屋外スポーツイベントからの感染症――考えている以上のリスクあり?
屋外スポーツの人気が高まる中、イベント等の参加が感染症罹患のリスクとなる可能性を指摘する論文が発表された。著者らは特に体が土や泥と接触するスポーツのリスクを強調。場合によってはスポーツに参加していない人への二次感染も生じ得るとしている。
近年、マウンテンバイクレースや釣りなどの土や泥に接触する機会のあるスポーツが盛んになり、その競技会も頻繁に開催されるようになった。土や泥には微生物が大量に生息しており、それらの大半は無害であるものの、病原性のあるウイルスや細菌、寄生虫が含まれている可能性は否定できない。また、屋外スポーツを個人で行うのではなく、集団が参加するイベントの場合、その会場内で感染者が病原体を排出するというリスクも生じ、イベント会場自体が脅威にもなり得る。
論文では過去に屋外スポーツにより発生したと考えられる感染症の報告を紹介。いくつかピックアップすると、マッドレスリング(泥の中でのレスリング)大会に参加した大学生が毛包炎を発症したという報告や、マッドレースの参加者51名を調査したところ22名に皮膚発疹がみられたという報告、北米や欧州で発生したマウンテンバイクレース後のカンピロバクター感染症に罹患した事例、屋外障害物レースなどのイベントの後にカンピロバクターやノロウイルス感染症がアウトブレイクした事例などがあり、他にも多数の報告が引用されている。
ウイルスや細菌などの微生物は非感染性であることが多い一方で、感染性のあるものはその量が微量であっても感染を引き起こす可能性があり、カンピロバクターは数百、サルモネラは10程度の細菌、ノロウイルスは18個のウイルスで感染が成立することがあるという。ノロウイルスに関しては、実際に競技イベントに参加したアスリート間で伝播し感染した事例もあることを紹介。予防対策の強化を訴えている。
土や泥に接触するスポーツに類似する競技として、水に接触するトライアスロンなどの屋外スポーツがあるが、それらは歴史が長く水媒介性疾患の発生への対策が豊富に蓄積されている。それに対して土や泥に接触するスポーツは安全性に関するポリシーがまだ十分に確立されていない。
著者らはこの点にスポットを当て、屋外スポーツ大会における糞口感染の可能性がある病原性微生物への対策として、具体的な推奨事項を記載している。それは例えばイベント会場のコース外へのポータブルトイレを設置すること、おむつをしている子どもを泥の中に入れないこと、参加者すべてが利用できる数のシャワー設備を完備し、レースに参加する前および参加後の飲食前に利用可能とすることなどである。
また医療従事者に対しては、感染症のアウトブレイクが従来にない形式で発生した場合、屋外スポーツイベントに参加しなかったか、もしくはイベント参加者と接触しなかったかを確認することを勧めている。
文献情報
原題のタイトルは、「Infection from Outdoor Sporting Events?More Risk than We Think?」。〔Sports Med Open. 2019 Aug 14;5(1):37〕