高齢者の筋肉の質を規定する3因子が判明 年齢やBMI、サルコペニアとは独立
高齢者の筋肉の質を規定する因子が明らかになった。全身の骨格筋量指数、6分間歩行距離、中強度での活動時間という3つの因子がそれだ。名古屋大学、中京大学、星城大学の共同研究による成果で、「Ultrasound in medicine & biology」に論文が発表されるとともに、名古屋大学のサイト内にプレスリリースが掲載された。
この研究の対象は地域在住の高齢者204名。超音波断層装置を用いて大腿部の筋肉の質を定量的に評価した(図1)。
筋肉内の脂肪の量で、筋肉の質が良い群(脂肪や結合組織が少ない群)、筋肉の質が低い群(脂肪や結合組織が多い群)、およびその中間の群の3群に分類。この3分類と、以下に述べる身体測定、運動機能、身体活動量に関するテストの結果との関連を検討した。なお、この3群間の年齢や性別、BMIに有意な差はなかった。また、肥満や糖尿病、サルコペニアの頻度も有意差はなかった。
身体測定からは、全身骨格筋量、全身骨格筋量指数、全身脂肪量の3項目を評価した。
運動機能としては、握力(筋力の指標)、椅子座り立ち(下肢筋力の指標)、タイムアップアンドゴー(ロコモティブ機能)、床立ち上がり(日常生活に関連する機能)、5m通常・最大速度歩行(歩行能力)、6分間歩行距離(持久能力)を評価。
身体活動量は加速度センサー付き身体活動量計を被験者に14日間使用してもらい、1日あたりの歩数、安静時間、低強度(3.0METs以下)活動時間、中強度(3.0~6.0METs)活動時間、高強度(6.0METs以上)活動時間、総消費エネルギー量、活動による消費エネルギー量を評価した。
検討の結果、全身骨格筋量指数、6分間歩行距離、中強度活動時間の3項目が、筋肉の質に有意に関連する因子として抽出され、その他の指標は関連が除外された(図2)。
著者らは今回の研究のポイントを「従来、筋肉の質に影響を与えるとされてきた年齢や体格の違いを考慮し、それ以外の要因に着目したこと」にあるとし、先行研究の知見を重ね合わせ「全身の筋肉量を増やし、持久的な歩行機能を高め、日常的に活動することで、質の高い筋肉を維持することができると推測される」とまとめている。また、今後への展望として「高齢者であっても身体トレーニングによる筋肉量の増加や持久能力の向上が認められる。本研究の成果は、トレーニングや日常生活の活動量の増加が高齢者の筋肉の質を向上させ、健康の維持・増進に役立つことを示唆するもの」と述べている。
プレスリリース
地域在住高齢者の"筋の質"を決定する要因を特定! ~骨格筋量指数、運動機能、日常での身体活動量の重要性~(名古屋大学)
文献情報
論文のタイトルは「Higher and Lower Muscle Echo Intensity in Elderly Individuals Is Distinguished by Muscle Size, Physical Performance and Daily Physical Activity」。〔Ultrasound Med Biol. 2019 Sep;45(9):2372-2380〕