マインドフルネスに基づく介入が、思春期肥満者の食事と運動の習慣の改善に効果
現在生じている事象に意識を集中させるというマインドフルネスをベースとしたストレス軽減プログラム(mindfulness based stress reduction;MBSR)は、さまざまな健康関連問題に対する利用が広がっている。肥満に対してもマインドフルネスを活用した摂食啓発トレーニング(mindfulness based eating awareness training;MB-EAT)は、瞑想技術等を使用して肥満者の摂食行動を正常化し、運動と食習慣を改善する手法として用いられ始めている。
しかしこれまでのところ、青少年や若年成人の体重を減らし摂食行動を改善することを目的とした、学校で実施可能なプログラムは存在しない。本研究は、青年期を対象として高校で実施する(MB-EAT program to adolescents;MB-EAT-A)が、食事パターンを改善し体重増加を抑制し、かつ運動習慣を改善するとの仮定に基づく米国からの報告。
6カ所の高校の9年生(日本の中学3年生に相当)40名(男子14名、平均年齢16.2±1.2歳、BMI32.4±9.0)を、MB-EAT-A群(n=18)、または健康教育管理(対照群,n=22)に無作為に割り付け、3カ月間介入。介入直後と介入終了3か月に、食事・運動に関する行動への影響および体重の変化を比較検討した。ベースライン時の特性に群間の有意差はなかった。
なお、MB-EAT-Aの指導は1週間につき50分、学校で行われた。MB-EAT-Aの具体的内容は後述。
栄養摂取状況の変化
MB-EAT-A群は食事・栄養摂取量の改善を示し、対照群に比較し健康的な食物の摂取量が増加した。具体的には、低カロリー食品の週あたり摂食量が増え(MB-EAT-A群+7.7 vs CTL群-0.5サービング/週,p<0.02)、低飽和脂肪の食品も同様で(同順に +4.6 vs-2.7サービング/週,p<0.02)、有意差が生じていた。
運動習慣の変化
MB-EAT-E群は、1日にスイミングラップ、サイクリング、ダンス等を20分以上実施し、高強度の運動(バスケットボール、サッカー等)を行う時間も増加していた。結果として、中強度の運動(+1.4 vs -0.5時間/週,p<0.05)、および高強度の運動(+0.8 vs -0.7時間/週,p<0.05)とも対照群と有意差がみられた。
体重の変化
体重は対照群では増加したのに対し、MB-EAT-A群ではわずかに減少した。ただし群間に有意差はなかった(p=0.87)。
以上の結果を著者らは「MB-EAT-Aプログラムは、思春期の過体重・肥満者に対し、低カロリーで低脂肪の食品の摂取を促し、中程度かつ高強度の有酸素運動を増やす」とまとめ、「この研究により、高校という教育環境でMB-EAT-Aプログラムを実施することの実現可能性と学生の受容性が実証された」と述べている。
MB-EAT-Aの手法
本研究で行われたMB-EAT-Aは全体が12のセッションで構成されている。具体的な内容は以下のとおり。
- セッション1:イントロダクション。呼吸意識瞑想テクニックの指導。横隔膜の動きに意識を集中し、ゆっくり、深く、リラックスして呼吸する。
- セッション2:セッション1の継続と、チーズとクラッカーを使用したマインドフルイーティングの指導、高脂肪食を避ける。
- セッション3:飢餓の認識と身体的受容の養成。
- セッション4:味覚と満腹感の認識。摂取エネルギー量を減らす方法にフォーカス。
- セッション5:満腹感、胃の膨満感の認識の継続。
- セッション6:意識的・非判断的な摂取エネルギー量削減と健康的な食品の選択。
- セッション7:摂取エネルギー量と栄養に関する知識。
- セッション8:マインドフルムーブメントの取り組み。身体活動を増やすための推奨事項を示す。歩数計の使用を含む一般的な健康・減量・体力にフォーカスした歩行瞑想。
- セッション9:思考と感情、ストレス、苦痛、および食事について解説。
- セッション10:感情的トリガーの理解、個人の過食反応の連鎖について分析。
- セッション11:より高い自己の実現と再発防止のため、自己を理解し目標を維持し、菓子を控える。管理可能な小さな変化の自己評価。
- セッション12:目標設定および継続的な瞑想の実践について解説。
文献情報
原題のタイトルは、「Impact of Mindfulness-Based Eating Awareness on Diet and Exercise Habits in Adolescents」。〔Int J Complement Altern Med. 2016;3(2). pii: 70〕