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高校コーチとクラブコーチの比較(1)「幼少期からのスポーツの専門化に関する認識に差」

高校アスリートの指導にあたっている高校のコーチと、クラブコーチとの差異を検討した、ほぼ同じ研究者グループによる論文が全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)が発行するジャーナル「J Athl Train」に2報掲載された。1本はスポーツの早期専門化に対する認識について、もう1本は緊急時の備えについてテーマにしたもの。2回に分けて1本ずつ紹介する。

高校コーチとクラブコーチの比較(1)「スポーツの早期専門化に関する認識に差」

スポーツの早期専門化に関する認識の差

幼少期からのスポーツの専門分化が進むことに対して、その潜在的な有害性を指摘する意見がある。考慮される代表的な有害事象としては身体の酷使による障害の発生が挙げられ、そのほかにもバーンアウト(燃え尽き)やアイデンティティー確立の支障など社会心理学的なマイナス作用があるとの指摘もある。

従来の研究からは、男性アスリートよりも女性アスリートのほうが早期に特化する傾向が強いこと、しかし専門の選択に不確実性が高く男性に比べてトレーニング負荷が強くなりやすいことが報告されている。また学校の規模と専門化との相関もあり、大規模校の在学生は早期に専門化し、小規模校の生徒はマルチスポーツ選手として育成される可能性が高いという。しかしこれまでのところ、スポーツの専門化に関して指導する側がどのような考え方をもっているかについて、十分に調査されたことはない。そこで本論文の著者らは、高校のコーチとクラブコーチに対し、スポーツの早期専門化に対する認識を比較検討した。

調査対象は、バスケットボール、サッカー、バレーボールという3種目の高校生アスリートが在学している高校のコーチとクラブチームのコーチ。米国中西部の高校およびクラブコーチ計1万1,248名に電子メールでアンケートへの回答を依頼したところ、高校コーチ497名、クラブコーチ272名、計769名(41.0±11.5歳、女性34.6%)から有効回答を得た。男性/女性の比率や年齢、コーチ経験年数、コーチとしての自己評価は、高校コーチとクラブコーチとで有意差はなかった。ただし指導対象アスリート年齢には差がみられ、高校コーチの対象は17歳(51.9%)と16歳(42.3%)が大半を占めていたが、クラブコーチは14~16歳の各年齢が25%前後ずつ、17歳が18.4%、18歳が4.4%だった。

アンケートの内容は、スポーツの専門化に対する信念や価値観に関する25項目からなり、例えば、「すべてのアスリートは高校進学までに1つのスポーツに特化する必要があるか?」という質問に対して、1(強く不同意)から4(強く同意)で回答するという内容。点数が高いほどスポーツの専門化を肯定的に認識していると評価される。

解析の結果、総合的にクラブコーチは高校コーチよりもスポーツの専門化を肯定的にとらえる傾向が強いことが示された。より細かく、スポーツの種目、チームに所属するアスリートの性別、学校またはクラブの規模別に解析すると、以下の関係が明らかになった。

スポーツの種目の違いによる専門化への認識については、高校・クラブ双方のコーチにおいて同様の結果となり、最も専門化を肯定的に認識していたのはサッカーのコーチで、次にバレーボール、最後がバケットボールの順だった。これに関して著者らは、今回調査したこの3種目はいずれもチームスポーツであり、後期の専門化(身体的に成熟した後にパフォーマンスのピークに到達するスポーツ)が特徴であるスポーツであることから、将来的には新体操などより早期の専門化が求められる種目について検討が必要であると述べている。

次に、アスリートの性別による違いをみると、高校・クラブ双方のコーチにおいて、男子と女子両方のアスリートを指導した経験をもつコーチは、男子または女子いずれか一方のみの指導経験しかないコーチに比べて専門化を強く肯定していた。また高校コーチは男子チームの指導者と女子チームの指導者とでほぼ同等の認識だったが、クラブコーチにおいては、女子チームの指導者のほうが男子チームの指導者よりも専門化に肯定的だった。

学校の規模による有意な違いはみられなかった。

著者らは本調査の結果解釈上の限界点として、スポーツ種目が3種に限られていること、アンケートの回収率が7%と低く選択バイアスがあることなどを挙げ、今後のより多種目競技を対象とし、一般化が可能な調査の必要性を述べ、結論としては「クラブコーチは高校コーチよりもスポーツの専門化を支持する傾向がある」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Exploring Coaches' Perceptions of Youth Sport Specialization: A Comparison of High School and Club Sport Contexts」。〔J Athl Train. 2019 Oct;54(10):1055-1060〕

原文はこちら(National Athletic Trainers' Association(NATA,US))

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