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ブラインドサッカー選手のボールトラップの極意は頭の動き「音を判断するメソッド」

2020年12月11日

ブラインドサッカー(視覚障害者サッカー)の選手が、動き続けるボールの位置をどのように判断しているのか、その詳細が明らかになった。ポイントは頭の動かし方であり、視覚障害のない人(晴眼者)に比べて頭部をより大きく下向きに回転させることで、音を発するボールの位置を正確に判断しているのだという。筑波大学のグループの研究結果であり、「Scientific Reports」に論文掲載されるとともに同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。

ブラインドサッカー選手のボールトラップの極意は頭の動き「音を判断するメソッド」

研究の概要:'音'が重要なスポーツの新たな練習法の開発にもつながる可能性

ブラインドサッカーでは転がると音が鳴るボールが用いられ、選手はその音を頼りにボールの位置を判断している。しかし、選手がどのようにしてボールの位置を判断しているのか、具体的なことはよくわかっていなかった。これまでの研究では、選手は頭部を動かし顔の正面で音を聴くことで、音源の位置をより正確に判断できることが報告されている。

本研究はさらに、ブラインドサッカー選手が転がってくるボールを足でトラップする際、頭部をどのように回転させているかを調べた。その結果、ブラインドサッカー選手は、経験のないアイマスクを付けた晴眼者よりトラップの精度が高く、トラップの瞬間に頭部が晴眼者より下を向いていることがわかった。また、ボールが投射された時点を基準とした頭部角度の下向きの変化は、ボールが投射された直後からボールトラップの瞬間まで、晴眼者と比較して一貫して大きかった。

つまりブラインドサッカー選手は、晴眼者より大きな下向きの頭部回転を用い、早い段階から頭部をボール方向に向けることで、音の位置をより正確に判断していることが示唆された。この結果は、音を聴いて動きへつなげることが重要なスポーツにおける効果的な練習方法の開発へと、つなげられる可能性があるという。

研究の背景:位置が変化し続けるボールを、どのように定位しているのか?

アイマスクを付けてプレーするブラインドサッカーでは、聴覚情報をもとに音源の方向や距離を特定する「音源定位」が重要な能力の一つと考えられる。

著者らの研究グループはこれまでに、複数あるスピーカーのうちどの方向から音が出るかが事前にはわからない条件の下で、提示された音の方向へ素早く一歩踏み出して反応するという課題を設定した研究で、ブラインドサッカー選手が晴眼のサッカー選手や一般の晴眼者に比べて、正確かつ素早く音源定位を行うことを明らかにしている。しかし、この研究では固定された音源を定位する課題が用いられていたため、位置が刻々と変化する試合中のボールをどのように定位しているのかは明らかでなかった。

一方、音の知覚に関するこれまでの研究からは、頭部を動かしながら音を聴くことで、音を立体的にとらえやすくなり、音源の位置を正確に定位できることが報告されている。よってブラインドサッカー選手がボールをトラップする際にも、より正確に音源を定位するため、頭部を音源であるボールの方向に向けていると予想される。

そこで今回の研究では、移動する音源の定位が求められるボールトラップ課題を用い、ブラインドサッカー選手がどのように音源を定位しているのか、一般の晴眼者と比較しながら検討した。

研究内容と成果:さまざまな条件でのトラップで頭部角度と正確性を比較

研究の対象は、ブラインドサッカー選手6名(競技経験7.4±3.5年)と、一般の晴眼者6名(ブラインドサッカー未経験)。4.5m先から左右に転がり出るボールを、アイマスクを付けた状態で右足のインサイドでトラップする課題を設定した(図1)。ボールは、可動式の投射台のレール上の三つのいずれかの高さから手動で投射され、ボールの速さは平均約2.4m/秒、2.2m/秒、1.9m/秒だった。ボールの投射方向は、右ファー、右ニア、左ファー、左ニアの四つの範囲を設定した。

図1 ボールトラップ課題における実験設定

ボールトラップ課題における実験設定

(出典:筑波大学)

