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1日に最低12分の中~高強度運動が精神的な健康に必要 オフィスワーカー対象の調査

1日は24時間だ。24時間をどのように使うかという判断は、その人がどのように生きるかということであり、その積み重ねが人生を変えるとも言える。運動が身体や精神の健康維持に良いことはわかっている。では、必要な睡眠の時間を削ってでも運動すべきなのか、または、そのようなことをしてはかえって健康にマイナスなのか、どちらだろうか?

1日に最低12分の中~高強度運動が精神的な健康に必要 オフィスワーカー対象の調査

従来、運動と身体的・精神的検討との関連は、運動にあてる時間や運動強度を指標に検討されてきたが、時間の配分との関係はほとんど研究されていない。今回紹介する論文は、加速度計と睡眠日誌などの記録を用いて、1日24時間の過ごし方とメンタルヘルス状態との関連を検討した結果だ。

メンタルヘルスの不調は、社会的、経済的に重い負担をもたらす。2016年のデータでは、欧州連合全体で人口の6人に1人にあたる約8,400万人がメンタルヘルスの問題を抱えていると推定され、多くの国で会社員の欠勤理由の第1位となっている。身体活動はメンタルヘルスに対しポジティブな影響があり、不活動(sedentary behavior;SED.座位行動)はネガティブな影響があることが多くの研究で明らかになっており、基本的には身体活動を増やすことが望まれる。

本研究は、一般生活者が身体活動を増やすに際し、それにあてる時間をどこからひねり出せば良いのかを探ることが、主要テーマの一つと言える。

身体活動の実施時間を強度別に評価し、メンタルヘルス状態との関連を検討

この研究には、スウェーデンの企業従業を対象に行われた2件の研究のデータが用いられた。いずれも参加者は18歳以上で、1回10分以上連続する中~高強度運動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を合計30分/日以上行っている人は、本研究が一般生活者対象の研究であるため解析から除外した。

身体活動は、加速度計を7日間連続で装着して生活してもらった記録から、中~高強度運動(MVPA)、軽強度運動(light intensity physical activity;LIPA)、座位行動(SED)、および睡眠の四つに分けて評価した。

睡眠は、睡眠日誌により睡眠時間を集計するとともに、睡眠効率(就寝から起床の間で実際に睡眠している時間の割合)を5日間評価した。

メンタルヘルス状態は、うつ、不安、バーンアウト(燃え尽き)、精神的な健康(mental wellbeing.幸福感)、ストレスについて、それぞれの評価スケールを用いて評価した。

研究参加者数は662人で、そのうち444人が解析に十分なデータ(4日以上の加速度計の記録と5日以上の睡眠日誌)が記録されていた。参加者は41±9歳、女性が68%、大学以上の学位取得者が68%であり、身体活動量は40代成人の平均と同等だった。

中~高強度運動の時間が幸福感と正相関

それでは研究参加者の24時間の利用状況をみてみよう。

24時間の時間配分とメンタルヘルス状態には関連がみられない

まず、身体活動は中~高強度運動に1日あたり合計62分(4%)、軽強度運動に326分(23%)あてていて、座位行動は577分(40%)、睡眠は475分(33%)だった。この時間配分とメンタルヘルス状態との関連を解析した結果、評価した五つの指標のいずれとも有意な関連は認められなかった。

次に、身体活動レベル別にメンタルヘルス状態との関連を解析したところ、中~高強度運動の時間と幸福感(mental wellbeing)との間に有意な正相関が認められた(β=7.01,p=0.019)。この関係は、年齢、性別、教育歴で調整後も有意だった。ただし、調整因子に睡眠効率と身体活動時間を加えるとβ値5.48、p値0.0668となり、有意性が失われた。

なお、中~高強度運動時間と幸福感以外のメンタルヘルス状態(うつ、不安、燃え尽き、ストレス)との関係、および、軽強度運動、座位行動、睡眠とメンタルヘルス状態との関係は、有意でなかった。

MVPAによる幸福感への効果を維持するには、最低1日12分必要

この対象の1日の中~高強度運動(MVPA)の時間の合計は前述のように62分だった。これを10分単位で他の行動に置き換えた場合の影響を統計的手法により割り出すと、MVPAが12分を切ると、幸福感(mental wellbeing)のスコアが50点(一般的なカットオフ値)を下回ることがわかった。

MVPAを軽強度運動、座位行動、睡眠のいずれに置き換えるかは、重要でなかった。また、この関係は非対称であり、MVPAの時間を他の行動に置き換えることによって生じる悪影響は、他の行動の時間を減らしてMVPAを増やすことで得られるメリットよりも大きいと推測された。

精神的健康には一定強度以上の運動が必要

著者らはこの検討の対象者が中年で比較的高学歴なオフィスワーカーが中心であり、女性がやや多いというサンプルに関連するリミテーションを記載している。また、メンタルヘルス状態が不良な対象者が多く含まれる場合には、異なる結果になる可能性も挙げている。

それらの考察のうえで研究の結論を、「24時間の行動の構成全体は、うつや不安症状、燃え尽き症候群、ストレスなどと有意に関連していなかった。ただし、軽強度運動や座位行動、睡眠に比較し、中~高強度運動は幸福感にポジティブな関連があった。これは、健康のためには、より高強度の運動にあてる時間が重要であることを示している」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Associations between 24 h Movement Behavior and Mental Health in Office Workers」。〔Int J Environ Res Public Health. 2020 Aug 27;17(17):6214〕
原文はこちら(MDPI)

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