アイスランドのエリートスポーツ選手のボディーイメージと摂食障害の現況
トップアスリートの約2割が自身のボディーイメージに不安をもち、約1割が摂食障害の可能性があることが、アイスランドで行われた研究で示された。
アスリートの拒食症や神経性過食症などの摂食障害が注目されている。スポーツに理想とされる体型を維持するためにアスリートには過剰なプレッシャーがかかっているとされ、また審美的スポーツではベストパフォーマンスを得るための体型が競技の評価と必ずしも一致しないというジレンマもある。これらはこれまで主に女性アスリートに生じる問題と捉えられていたが、近年は男性アスリートに関する報告も見られるようになった。しかしその実態は十分明らかになってはいない。
本研究はアイスランドのアスリートを対象に、ボディーイメージと摂食障害に関するアンケートを実施し、その頻度を調査したもの。ボディーイメージをBody Shape Questionnaire(BSQ)を用いて評価するとともに、Bulimia Test-Revised (BULIT-R)によって過食症の症状を、Eating Disorder Examination Questionnaire(EDE-Q)によって摂食障害の有無と重症度を評価した。
20種目のトップレベルの競技会に出場している18歳以上のアスリート2,500名に協力を要請したところ1,113名が応じ、うち755名(24.8±3.5歳、男性31.1%)が前記3種類のアンケートに回答した。競技種目は以下の5つの群に分けて解析した。
- 体操、バレエ、モダンダンスなどの審美的スポーツ
- 長距離ランニング、水泳などの持久系スポーツ
- 柔道、総合格闘技、重量挙げなどの体重階級制スポーツ
- クロスフィット、ボディビルディングなどのフィットネススポーツ
- サッカー、バスケットボール、ハンドボール、バトミントン、バレーボール、アイスホッケーなどの球技
女性アスリートの4人に1人はボディーイメージを懸念
ボディーイメージについてはBSQが80点未満を問題なし、80~110点は軽度の不安あり、111~140点は中等度の不安あり、140点以上を重度の不安ありと判定。すると、アスリート全体の17.9%が中等度以上のボディーイメージの不安を抱えていることが明らかになり、特に審美的スポーツでは重度の不安を抱えているアスリートが16.3%いた。持久系スポーツではボディーイメージの問題なしの割合が76.7%で、他の種目より高かった。
BSQ110点以上を臨床的に意義があるカットオフ値として設定したところ、全体の18.3%と2割弱がこれに該当した。性別にみると男性は3.8%にとどまった一方で、女性は25.3%と4人に1人が臨床的カットオフ値を超える不安を抱えていた。
アスリートの1割が摂食障害に該当する可能性
過食症に関するBULIT-Rは98点以上、摂食障害に関するEDE-Qは4点以上を臨床的カットオフ値として判定した。すると過食症は全体の2.4%、性別では男性の1.7%、女性の2.7%が該当。摂食障害としては全体の9.5%と約1割が該当し、性別では男性6.8%、女性10.6%だった。
今回の調査では既報と同様に、女性は男性よりボディーイメージ上の不安や摂食障害の懸念が強いことが示されたが、これまで男女差についてあまり検討されていなかった球技にもその傾向があることが明らかになった。著者らは本調査について「大規模なサンプル数のある研究であり、性別や種目別の比較検討結果は他の国のアスリートにも外挿可能」としている。また「アスリートは自身の悩みを周囲に相談する際、摂食障害という臨床的な問題ではなく、パフォーマンスの低下に対する助言を求める傾向があることに、コーチや医師は配慮が必要だ」と結論の中で述べている。
文 献
原題のタイトルは、「Body Image Concern and Eating Disorder Symptoms Among Elite Icelandic Athletes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2019 Jul 31;16(15)〕