ボールの速さと投射方向は試行ごとにランダムに設定し、1人あたり36回試行。赤外線反射マーカーを頭部に貼付し、矢状面(身体を左右へ垂直に分ける面)における頭部角度を測定した(図2)。

図2 矢状面における頭部角度(θHDs)の定義

矢状面における頭部角度(θHDs)の定義

(出典:筑波大学)

ボールトラップの正確性は、ボールをトラップした時の右足のつま先と踵に貼付されたマーカーの中点が、ボールの中心から左右の方向にどれだけずれていたか(絶対誤差)を評価した。

その結果、ブラインドサッカー選手におけるボールトラップのエラーは、一般の晴眼者に比べて有意に小さいことが確認された(図3)。

図3 ボールトラップにおける足とボールの間の絶対誤差の大きさ

ボールトラップにおける足とボールの間の絶対誤差の大きさ

ブラインドサッカー選手は、未経験の一般晴眼者に比べてエラーが小さかった
(出典:筑波大学)

また、ボールが投射された瞬間の下向きの頭部角度については、両群に有意な差はみられなかったが、ボールトラップの瞬間の下向きの頭部角度や振幅(ボールの投射からトラップまでの時間における頭部角度の変化)は、ブラインドサッカー選手(下向きの頭部角度37.3±17.2度、振幅36.2±14.5度)が、一般の晴眼者(下向きの頭部角度14.3±15.8度、振幅18.8±8.4度)に比べて有意に大きいことが明らかになった(図4)。

図4 矢状面における頭部角度

矢状面における頭部角度

ブラインドサッカー選手は一般晴眼者に比べて、ボールトラップ時の下向きの頭部角度や振幅が有意に大きかった
(出典:筑波大学)

さらに、ボールが投射された時点を基準とした下向きの頭部角度の変化は、ボールが投射された直後からボールトラップの瞬間まで、ブラインドサッカー選手が晴眼者より一貫して有意に大きいことが示された(図5)。

図5 各時点での矢状面における頭部角度の変化

各時点での矢状面における頭部角度の変化

ブラインドサッカー選手は一般晴眼者に比べて、ボールが投射された時点を基準とした下向きの頭部角度の変化が、ボールが投射された直後からボールトラップの瞬間まで一貫して大きかった。太線は各群の平均値、細線は各対象者の値
(出典:筑波大学)

本研究の結果から、ブラインドサッカー選手はボールを的確にトラップする際に、より大きな下向きの頭部回転を用いて頭部をボール方向に向けることで、より正確に音源を定位していることが示唆された。また、ブラインドサッカー選手は、ボールトラップの際に、接近するボールの動きと下向きの頭部回転を合わせ、ボールを頭部に対して一貫した方向に保っていることが示唆された。

今後の展開:他の音が混在する状況では、どのように音源定位しているのか

本研究により、ブラインドサッカー選手がボールをトラップする際に、頭部をボール方向に向けていることが明らかになった。研究グループは、「この知見は音源であるボールをより正確に定位し、音の知覚と運動をつなぐための重要なポイントとなる可能性があり、ブラインドサッカーにおけるボールトラップの技能学習への応用が期待される」と述べている。

なお、ブラインドサッカーの実際のプレーでは、味方や相手選手の声など、複数の音源を同時に定位しながらプレーすることが求められる。本研究では音源がボールのみであったため、「今後はボールの音に加え、周囲に声を発する選手がいるような実際のプレーに即した環境を設定し、ブラインドサッカーにおける音源定位の方略についてさらに詳しく検討していくことが重要な課題だ」としている。

関連情報

ブラインドサッカー選手のボールトラップには頭の動きが貢献している ~音を聴いて動きにつなげる手立てを発見~(筑波大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Blind footballers direct their head towards an approaching ball during ball trapping」。〔Sci Rep. 2020 Nov 20;10(1):20246〕
原文はこちら(Springer Nature)

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