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身体活動で医療コストが3~4割減る オーストラリア中年女性での検討

身体活動と疾患の予防や改善、寿命の関連については、過去に膨大な研究が実施され、また現在もさまざまな対象・介入法で試行されている。その一方で、身体活動による医療費抑制効果を示した研究は数が少ない。今回は、その数少ない研究の一つを紹介する。この研究は、身体活動量をある一時点のみの評価ではなく、12年間で3回評価しその変化との関連も検討している点も、大きな特徴と言える。

身体活動で医療コストが3~4割減る オーストラリア中年女性での検討

12年にわたり約1万4,000人の中年女性を追跡

この研究では、オーストラリアで現在も続けられている女性の健康に関する縦断研究(Australian Longitudinal Study on Women's Health;ALSWH)のデータが解析に用いられた。1946~51年に生まれ、研究のベースライン時に45~50歳の女性1万3,714人を対象とし、3年間隔で追跡調査が行われ、初年の2001年と2007年、および追跡最終年である2013年に、身体活動状況について調査された。

身体活動量は、オーストラリアで信頼性と妥当性が検証済みの質問票を使用して評価し、0~33.3METs分/週未満を身体活動「なし」、33.3~500METs分/週未満を「低」、500~1,000METs分/週未満を「中」、1,000METs分/週以上を「高」と判定した。

医療コストについては、同国の医療保険のメディケア給付制度と医薬品給付制度のデータをもとに、2013~15年に発生した患者自己負担分と公費負担分を合計した。

解析の対象となったのは、2001年、2007年、2013年のすべての追跡調査に協力した6,953人。年齢は62~67歳(平均64.5歳)、BMIカテゴリーは正常または低体重が36.2%、過体重が34.1%、肥満が29.6%で、63.1%が喫煙歴なし、30.6%が前喫煙者、6.2%が現喫煙者。また、55.3%は1~2つの慢性疾患があり、25.0%は3つ以上の慢性疾患があった。19.6%は慢性疾患なしだった。

身体活動量の変化

身体活動は、長期にわたって推奨レベルに維持することが理想だ。しかし女性は子どもの成長や就業状況の変化などによる生活スタイルへの影響が大きいため、身体活動量が変わりやすい。

本研究では、身体活動量が「なし」または「低」と判定された人(500METs分/週未満)を「活動的」、「中」または「高」と判定された人(500METs分/週以上)を「活動的」として全体を二分した上で、2001年、2007年、2013年の3回の調査でどのように変化したかを解析している。

それによると、2001年に活動的だったのは全体の51.13%で、その40.0%は2007年も活動的であり、11.3%は非活動的になった。2013年まで継続して活動的だったのは32.1%だった。

一方、2001年に非活動的だったのは全体の48.7%で、その24.6%は2007年も非活動的であり、24.1%は活動的になった。2013年まで継続して非活動的だったのは15.7%だった。

2007年は活動的が64.1%、非活動的が35.9%で、活動的な人が2001年より増えていた。2013年は活動的が62.9%、非活動的が37.1%で、2007年からは全体的に大きく変化していなかった。

医療コストとの関連

2013~15年の医療コストは、メディケアが3,788豪ドル(四分位範囲1,859~7,015)、医薬品が1,245豪ドル(同315~2,843)だった。これらのコストは、一貫して身体活動量が少ない群のほうが高かった。また、身体活動が減少した人よりも増えたの人ほうがコストが顕著に低かった。

具体的な金額を示すと、メディケアについては、最も低いカテゴリーから順に、常に活動的だった群で3,448(値は中央値で単位は豪ドル。以下同)、活動量が増加した群3,508、増加と減少の変動があった群4,170、常に非活動的だった群4,261、活動量が減少した群4,542であり、医薬品については、常に活動的だった群が818、増加した群1,183、変動した群1,460、減少した群1,692、常に非活動的だった群1,850だった。

次に、年齢、BMI、飲酒・喫煙習慣、婚姻状況、教育歴、地域などで調整のうえ、常に非活動的だった群を基準として各カテゴリーの医療費の総額を比較すると、メディケアについては常に活動的だった群のみ有意にコストが低く、医薬品については活動量が減少した群を除くすべての群で有意にコストが低かった。

具体的には、メディケアでのコストは、常に非活動的だった群に比べ常に活動的だった群は-1,728(95%CI:-3,013~-443)で、増加した群は-1,117(-2,448~212)、減少した群は1,040(-499~2,579)、変動した群は-434(-1,919~1,049)だった。また医薬品のコストは、常に非活動的だった群に比べ常に活動的だった群は-578(―729~―462)、増加した群は-338(-545~-232)、減少した群は-130(-312~50)、変動した群は-260(-434~-86)だった。

健康になろうとするのに、スタートが遅すぎることはない

結論として、アクティブな身体活動レベルを保つことは、そうでない場合に比較し、メディケアでの医療費が約4割、医薬品の医療費が約3割低いことと関連していた。

著者らは、「50~60代の女性の医療コストを削減するには、生涯を通じて可能な限り、活動の少ない女性は活動的になり、活動的な女性は引き続き活動を続ける必要がある」と述べている。また、「女性が健康になろうとし、自分自身の医療費コストを抑制しようとするとき、そのスタートが遅すぎることはない」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Twelve year trajectories of physical activity and health costs in mid-age Australian women」。〔Int J Behav Nutr Phys Act. 2020 Aug 10;17(1):101〕
原文はこちら(Springer Nature)

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