ケトン産生食を行っている男女の比較 運動中の代謝量に性差?
糖質制限やケトン産生食を巡っては、古くはてんかん治療において有用性が研究され、近年では減量や血糖管理などへの応用が試みられている。スポーツとの関連においても、運動中のエネルギー源としての脂肪酸の利用を増大させることを目的としたケトン産生食の効果を示す報告がみられる。しかし運動中の脂肪酸の代謝には性差が存在し、その点を考慮した研究はまだ報告されていない。
本研究では、クロスフィットトレーニング(日常生活上の実用的な動作をベースとし、それらの能力を包括的に向上させるトレーニング)の経験者、男性16名、女性14名を登録。14日間の通常食摂取の後、および4週間のケトン産生食摂取後に、自転車運動テストを行い、最大酸素摂取量(VO2max)と脂肪酸化速度やエネルギー代謝等への寄与を調べた。
ケトン産生食の内容は、炭水化物はエネルギー摂取量全体の5%まで、蛋白質は1.7g/kg/日とし、残りのエネルギー需要は脂肪によって供給され、結果として脂肪によるエネルギー摂取量が全体の75%以上を占めた。通常食期間とケトン産生食期間で、エネルギー摂取量と蛋白質摂取量に差はなかった。ケトン産生食開始に伴い一部の試験参加者で過敏性や気分の変化などが生じ、研究から脱落した(男性4名、女性2位)。他に怪我により2名が脱落し、計22名(男性、女性11名ずつ)が解析対象となった。
結果は、男性ではケトン産生食後の脂肪酸化速度が通常食後に比して、VO2maxの値に関わらず全体的に高値となり、VO2max 35%および50~65%で有意な群間差を示した。一方、女性では両群間に有意差が観察されたのは、VO2max 85%の時のみであった。また、VO2max 65%以下の運動強度で脂肪利用率の曲線下面積(AUC)を比較すると、男性はケトン産生食でAUCの有意な増大が認められたが、女性は有意差がなかった。ただし男性もVO2max 65%を上回る運動強度では、AUCの有意差が消失した。
結論として、クロスフィットで訓練された男性は、ケトン産生食下において女性よりも脂肪利用が促進される傾向が確認された。
原題のタイトルは「Effect of a four-week ketogenic diet on exercise metabolism in CrossFit-trained athletes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Apr 5;16(1):16〕