運動中のエネルギー消費を高精度で測定できる手首型のウェアラブルセンサー
心拍数モニタリング機能付きの手首装着型モーションセンサー(加速度センサー)によるエネルギー消費量の測定精度を、二重標識水法と比較した研究結果が報告された。加速度センサーのみによる測定より精度の向上がみられたという。
エネルギー消費量を評価するゴールドスタンダードは二重標識水法だが、測定が煩雑であり日常的に施行することは現実的でない。そこで加速度センサーや心拍数モニタリングなどを通じて推測する手法が一般に行われている。しかし加速度センサーは筋力トレーニング中の静的動作や運動後の安静時代謝の変化を反映しない。また運動後の心拍数の反応は個人差があり、運動後に継続しているエネルギー消費が亢進した状態を計測するのに限界がある。よって両者をそれぞれ単独で用いるのではなく、併用することで測定精度が向上する可能性が考えられる。
加速度センサーにはその装着部位として腰や足、腕、手首などのタイプがあるが、手首装着型は他の部位に比較し、日常生活を通して長時間装着されやすいと考えられる。一方、心拍数モニタリングは胸に装着するものが主流だが長時間の装着には不快感を伴い、近年では手首装着型のものが開発されている。本研究においては、心拍数モニタリング機能付きの手首装着型ウェアラブル加速度センサーを用いて運動トレーニングを実施し、その測定精度を検討した。
被験者として、有酸素運動の効果を測定した大規模研究の参加者から15名の男性が抽出された。登録条件は、週に3回以下の中等度の運動(ウォーキング、サイクリング、またはチームスポーツへの不定期な参加)をしている者で、体系的なスポーツトレーニングを行っている者やBMI30以上の者は除外した。主な背景は、年齢30±6歳、身長180±8cm、BMI25.1±3.4、VO2peak35.7±7.2mL/kg/分など。ウェアラブルセンサーには個々の被験者の体重と年齢を設定した。
12週間のコントロール期間(無介入期間)に引き続き、12週間にわたりトレーナーによるトレーニングを実施。トレーニング期間中は筋力トレーニングと有酸素運動を隔日に実施した。トレーニング期間中に2名が個人的な理由により脱落した。
1日の総消費エネルギー量を二重標識水法での測定値を基準として検討した結果、トレーニング介入前のコントロール期間においては、加速度センサーのみでその値の78%が説明され、心拍数情報を追加すると85%が説明された。トレーニング期間中においては、同順に62%、70%が説明可能だった。
コントロール期間とトレーニング期間とでの消費エネルギー量の増加幅は、二重標識水法で270±158kcalだった。これに対し加速度センサーのみでは141±165kcal、心拍数情報を追加すると234±167kcalだった。
以上より、心拍数モニタリング機能を付加した手首装着型ウェアラブル加速度センサーによって、運動トレーニングを含む日常生活の消費エネルギー量を高い精度で測定できる可能性が示唆された。
文献情報
原題のタイトルは、「Training-induced changes in daily energy expenditure: Methodological evaluation using wrist-worn accelerometer, heart rate monitor, and doubly labeled water technique」。〔PLoS One. 2019 Jul 10;14(7):e0219563〕