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【公認スポーツ栄養士の現場レポート】大学陸上競技部の栄養サポートとエルゴジェニックエイド教育

2020年10月19日

一般社団法人日本スポーツ栄養協会では、本年6月よりサンプリングキャンペーンをSNDJメンバー(公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士)とサポート中のアスリートを対象に実施いたしました。選手たちの食事管理・栄養サポートを行う栄養士にとって、エルゴジェニックエイドの知識や関連商品情報は必須の武器。今回の取り組みを通して、スポーツ栄養士とチームスタッフ、選手たちとのコミュニケーションを深め、エルゴジェニックエイド教育のきっかけづくりに活用いただきました。そのなかから、陸上強豪校・城西大学陸上競技部の栄養サポートを行う伊東順太さん(公認スポーツ栄養士)の報告をご紹介いたします。

【公認スポーツ栄養士の現場レポート】大学陸上競技部の栄養サポートとエルゴジェニックエイド教育 城西大学陸上競技部
城西大学陸上競技部

はじめに

私、伊東順太は城西大学薬学部医療栄養学科(管理栄養士養成課程)の助教として勤務しながら、2018年に公認スポーツ栄養士資格を取得し、スポーツ栄養士活動を開始しました。このたび、このような貴重な機会をいただきましたので、私がこれまでに本学陸上競技部員に実施してきた栄養サポートの内容に加え、SNDJのサンプリングプロジェクトを通じて取組んだエルゴジェニックエイドに関する栄養教育についてご紹介します。

"期分けを意識した食事の自己管理能力の習得"を目指す栄養サポート

陸上競技部への栄養サポートは、公認スポーツ栄養士養成講習のインターンシップがきっかけで始まり、今年で4年目となりました。陸上はこれまで競技経験がない競技でしたので、サポート開始当時仕事の合間を縫って練習中のグラウンドに通いつめ、監督やコーチだけでなく選手にも声をかけまくり、それぞれの種目の競技特性や練習メニュー内容を体得するところから始めました。当初から競技の"奥深さ"や選手個々が競技に真摯に向き合う姿勢や熱量に惹かれ、今では選手に負けないくらい陸上競技に情熱をかけてサポートしています。

私の栄養サポートのモットーは、「期分けを意識した食事の自己管理能力の習得」を目指すことです。大学陸上競技の期分けは、試合期(シーズン)と鍛錬期(冬期練)に大別され、それぞれの期分けに沿った選手個々の目標を目指すための食事設計が求められます。

サポート開始当初に行った食物摂取頻度および食意識の調査でも、競技特性を考慮するだけでなく、選手のライフスタイルをふまえ、選手個々の食・栄養に関する意識や知識のレベルを把握して栄養サポートを実施することが必要であることを見いだしました。

この調査は、私の個別サポートをするための重要な礎となっています。また、選手には"コンディショニングチェック"と称して体組成測定を定期的に行います。体組成測定は次のサポート計画の立案のための重要なデータの収集になるだけでなく、モニタリングを通じて選手自身に食事のふり返りをしてもらう「ねらい」があります。

一方で私自身も、いま目の前にいる選手の抱えている問題の解決にいたる提案を増やすためにも、最新の学術論文をはじめ、新商品情報や調理方法などにも目を通し、情報をアップデートしたり、ストックしたりするよう努めています。

最近は怪我の防止、怪我からの回復に向けた食事・栄養に関する知見の構築に励んでいます。競技をしている以上、筋骨格系の怪我や故障はつきものなので仕方のないことですが、4年間という時間の中でできるだけいい成績をめざしてもらいたいので、普段の食生活からできることはないかを常に考えています。

コロナ禍での大学生アスリートの食生活における問題点と現場のニーズ

大学生アスリートは、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が出された後、競技大会の中止が相次いだうえ、ほどなくして大学ではオンライン講義が始まり、生活様式が大きく様変わりしました。

その中で生じた食生活の問題点は「朝ごはんが疎かになったこと」です。自粛期間が明け、練習も徐々に再開し始めた夏頃、身体の動きにキレが出ないことやバテやすいなと感じた選手が相談に来たことがきっかけで、聞き取り調査を行いました。

その結果、大学の講義がオンラインに切り替わったことで、起床時間が遅くなり、朝食を食べずに講義受け、昼食が1食目になっているという選手が散見されました。これまでも朝食の重要性については伝えてきましたが、まだまだ栄養教育が浸透していないなと痛感しました。相談をしてくれた選手からは「改めて食事の大事さを実感できた」という声をもらい安心しましたが、取り巻く環境に左右されがちな大学生アスリートの食生活を改めて考えさせられた一件となり、新たに栄養教育を始めたところです。

一方、選手からの相談で多いのが「試合前の食事」に関する質問です。「いつ」、「何を」、「どのくらい」食べたらよいのか?といったものから、「補食でおすすめは?」といったものまで、さまざまです。

私はこういった質問を受けたとき、必ず「今まではどうしてたの?」と聞くようにして、選手がこれまで得てきた「経験則」をベースにタイミングや食事内容を調整するように心がけています。

そして、そのおかげで生み出されたインカレ(全日本学生選手権)恒例のサポートが開催地および宿泊先周辺の食事処レポートです(下図)。このレポートは、あらゆる情報網を駆使して作成するので、たくさんの情報を載せたくなるのですが、遠征先にてスマホで見ることを想定しているので「1枚に収めること」を原則としています。今回の関東インカレ(2020年10月・関東学生陸上選手権大会)では、出場選手の中に試合前にいつも「うどん」を食べている選手がいたので、うどん屋さんを複数件チョイスしてお知らせしました(図1)。

図1

(出典:城西大学薬学部医療栄養学科 伊東順太)

