり、1件は女児のみを対象としていた。参加者の合計106人の半数以上にあたる60人は原発性高脂血症であり、他の半数弱は健常児だった。

ナッツ摂取群のナッツ摂取量は15~30g/日の範囲内にあり、介入期間は3週間、6週間、16週間だった。また評価されていた指標は、Healthy Eating Index(HEI)による食事の質、栄養素摂取量、消化管の健康、脂質プロファイル、糖代謝、炎症、血圧、抗酸化能、酸化ストレス、微小循環パラメーターなどだった。

食事の質、心臓代謝面の健康、消化器の健康について分析

本研究は、これら3件、4報を基に、「食事プロファイル」「心臓代謝面の健康」「消化器の健康」という3項目について分析を加えている。

食事の質

摂取エネルギー量と食物繊維については、3件の研究すべてが、ナッツ摂取群と対照群で有意差を報告していない。

1件の研究では、ナッツ摂取群で脂肪酸摂取量の有意な増加が認められた。原発性高脂血症の小児に対し、ヘーゼルナッツ15~30gを8週間摂取という介入により、ω-3多価不飽和脂肪酸、ω-6多価不飽和脂肪酸などの摂取量が有意に上昇したという。その介入により、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量、血清脂質プロファイルには有意な影響は認められていない。

別の研究では、ヘーゼルナッツの摂取により炭水化物摂取量が有意に減少、蛋白質摂取量には影響がないことが報告されている。一方、アーモンドの摂取は炭水化物の摂取量に影響を与えずに、蛋白質摂取量を有意に増加させていた。

また、"空のエネルギー"と表現される高エネルギーかつ低栄養の食品の摂取量が減り、マグネシウム、ビタミンE、植物性蛋白質の摂取が増えることが報告されている。

著者の考察:

子どものナッツ摂取の影響は、成人の観察研究でみられた結果と一致しているようだ。ナッツの豊富な蛋白質と食物繊維は満腹感をもたらし、"空のエネルギー"の摂取を減らし、子どもの食事の質を改善するというメカニズムが想定される。ナッツは不飽和脂肪酸と必須ビタミンが豊富であり、飽和脂肪酸、砂糖、塩の多いスナックよりも健康的である。

心臓代謝面の健康

アーモンドとヘーゼルナッツの摂取が小児の心臓代謝面に及ぼす影響は、3報で述べられていた。それらの摂取は体重やBMIには影響がみられず、ウエスト周囲長、血糖、インスリン感受性、炎症(CRP)、HDL-コレステロールにも影響を与えていなかった。ただし、対照群が乳糖を含むプラセボである場合、中性脂肪、総コレステロール、LDL-コレステロール、および酸化LDL-コレステロールの相対的な低下が認められた。

原発性高脂血症の小児対象の研究では、酸化LDL-コレステロール、酸化LDLとLDL-コレステロールの比、酸化LDL-コレステロールとHDL-コレステロールの比、血圧に影響を与えないと報告されている。他方、15〜25gのブラジルナッツ16週間の摂取が、抗酸化ミネラルとされるセレンの摂取量増加につながったとの報告がある。その検討では抗酸化マーカーへの影響は認められていないが、酸化LDL-コレステロールは有意に減少していた。

ブラジルナッツの摂取は、毛細血管を通過する赤血球の速度で評価した微小血管反応を有意に改善したとの報告もみられる。

著者の考察:

ナッツをよく食べる習慣のある子どもは総コレステロールが低く血管内皮機能が良好であることや、ブラジルナッツ15~25gを16週間摂取すると、血清脂質値が改善するという観察研究が存在する。しかし、原発性高脂血症の小児を含む今回のレビューでは、脂質や血圧への有意な影響を認めることができなかった。健康な子どもと原発性高脂血症の小児への影響とは、別々に検討する必要があるだろう。

消化器の健康

消化器の健康に及ぼす影響は、1件のRCTのみで検討されていた。その研究では、15gのアーモンドまたは同等のアーモンドバターを3週間摂取した小児は、消化器症状評価尺度(Gastrointestinal System Rating Scale;GSRS)の便秘のスコアが抑制されることがわかった。便秘以外の下痢、腹痛、消化不良、逆流症状のスコアには影響がなかった。

また、アーモンド摂取群では腸内の有益とされる細菌の割合が有意に上昇することが報告されている。ただし、腸内細菌叢の多様性やビフィズス菌、乳酸菌の量には変化がなかった。

著者の考察:

ナッツにはヒトの消化酵素では消化されにくい成分(ポリフェノールや多糖類など)が含まれており、プレバイオティクスとして機能し、腸内細菌叢の基質となる。成人においては、クルミ、アーモンド、ピスタチオの3~16週間の摂取で腸内細菌叢に有意な変化を起こし得ることが示唆されている。小児の腸内細菌叢にメリットをもたらすために必要な摂取量、摂取期間の研究が必要だろう。

成長過程での健康的な食習慣の確立にナッツをとり入れる

以上の分析のまとめてして、著者は結論を以下のように述べている。

「無作為化試験に基づくシステマティックレビューでは、データの不足と一貫性の欠如が明らかになった。ナッツは健康的な食品であり、子どものための健康的な食事の一部として推奨されるべきであることは明らかだが、現時点の限られたエビデンスは、高脂血症の子どもに健康上のメリットをもたらさないことを示している。とは言え、エネルギー密度が高く栄養素の少ないスナックをナッツに置き換えることは、子どもが大人へと成長する過程で、健康的な食習慣を身に着けるのに役立つ可能性がある」。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effect of Nut Consumption on Diet Quality, Cardiometabolic and Gastrointestinal Health in Children: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 Jan 8;18(2):E454〕
原文はこちら(MDPI)

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