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思春期アスリートの食物、食欲、栄養に関するコーチの認識 インドからの報告

思春期は発達の過渡期であり、思春期のアスリートにはスポーツに必要な栄養に加え、成長のための栄養も必要とされる。さらに、思春期アスリートは強いプレッシャーに曝されがちで、気分のむら、不健康な行動、偏った食物摂取嗜好のリスクが高く、時に摂食障害等の問題も生じる。しかもこの頃に形成された食習慣は成人期にまで遷延する傾向があり、成人後には変更が困難になりやすい。その一方で思春期のアスリートは、成人への栄養介入に比較し栄養カウンセリングの変化への適応が良いことも報告されている。よって思春期のアスリートの修正可能な栄養習慣を把握し、可能な限り栄養教育を提供することが重要と考えられる。

思春期アスリートの食物、食欲、栄養に関するコーチの認識 インドからの報告

しかし、本研究が行われたインドでは、栄養指導を行えるスタッフが不足しており、コーチが食生活をサポートしている。このような背景から本研究では、思春期アスリートの食べ物、食欲、栄養に対するコーチの認識をインタビューにより調査した。

政府による唯一のスポーツ学校のコーチ対象に構造化インタビュー

調査が行われたのは、南インドのテランガナ州にある政府が資金提供する唯一のスポーツスクール。国立スポーツ研究所を卒業した28〜60歳の男性コーチ14名のうち10名が、構造化インタビューによる調査に協力した。

コーチが指導している対象は10〜17歳の思春期アスリートで、競技種目は陸上競技3名、体操2名、重量挙げ2名で、その他、柔道、サッカー、アーチェリーが各1名。このスポーツ学校には栄養士がいないため、食物摂取についても彼らが指導にあたっている。

調査の結果から、動物性蛋白質の摂取がスポーツパフォーマンスの鍵であると考えられていること、また果物や野菜を健康的な食品と見なしていたが、その栄養源としての役割や適切な量の定義付けはされていないことが明らかになった。以下は分析結果の要点の抜粋。

スポーツ学校に通う生徒の栄養状態と食物摂取の背景

スポーツスクールに通う生徒は、競争力を必要とする正式な選考を通過した子どもたちだが、そのほとんどは社会経済的背景が低く栄養不足である。この点に関してコーチは彼らに栄養面と感情面の脆弱性を感じていた。

パフォーマンスのための栄養要件

ほとんどのコーチは、適切な食事がパフォーマンスに直接影響すると考え、トレーニング強度と消費したエネルギー量に基づいて食事を提供する必要があると考えていた。しかし、必要とされるエネルギー量や実際に提供されているエネルギー量について詳しい説明はできなかった。

コーチはアスリートに最も理想的な食事形態として、非ベジタリアン料理であって、大多数はビーフとマトンとともにフィッシュカレーを提案した。ほとんどのコーチは、これらの食品に蛋白質が含まれていると感じていた。蛋白質はアスリートにとって最も重要な栄養素であり、炭水化物は二次的なものにすぎないと考えられていた。また脂肪は不健康と認識され、必須栄養素とは見なされていなかった。

果物や野菜は重要な食品と考えていたが、これらが微量栄養素の源であるとは認識されていなかった。しかし1人のコーチは、アスリートの間で鉄やカルシウムなどの微量栄養素が不足していると感じていた。

食事のタイミング

大多数のコーチは、1日5~6回程度、少量の頻繁な食事を摂ることが重要だと感じていた。しかし、彼らはそれが日常は実践されておらず、食事がスケジュールに従い提供される国立キャンプでのみ行われていることに対し、懸念を表明した。

パフォーマンスを高めるための個人的な経験や信念

ギー(澄ましバター)をたくさん食べる、豚の血や肉が良い、競技会前にコーヒーを飲むなどを挙げる例も見られたが、多くのコーチは赤身肉の摂取とパフォーマンスとの関連性を感じていた。また、シーフードがアスリートのトレーニング能力と反応時間を改善すると信じているコーチもいた。しかし、これらの信念のバックグラウンドとして存在すべき科学的根拠については述べることができなかった。

水分補給とパフォーマンスの関係

大部分のコーチは、喉の渇きに関係なく定期的な間隔での水分摂取を推奨していた。ただし、その定期的な間隔はコーチによって20~40分の範囲で異なった。水分の必要量についても、体重20kgあたり1〜1.5Lとするコーチや、1日最大4〜5L、早朝に1Lなど、さまざまな回答があった。水分補給のための好ましい飲み物として、グルコース、電解質、ライムまたはスイートライムジュースが挙げられた。

また今回の調査に協力したコーチはすべて男性のため、女子アスリートに関する情報の把握に困難さを感じていることが明らかになった。女子はトレーニング中にトイレに行くことを避けるため、男子よりも水分補給が少ないと推定していた。

サプリメントは必須か否か

サプリメントはアスリートにとって不可欠であると信じられていた。ただし、ほとんどのコーチはアスリートが摂取しているサプリメントの品名を挙げることができず、栄養素についてもほとんど理解していなかった。

重量挙げコーチは、重度のトレーニングによって肝臓に蓄積する成分があるとし、肝臓のための「解毒サプリメント」とともに、ホエイ蛋白とクレアチンの使用を検討していた。別のコーチはハーブ煎じ薬を心血管機能と筋肉増強に役立つと考えていた。

アスリートの衛生習慣

ほとんどのコーチは、食品の準備と提供段階での衛生状態の欠如について懸念を表明した。大多数のコーチは、トレーニングエリアでの個人レベルの衛生確保についてアスリートにアドバイスをしたと主張した。また、アスリートの間では皮膚アレルギーが一般的であると考えられていた。

栄養情報のソース

コーチは、国立スポーツ研究所を卒業しているが、スキルを高めるための栄養に関する定期的な卒後研修プログラムはなかった。一部のコーチは、思春期アスリートの食事指導にあたって、自分の経験または習慣に依存して行っていた。他には、仲間のコーチやアスリートとの交流から学んでいた。ほとんどのコーチは印刷物やデジタルメディアについて、情報の信頼性の懸念から利用を考慮しないと述べた。

文献情報

原題のタイトルは、「Coaches' perceptions about food, appetite, and nutrition of adolescent Indian athletes - A qualitative study」。〔Heliyon. 2020 Feb 7;6(2):e03354〕

原文はこちら(Elsevier)

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