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日本人労働者では、座位時間を睡眠に充てるとメンタル不調になる可能性が低下 体力医学研究所

2020年12月25日

座位での作業時間を減らして睡眠時間を増やすことで、メンタル面の不調が減る可能性が、日本人を対象とする研究から明らかになった。1時間の座位時間を睡眠に変えると、心理的ストレスを抱える確率が2割減り、仕事への活力が低下する確率が1割減ると見込まれるという。一方、中~高強度身体活動の時間を加減しても、メンタル面への影響はそれほど大きくないという点は最近海外から報告された研究と異なる。

明治安田厚生事業団体力医学研究所の北濃成樹氏、甲斐裕子氏らの研究結果であり、「Preventive Medicine Reports」12月号に論文が掲載された。

日本人労働者では、座位時間を睡眠に充てるとメンタル不調になる可能性が低下

国内の労働環境での日本人を対象とした研究

睡眠時間が少ないとメンタルヘルスが不安定になりやすい。そればかりでなく、短時間睡眠が肥満や2型糖尿病などのリスクと関連するとの報告も増えている。一方、身体活動量が少ないことが生活習慣病のリスクと関連していることはよく知られており、また身体を動かすことでメンタルの調子が良くなることも、多くの人が実感していることだろう。そのため、精神的にも身体的にも、睡眠時間と身体活動時間を十分確保したいところだ。

ところが、1日は24時間と決まっている。両者の時間を増やすことは、とくに現役世代の多忙な生活者にとってはなかなか難しい相談だ。運動するために睡眠時間を減らすのがいいのか、それとも運動する時間は少し減らして睡眠を十分とったほうが良いのか、どちらだろうか?

この悩ましい疑問に対する一つの回答として、海外からの報告を以前に当サイトで紹介したことがある※1。その研究では、ある程度の中~高強度身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行うことがメンタルヘルスにとって重要であることが示された。ただしその研究の対象は日本人ではなく、睡眠時間を含む平均的な日常生活パターンが我々と同一とは言えない集団での検討結果だ。

※11日に最低12分の中~高強度運動が精神的な健康に必要 オフィスワーカー対象の調査

これに対して北濃氏らの研究は、国内企業労働者を対象とした、日本発のエビデンスとして注目される。

組成データ解析(CoDA)という手法で、時間の配分とメンタルヘルスの関連を検討

この研究は、生活習慣と健康との関係を継続的に調査している「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」の一環として行われた。

研究参加者は明治安田新宿健診センターを受診した労働者のうち、10日間加速度計を装着して生活することに同意した1,647人。加速度計の記録と、睡眠時間に関する調査から、24時間をどのように過ごしているかを把握した。

メンタルヘルスについては、心理的ストレスと、ワークエンゲイジメント(仕事への活力)を評価した。心理的ストレスの評価にはK6スコアという指標を用い、スコアが5点を超える場合を「心理的ストレスがある状態」と判定。ワークエンゲイジメントの評価には、UWES-9スコアという指標を用い、スコアが3点未満の場合を「ワークエンゲイジメントが低下した状態」と判定した。

1日の行動とメンタルヘルスとの関連の解析は、単なる睡眠や身体活動の時間の長さとの関連ではなく、「組成データ解析(compositional data analysis;CoDA)」という統計手法を用いて、ある行動に充てる時間を増やしてその他の行動の時間を減らすという時間配分変更の影響を総合的に評価した。

加速度計の記録が不十分な人や精神疾患罹患者、睡眠薬服用者などを除いて、1,095人のデータを解析に用いた。平均年齢は50.2±9.5歳、女性が68.6%を占め、23.4%が営業職であり、大半は短大卒以上のフルタイム勤務者だった。解析に際しては、24時間の行動とメンタルヘルスの関連をゆがめる可能性のある因子(年齢、性別、BMI、学歴、経済状態、婚姻状況、飲酒・喫煙習慣、職種、雇用形態、残業時間)を調整した。

メンタルヘルス改善のポイントは、平日の時間の使い方

解析の結果、休日ではなく平日の時間配分とメンタルヘルスに、有意な関連が認められた。

睡眠時間と座位行動が有意に相関し、中~高強度身体活動は相関せず

具体的には、平日の睡眠時間が長い人ほど心理的ストレスが低く(K6スコア5点超のオッズ比〈OR〉が0.20,95%CI:0.10~0.44)、かつ、ワークエンゲイジメントが高かった(UWES-9スコア3点未満のOR0.41、同0.20~0.81)。

一方、平日の座位行動(1.5METs以下)の時間が長いことは、心理的ストレスが高いこと(OR2.28,95%CI:1.23~4.28)、およびワークエンゲイジメントが低いこと(OR2.75,95%CI:1.55~4.91)と有意に関連していた。低強度身体活動(1.6~2.9METs)の時間の長さは、心理的ストレスが高いこと(OR2.45,95%CI:1.46~4.17)とのみ関連していた。

中~高強度身体活動(3.0METs以上)の時間に関しては、メンタルヘルスと関連がなかった。また、休日の睡眠や身体活動の時間は、いずれもメンタルヘルスと関連がなかった。

座位行動の1時間を睡眠に変えると、メンタル不調である可能性が1~2割減ると試算

得られたデータを基にした統計学的予測によって、平日に60分の座位行動を睡眠に充てた場合に、心理的ストレスを抱える確率が20.2%減少し、ワークエンゲイジメントが低下する確率が11.4%減少すると推計された。また60分の低強度身体活動を睡眠に充てた場合には、心理的ストレスを抱える確率が26.6%減少すると考えられた。

平日の座位行動や低強度身体活動を睡眠に変える!

冒頭に記したように、海外からは、メンタルヘルスにとって中~高強度身体活動が重要だとする今回の研究結果とは異なるデータが報告されている。この点について、著者らによると、「日本は世界的にみて睡眠時間が短い国であるため、睡眠時間を増やすことによるメリットが、身体活動を増やすことのメリットよりも強く現れるのではないか」と考察している。

結論として著者らは、「労働者の平日の座位行動や低強度身体活動の時間を減らし、それを睡眠に充てることが、心理的ストレスの解消やワークエンゲイジメントの向上につながる可能性がある。そのためにも企業経営者は長時間労働(残業)を、従業員は日常生活での座位行動(例:職場での座業、余暇時のTV視聴やPC利用など)をそれぞれ見直し、睡眠時間を充分確保する取組みが必要ではないか」と述べている。

なお、本研究の結果を解釈する際の留意点として、横断研究であり因果関係には言及できないこと、検討対象が主として首都圏の企業労働者であり、比較的活動量の多い集団であったことから、他の集団に結果をそのまま外挿できるとは言えないことが挙げられる。

文献情報

原題のタイトルは、「Compositional data analysis of 24-hour movement behaviors and mental health in workers」。〔Prev Med Rep. 2020 Sep 29;20:101213〕
原文はこちら(Elsevier)

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