試合当日は、「お腹の中は空っぽ。でも筋肉にはエネルギー満タン」を目指すよう3~4時間前に炭水化物メインの食事を済ませ、試合会場に到着後、お腹の具合に合わせて補食を摂ることを推奨しています。補食は手軽にできるだけ多くのエネルギーを補給でき、かつ短時間で消化できる食品(カステラ・バナナ・ゼリー飲料)が多く使用されている印象です。

栄養補助食品、サプリメントの指導と支援体制

栄養補助食品、サプリメントについて相談を受けた場合、まず選手自身にそのサプリメントが必要かをアセスメントします。そのうえで、選手自身も対象製品がどういったものなのかをしっかりと理解するよう指導しています。

最近では、インフォームドチョイスの認証(アンチドーピング認証)を受けている製品かを確かめるよう指導に加えています。またドーピングに関して不安があったらいつでも相談にのる準備はできているとも伝えており、私の所属する薬学部にはスポーツファーマシストの資格を持った薬剤師の教員がいるので使用禁止薬物に指定されている医薬品かどうかの照会や情報共有も図れる体制を整えています。

サンプリング品を利用した栄養講習会の開催と選手の声

これまで選手に対するエルゴジェニックエイド教育を行っていなかったので、SNDJのサンプリングプロジェクトを契機に、含有成分の説明会を兼ねたエルゴジェニックエイドに関する栄養講習会(オンライン講習会)を実施しました。

講習会では選手(聞き手)の整理をつけるため、各種のエルゴジェニックエイドをクレアチン,カフェイン,硝酸塩およびアルギニンとシトルリンの併用によるNOブースターを"攻めのエルゴ"、重炭酸塩とβアラニンを"守りのエルゴ"と称して分類し説明しました(図2)。

図2 エルゴジェニックエイドの分類

エルゴジェニックエイドの分類

(出典:城西大学薬学部医療栄養学科 伊東順太)

また、陸上競技種目別に各競技の特性と成分の効果をすり合わせた文献データ(図3)を参照し、「なぜ、この成分がそれぞれの種目に効果がある可能性があるのか?」を説明。選手からは以下のような感想が集まりました。

図3 エルゴジェニックエイドの分類 ー陸上競技種目別ー

エルゴジェニックエイドの分類 ー陸上競技種目別ー

(出典:城西大学薬学部医療栄養学科 伊東順太)

講習会後の選手からの感想

  • いままでエナジードリンクをあまり理解しないで摂取していました。今回の講義でどんな成分がどんな働きをするのか理解できました。
  • 自分の競技種目と合わせてサプリメント(エルゴジェニック)を考えるのは驚きでした。エルゴジェニックエイドを活かすためにも日頃の食生活により一層気を配ろうと思いました。
  • カフェインの効果と「攻めのエルゴ・守りのエルゴ」の話がとても分かりやすくためになりました。
  • 説明も分かりやすく摂取の仕方や私生活の中でも気をつけるべき事も分かり、今後活用しながらパフォーマンスを上げていけるように努力をしていこうと思いました。

図4 まとめーエルゴジェニックエイドの使い方ー

まとめーエルゴジェニックエイドの使い方ー

(出典:城西大学薬学部医療栄養学科 伊東順太)

エルゴジェニックエイドは、決してスーパーフードではないので、製品の効果を最大限に引き出すためには、毎日の食事・栄養に気を配り、コンディションのベースをしっかり築いた上で使用することが大切です。パフォーマンスの向上を確証・約束するものではないことに加え、過剰摂取しても一定の効果以上は得られず、 むしろ負の副作用のリスクが生じる可能性があることにも留意するよう指導しています。

最後になりますが、陸上競技をはじめ、大学スポーツ界も徐々に本格的な活動再開へと向かい始めました。今期の冬期練習でトレーニングを積むためにも今一度、自分の身体と毎日の食事に向き合い、そして着実に前進してもらいたいと思っています。withコロナ/afterコロナの中、大学スポーツ界は引き続き厳しい状況ではありますが、公認スポーツ栄養士としてこれからも大学生アスリートの皆さんの食生活と身体づくりに貢献して参ります。

水久保漱至選手(城西大学4年)と鈴木涼太選手(城西大学3年)

水久保漱至選手(城西大学4年)と鈴木涼太選手(城西大学3年)
水久保漱至選手は、2020年日本インカレ男子100m優勝/男子200m優勝! 鈴木涼太選手は2020年関東インカレ 男子100m優勝/2020年日本選手権 男子200m 3位!

濱田寛志選手(城西大学1年/400mハードル)

濱田寛志選手(城西大学1年/400mハードル)

著者プロフィール

伊東 順太 Ito Junta

伊東 順太 城西大学薬学部医療栄養学科病態解析学研究室 助教

城西大学薬学部医療栄養学科病態解析学研究室 助教。
管理栄養士。公認スポーツ栄養士。博士(薬学)。
2006年、城西大学薬学部医療栄養学科卒業。2011年、城西大学大学院薬学研究科薬学専攻博士後期課程 修了。明海大学歯学部口腔解剖学分野 助教を経て、2016年より現職の城西大学薬学部医療栄養学科病態解析学研究室 助教として管理栄養士養成教育に従事し、基礎栄養学、応用栄養学、スポーツ栄養学演習を担当。
2017年より城西大学陸上競技部所属選手(短距離、跳躍、競歩)の栄養サポートを担当。2018年、公認スポーツ栄養士資格取得。2019年より実業団陸上競技部所属選手(短距離)の栄養サポートも行っている。

関連情報

城西大学陸上競技部
城西大学陸上競技部のTwitter
城西大学薬学部医療栄養学科
伊東順太@病態解析学研究室 Twitter

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