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高校コーチとクラブコーチの比較(2)「緊急時の備えの差異」

全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)が発行するジャーナル「J Athl Train」に掲載された、高校アスリートの指導にあたっている高校のコーチと、クラブコーチとの差異を検討した2本の論文を2回に分けて紹介している。その2回目にあたる今回は、緊急時の備えについてテーマに検討したもの。

高校コーチとクラブコーチの比較(2)「緊急時の備えの差異」

緊急時の備えの差

2017年から2018年にかけて全米では800万人近くの青年が高校の学内スポーツに参加したとされる。また別の調査からは高校でスポーツを練習している生徒の半数が学外のスポーツクラブに参加しているとされ、米国では最大400万人の高校生が、高校と高校以外の双方でスポーツを実践している可能性がある。

学校内でのスポーツについては、アスレティックトレーナー(AT)のアシスト、緊急時行動計画(EAP)の策定、体外式自動除細動器(AED)を整備することが推奨されており、実際にこの施策によって、思春期の生徒の突然心停止後の蘇生率が劇的に向上したことが報告されている。その一方でクラブスポーツチームのコーチはボランティアに依存していることが多く、それらの体制が未整備であることが多いと考えられるが、実態は明らかになっていない。今回の研究はその実態を明らかにしようとするもの。

調査対象・手法は(1)「スポーツの早期専門化に関する認識の差」に述べたが改めて記すと、バスケットボール、サッカー、バレーボールという3種目の高校生アスリートが在学している高校のコーチとクラブチームのコーチが調査対象。米国中西部の高校およびクラブコーチ計1万1,248名に電子メールでアンケートへの回答を依頼したところ、高校コーチ497名、クラブコーチ272名、計769名(41.0±11.5歳、女性34.6%)から有効回答を得た。男性/女性の比率や年齢、コーチ経験年数、コーチとしての自己評価は、高校コーチとクラブコーチとで有意差はなかった。ただし指導対象アスリート年齢には差がみられ、高校コーチの対象は17歳(51.9%)と16歳(42.3%)が大半を占めていたが、クラブコーチは14~16歳の各年齢が25%前後ずつ、17歳が18.4%、18歳が4.4%だった。

調査結果をまず、緊急時行動計画(EAP)についてみると、クラブコーチに比較し高校コーチのほうが練習場のEAPを認識している割合が有意に高かった(83.9% vs 54.4%,p<0.001)。ただし、過去12カ月以内にEAPに関する訓練をした割合は高校コーチ、クラブコーチともに低く、群間差はなかった(24.7% vs 27.7%)。

次にAEDに関しては、高校コーチはクラブコーチよりも練習場でAEDを使用できると回答した率が高かった(87.9% vs 58.8%,p<0.001)。AEDの設置場所については両群ともに認識している割合が高かったが、統計的な有意差が存在した(97.5% vs 90.0%,p<0.001)。

練習中または競技中のアクシデントについて、高校コーチのほうがクラブコーチよりも、アスレティックトレーナー(AT)が即時的医療ケアの責任を有すると回答する率が高かった(練習中については31.2% vs 8.8%、競技中については57.9% vs 31.2%.ともにp<0.001)。また実際に、高校コーチのほうがATが常に存在している率が、練習中・競技中を問わず有意に高かった(p<0.001)。

最後に、高校コーチはクラブコーチよりも、心肺蘇生法(98.8% vs 33.8%)、AED(81.3% vs 26.8%)、応急処置(67.4% vs 35.3%)の各トレーニングを受けている率が高かった(すべてp<0.001)。

以上一連の結果から著者らは、「高校コーチはクラブコーチよりも非常に高いレベルの緊急時への準備とトレーニングをしている」と結論している。

なお、著者らは本調査の結果解釈上の限界点として、まずスポーツの練習や競技がどこで行われているかを考慮していないことを挙げている。学校内で行われる練習や競技に関して高校コーチがEAPやAEDの認識に勝るのは当然という考え方も可能。ただしスポーツを実践する高校生アスリートは、クラブに参加中も学校と同じレベルの救急医療を期待するだろう。

このほかの限界的としては、調査対象スポーツが3種目に限られていること、アンケートの回収率が7%と低く選択バイアスがあることなどを挙げている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Comparison of Emergency Preparedness Between High School Coaches and Club Sport Coaches」。〔J Athl Train. 2019 Oct;54(10):1074-1082〕

原文はこちら(National Athletic Trainers' Association(NATA,US))

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